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なんて書くと、彼女がまるで不真面目な人物のように聞こえてしまうだろうか? まあ実際のところ、あいつはお世辞にも真面目なキャラではなく、血ヘドを吐いて石にかじりついてでも世界を救う──なんて真似が、それこそ世界でいちばん似合わないヤツだったんだけど。
とはいえ彼女は本物だった。
間違いなくヒーローで、疑いようもなくボランティアだった。
理不尽をなぎ倒し、不合理を蹴散らし、不可能をあざ笑う、孤高にして唯一無二の存在。ゆえにヒーロー。誰にも知られないがゆえにボランティア。
これは、そんな天神ユミリの物語で。
そして、僕が世界の敵だったころの物語だ。
……ああダメだ。
これじゃ言いたいことの万分の一も伝わらない。
ええともう一回説明すると、僕の名前は
よし。
気持ちの切り替えOK。
とにかく話を始めてしまおう。始めてしまえば何とかなるさ。最後にこの物語の内容をひとことでまとめて、それでこのプロローグらしき駄文を〆させていただく。
この物語は僕こと佐藤ジローが、天神ユミリを殺すまでのお話です。