第三章 異世界人(1)
────あれから一週間。
俺の持っている称号やスキルが改めてとんでもない効果を持っていることを実感した。
それはこの異世界に最初に
まず【異世界人】の称号のおかげで俺はレベルが上がりやすくなっており、スキルレベルも
それはともかく一番ヤバいのが、【初めて異世界を訪れた者】の称号だろう。
最初からすごいなとは思っていたが、レベルが上がれば上がるほどそのすごさがもっと実感できたのだ。
なんせ、レベルが上がるたびに俺のステータスに割り
俺が順調に強くなれているのは、
称号だけでも十分すごいと思うが、スキルも現実世界で効果を発揮でき、かなり助かっている。
例えばスキルの【
特に一番効果のすごさを実感したのは称号とスキルについてだが、他にも色々とあったことの一つに、畑で
ステータスの上昇する食材で食事を続けてきたが、ある一定まで上昇すると、
あ、【ヘルスライムゼリー】も食べてみたが、本当にコーヒーゼリーだった。うん、美味しくいただけましたね。
他にも、俺は自分の体を確かめるようにいろいろと試行
古本屋で買った本を参考にしながら、適当に武器を振り回していたら、いつの間にか【真武術】がレベル2になっていたので、
そしてレベルが2になった【真武術】は、レベル1の時と比べて大きな変化は感じられなかったが、少しだけ武器の扱いにキレが出てきた気がする。本当に気がするだけだけど。
こうして色々気づくことが増え始めた中、俺はこれからのことで非常に
高校の入学が近づいてきたのである。
高校生になれば、
いや、
このままこの異世界を
「はぁ……
嫌だ嫌だと言いながらも、高校に行くことを考えてるのは俺がヘタレだからだろう。いっそのこと不登校になれればいいのだが、そうすると俺の人生が完全に終わってしまいそうで……。そう考えると不登校になれないのだ。
というわけで、サイズが合わなくなった制服を買い替えるために、制服を売っている店を
新学期が始まるというだけあって、この時期に制服を買いに来るのは
まあ勇気を出して買いに出た結果、幸い人通りも少なかったので見知った顔と会うこともなく、そこはよかったと思う。
それはともかく、今日の俺はある決意……異世界の家の周囲を探索してみようと思っていたのだ。
まだあのブラッディ・オーガやヘルスライムみたいなのがたくさんいるんだと思うと怖いが、それ以上に
今までの俺だったら絶対に外に出なかっただろうが、よく分からないレベルアップをしてから、自信があるわけじゃないが、それでも好奇心に従って行動するくらいには
他人から見れば
ちょっとでも前向きに考える手助けになりそうだったからだ。
「……不用心かもしれないけど、行こう」
俺は賢者さんの残してくれた服の上から、【
ちなみに初めて着た時は、カッコよくてついテンションが上がりまくったのだが……まあ男の子なら仕方ないよね! だってカッコいいし!
それに念のためというか、当たり前だろうが【完治草】をしっかりと持ってきている。
俺は二匹の魔物を倒した庭と外の境界線である
武器はあるな? 鎧も着たな? 【完治草】も持ったな?
「……よし」
俺は
また一歩、また一歩と、
そして────。
「あ……」
俺は完全に外に出ることに成功した。
外の景色は、柵の中から見ているのと変わらないはずなのに、俺の目にはより
今回周辺を探索するといっても、いきなり遠くへ行くまでの勇気はまだないので、家が
俺は武器の【
初めて間近に森の木々を見たわけだが、やはり俺が見たことのないような葉を持つ
花も、毒々しい色もあれば
……こうしてみると、本当に異世界なんだなぁ。
息を殺しながらその生物の気配を
ソイツは、
小人に見つからないようにしながら、【鑑定】を発動させてみた。
【ゴブリン・エリート】
レベル:120、
なんとなく想像はしてたが、ゴブリンだった。
しかし、ただのゴブリンではなく、エリートだ。上位階級のゴブリンなんだろう。
それはともかく、どうしたものか。
ステータス的には俺が上なのは分かる。
だが、このゴブリンははたして敵なんだろうか? もしかしたら、この世界ではゴブリンと人間は共生関係にあるのかもしれない。
もしそうなのだとすると、この場で攻撃を
ということで、無用な厄介ごとや争いは
パキ。
そして、足元の木の枝を
恐る恐る視線をゴブリンに向けると────。
「……」
「……」
スゲェ見られてた。
無言の時間が続く。
俺は
「や、やあ!」
「グギャギャギャギャ!」
「ですよねー!」
当たり前のように、ゴブリン・エリートはボロボロの
以前の俺なら
「グギャッ? ギャギャギャ!」
躱されたことにゴブリン・エリートは少し
もう理解できたが、ゴブリンは俺の予想通り、敵だったのだ。
敵と分かれば、攻撃してもこちらに非はないだろうということで、俺は【絶槍】を握りなおすと、買った本の内容を思い出していた。
俺の買った本の内容は、実は槍の構え方なんて書いてなかったのだ。
その時点ですでに、買う本を
まあ、捻りながら突けばいいとか、簡潔にまとめられていたから、ある意味で初心者の俺には有り
襲い掛かって来るゴブリン・エリートの姿を冷静に見つめていると、ゴブリン・エリートは真横に剣を振り回していることがすぐに分かる。つまり、頭部と下半身は
それを
すると、【絶槍】の周囲に
「ガギャ!?」
ゴブリン・エリートの額を突いたのだが、纏わりついていた風も高
ゴブリン・エリートの体がその場で数歩よろめくと、おびただしい量の
「ふぅ……」
初めて、槍を通して命を
でも、不思議と俺の心は冷静だった。
本当なら胃の中をぶちまけたくなるような
もちろん、命を奪ったという意識もあるので、その重みはよく理解できている。
それでも、俺の本能的な部分が、殺さなきゃ殺されるということを
「……ドロップアイテムは、【
皮っていうのは正直気持ち悪かったし、案の定俺には使い道のない物ばかりだったが、【アイテムボックス】にすべて
そういえば鎧を着て初めて動いたけど、全然動きが
最初は戦いを避けたかったが、こうしていろいろな確認ができたことを考えると、ある意味戦ってよかったかもしれない。
「うーん……レベルアップはないみたいだな……」
レベルアップはしなかったが、魔物相手に買った本の動きを実践できたのはよかった。庭で体を動かす分には大丈夫だが、そこから実戦になると話は変わってくるしな。内容はともかくとして、買った本が
世界が違うし何より相手は魔物だが、ちゃんと地球の武術が通用することが分かったし、これからも積極的に動いていけたらいいな。
「よし、
敵とのレベルが近かったこともあり、レベルアップはなかったが、気を取り直して俺は再び周囲の探索を再開するのだった。