経験済みなキミと、経験ゼロなオレが、お付き合いする話。

プロローグ


 しらかわは、学年一の美少女だ。

 白河さんの存在は一年の頃から有名で、俺みたいな陰キャにも「学年一の美少女」のうわさは届き、早い段階から認識していた。

「学年一」というのは、誰も学校の全女生徒の容貌を把握していないから便宜上言われているだけで、おそらく高確率で「学校一の美少女」なんじゃないかと思っている。

 白河さんにはさらに、男心をざわつかせるような噂があった。それは「エッチが大好きなビッチで、一人の男では満足しきれないため彼氏が頻繁に替わる」というものだ。一人の相手とは長くても二、三ヶ月しか続かず、付き合う相手のテイストも、年上だったりタメだったり、体育会系だったり文化系だったりとバラバラらしい。

「それなら俺にもワンチャンあるかも」と色めき立つ者が後を絶たず、白河さんがフリーになったという噂を聞きつけると、そんなにイケてなくても彼女の周りにハイエナのように群がりにいく男たちの様子は、見ていて滑稽だと思わざるをえない。

 そう、俺は自分の分をわきまえているので、さすがに白河さんと付き合えるとは思っていない。遠くから時々目の保養をさせてもらえれば、それで充分だ。

 白河さんは、俺にとって太陽のような存在だ。

 まぶしくて直視できない。近づきすぎてしまったら、俺みたいな陰キャはきっと、ギャッと叫ぶ間もなく消し炭になってしまうだろう。

 太陽が明るく光れば光るほど、影は濃く暗くなる。白河さんが美しく輝いて見えるほど、俺は自分の陰キャを自覚する。話しかけようなんて、毛頭思わない。

 陰キャは陰キャらしく。白河さんへの憧れは、胸の中にだけ秘めて。

 平穏な学園生活を送るには、それが一番なのだから。

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