異世界でチート能力を手にした俺は、現実世界をも無双する 5 ~レベルアップは人生を変えた~

第一章 ユティとの生活(1)

「こ、これからどうすればいいんだ……?」

「わふ?」

「ふご」

 『邪』の力を持ち、さらにウサギ師匠と同じ『聖』を冠する存在の技術を持ったユティという少女の襲撃を何とかしのぎきった俺たち。助太刀として現れたウサギ師匠の言葉により、なんとユティは『邪』に騙されていたことが分かった。

 その結果、ユティが俺たちに襲い掛かることはなくなったが、なんとウサギ師匠から彼女の面倒を見るように言われてしまったのだ。

 だが、当のユティ本人は心を整理したいと一人部屋にこもっており、相談しようにも声がかけられない。まあ今はいろいろ頭の中がぐちゃぐちゃだろうしなぁ……。

「仕方ない、日課の筋トレとかやって、そのあとご飯でも作るか」

「わん!」

「ふご」

 俺の言葉に賛成だというように、ナイトとアカツキも可愛らしく答えた。

「フッ! フッ!」

 異世界に来る前は一般的な腕立て、腹筋、背筋、スクワットをしていたのだが……何故だか一向に痩せなかった。サボることなく、毎日続けてたんだけどね……。

 それが異世界でレベルアップしたことで痩せた上に、急に筋肉がつくようになったのだ。本当に、異世界って不思議だよね。

 異世界に来る前から続けている筋トレを終えた後、ナイトと一緒にトレーニングをしていると、ふとアカツキ以外の視線を感じた。その方向に目を向けると、ユティが立っていた。

 なので、俺とナイトは一度組手をやめ、ユティに声をかけた。

「その、どうした?」

「……」

 声をかけても何も言わないユティに、俺も困惑してしまうが――――。

 ぐうぅ~~~~。

 不意に可愛らしい音が響き渡った。

 その音は、ユティのお腹から聞こえる。

「えっと……もしかして、お腹空いた?」

「……ん」

 小さく頷くユティ。

 確かに、あれから俺も動き続けているし、ユティも俺との戦闘を終えたばっかりだもんな。それに、時間的にもお昼の時間だし。

「分かった。今から料理の支度をするから、少し待ってて」

「……」

 俺の言葉に再び頷いたユティは、静かに部屋に帰っていった。

 それを見送りつつ、俺はナイトたちに声をかける。

「さて、それじゃあ飯を作りますかね」

「わふ」

「ふご」

 とはいえ、今回はユティとの戦闘もあって疲れているので、正直料理をするのも面倒くさい。

 だが何かを食べないと力も出ないし、お腹もすいているので、俺は簡単にパスタを作ることにした。茹でるだけだし。

 さすがにパスタは地球のモノで、さらにソースも日本の各企業さんが美味しく作ってくれているので、お手軽に美味しいものが食べられる地球の……いや、日本の食品技術は本当にありがたい。

 ナイトたちも俺と同じようにパスタを……というか、人間のモノを食べることができるので、同じものを用意する。うーん……改めて考えると、異世界の魔物はやっぱり地球の生き物と少し違うんだなぁ。

 そんなことを考えながらも無事にミートソースパスタが完成した。

 すると、匂いに釣られたのか、ユティが声をかける前にやって来た。

「いい匂い」

「え? あ、その……ご飯できたんだけど、食べる?」

「……ん」

「……あ、そういえば、体の方は大丈夫?」

「問題ない」

「そ、そうか」

 ウサギ師匠の攻撃をまともに受けていたはずなのに、大丈夫なのか。すごいな。

 ユティの返事に驚きつつも、俺たちは食卓についた。

「えっと……じゃあ、いただきます」

「わふ!」

「ブヒ!」

「? いただき、ます?」

 俺の言葉に、ユティは首を傾げ、さらに目の前に置かれたパスタを見て、さらに首を傾げた。

「ああ、ユティたちにはいただきますって言う文化はないのか……っと、そういえばパスタも見たことないのか?」

「肯定。どう食べる?」

「これは……」

 用意したフォークでパスタを巻き取りながら、食べる動作を見せてやるが、ユティはそれを見てまだ首を傾げる。

 すると、何やら一人納得した様子で頷くと、何故か俺にフォークを差し出した。

「分からない。だから、オマエ、食べさせる」

「は!?」

 予想外の言葉に、俺は思わずフォークを落としそうになった。た、食べさせるって……いや、たった今、食べ方見せたと思うんですが……。

「私、いつも師匠に食べさせてもらってた。だから、食べさせて?」

 いつも食べさせてもらってたってどういうことだよ……いくら何でもおかしいだろ。赤ちゃんじゃないんだぞ。それとも、ユティのお師匠さんはそこまで過保護だったの? 俺の師匠とはえらい違いだ。いや、ウサギ師匠に過保護な扱いを受けても違和感しかないけど。

 ただただ困惑するしかない俺だが、ユティに自分で食べ始める気配はなく、純粋な目で俺を見つめ、小さい口を開けた。

「あー」

「うっ……」

 どう見ても自分で食べてくれる様子のないユティに、俺はついに根負けしてパスタを食べさせた。

「ほら」

「ん……ん!」

 すると、ユティは目を見開き、俺を驚きの表情で見てくる。

「驚愕。すごく美味。オマエ、実は料理人?」

「い、いや、そういうわけじゃないけど……」

「確かに……料理人だとすれば、あの強さは説明がつかない。不思議」

 俺のことを不思議そうに見つめながらも、パスタを食べ続けるペースは変わらず、気づけばあっという間に食べ終えてしまった。

「美味だった」

「それはよかった」

 まあ俺の腕というか、企業努力の勝利ですね。

 ユティの食事が終わったことで、改めて俺も自分の食事を始めようとすると、ユティが真面目な表情を浮かべ、俺を見てくる。

「? どうした?」

「要求。自己紹介」

「え」

 今さら!? しかもかなりざっくりとした要求だなあ!

「オマエ、あの『蹴聖』の弟子なのは、知っている。でも、他は、よく知らない」

「そういえば……」

 いきなり攻撃され、そこからは自己紹介なんて言う空気でもなく戦い続けてましたから……いや、あの状況下でのんきに自己紹介できるとしたらどんな精神構造してるのか知りたいよね。

「俺は天上優夜。知っての通り、あのウサギ師匠の弟子だけど……」

「理解。私、ユティ。『弓聖』の弟子」

 俺の自己紹介を受け、ユティも簡潔にそう口にした。

 そしてその他の簡単な自己紹介を終えたところで、先延ばしにできない現状を聞く。

「それで、その……気持ちの整理はついた……?」

「……微妙」

「そうか……俺は君のことをウサギ師匠から頼まれたわけだけど……」

 なんて説明すればいいのかと頭を悩ませていると、ユティは顔を少し俯けた。

「……師匠を殺したのは、人間。でも、その裏に『邪』がいることは、知らなかった。今でも師匠を殺した人間たちは許せない。でも、ウサギの話が本当なら、その人間たちは、もういない。だから私は、すべての元凶である『邪』を倒す。それだけ」

「……」

 ユティはそういうと、改めて俺をまっすぐ見つめてきた。

 復讐することが悪いとか、そんなことは当事者ではない俺には何も言うことができないし、止める資格もないだろう。

「ちなみに、これから行く当てとかは?」

「ない」

 だとすると、俺がこの子にしてあげられることって何だろうか?

 いろいろ考えてはみたものの、ただの学生でしかない俺にいい考えが浮かぶはずもなく、俺は重いため息をついた。

 ふと視線をあげると、ユティの格好が泥だらけであることに気づく。

 あー……俺たちと戦って気を失ってたし、起きてからもすぐに部屋にこもっちゃったもんな。そりゃ着替えたりする暇はないか。これならご飯より先にお風呂を用意してあげればよかったな……。

 そんなことを思っていると、ユティが自身の体を見下ろしていることに気づく。

「ん? どうした?」

「私、泥だらけ。希望。水浴びしたい」

「あー……確かに、俺たちと戦ってそのままだったもんな。でも、水浴びなんかじゃなくて、風呂に入らない?」

「? 風呂? 疑問。それは何?」

「え? 風呂が分からないのか……水浴びは分かるんだよな?」

「肯定。師匠とよく一緒にしてた」

「その水が温かいものが、お風呂だよ」

「理解。興味深い。その風呂とやらに、入る」

「よし、それじゃあ今用意するから少し待ってて」

 携帯露天風呂でもいいのだが、わざわざ外に用意するのもおかしいので、今回は普通に地球の家の風呂を用意した。

「ほら、用意できたよ」

「ん」

「…………ん?」

 すると、何故かユティは両腕を挙げ、俺を見つめてくる。

「? 水浴びなら、服脱ぐ」

「う、うん。そうだな」

「ユウヤ、脱がせる」

「何故に!?」

 風呂に入るから服を脱ぐまでは理解できた。でもその手伝いを俺がするのは理解できん!

「私、おかしい? 師匠、いつも脱がせてくれた」

「お師匠さん!?」

 もう過保護ってレベルじゃないですよ! どこまで溺愛してたんだ!?

 ユティの実年齢は分からないが、見た目的に中学生くらいだろう。それなのに食べさせてもらったり服を脱がせたりって……独り立ちさせる気あったのか……?

 それはともかく、俺が脱がせるのは普通にまずいので、何とかユティを説得しつつ、俺は風呂場にユティを連れて行った。

 そして風呂場にあるシャワーやシャンプーの説明などをすると、ユティは目を見開く。

「ここ、不思議な道具だらけ。全部魔道具?」

「いや、別に魔道具ってわけじゃないんだけど……」

「だって、このよく分からないものを捻ると、水が出る。すごい」

 まったく想像してなかったが、確かにシャワーや蛇口なんて言うものは異世界にはないだろうしなぁ。まあ蛇口をひねって水が出るのは、確かにありがたいことではあるよね。

「この石鹸も、すごい。師匠が使っていたものより、あわあわ」

「そ、そうか。とりあえず、どう使えばいいのかは分かったよな?」

 俺の言葉にユティは静かに頷いた。

「よし、それじゃあ――――」

「早速入ってくる」

「うぇえ!?」

 ユティは俺がいるにも関わらず、その場で白いワンピースを脱ぎ捨てた。

 おい、さっきまで脱がせてとか言ってた割にはすんなりとできるじゃねぇか! ……って問題点はそこじゃなくて!

 ユティの行動に固まってしまう俺だが、そんな俺を無視してユティはその場に服を脱ぎ散らかすと、風呂場に入っていった。

 あまりにも衝撃的過ぎたため、思わず固まってしまったが……。

「……ひとまず、洗濯するか」

 女の子を服を男の俺が洗っていいものかと普段の俺ならおろおろしていただろうが、先ほどのもっと大きい衝撃を受けたのと替えの服がない状況から、無心で洗濯をする。

 洗濯機を回し始めたところで、俺はユティと戦闘した時以上の精神的疲れを感じるのだった。

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