【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は5月30日刊行の『ブチ切れた公爵令嬢、勢いで悪魔を召喚してしまう』です。みなさんの感想も聞かせてください!
十年来の婚約者に捨てられそうになった場合、どうすればいいのか? そうだね、悪魔召喚だね。というのが本作の主人公アイリーンである。うーん、ぶっ飛んでいる。さすがはお嬢様。一般人の考えもつかないような事をやってのける。
さて困ってしまったのは、そんな後先考えない勢いだけの召喚に応じてしまった悪魔カインだ。悪魔の契約には魂の対価が必要だが、アイリーンの魂にはほとんど価値がない。それもそのはず、お嬢様だと言うのに私生活が滅茶苦茶なのだ。完全美容食と称して鳥のエサらしきものを食べるその残念さには正直悲しくなってしまう。悪魔ですら見るに見かねて、真顔でアドバイスし始めるのにはさすがに笑った。

しかしこのアイリーンというお嬢様、本来は明るく社交的でとても魅力的な令嬢なのだ。鳥のエサなどではなく真っ当に美味しいものを食べてニコニコしてる姿といったら、もう可愛くてたまらない。一人の素敵な女の子に変貌していく姿には親心のようなものすら刺激される。カイン、君は悪魔的な手腕を持つプロデューサーか何かか? 悪魔だった。クッ、この悪魔お嬢様の魅力を引き出すのが上手すぎる!
そんな魅力の塊であるアイリーンの境遇に私もカインと同じく、彼女はもっと素敵になるべきだと思えた。変化していく令嬢の姿と揺れ動き変化していく悪魔の心。二種類の『変化』がもたらすいびつな主従のラブロマンスは、大いに笑えながらも心にキュンとくる甘酸っぱさがあった。
文:明日香 譲
ざっくり言うとこんな作品
1)悪魔による令嬢の育成計画!? 悪魔のアドバイスによってダメダメだった令嬢のアイリーンが、素敵なお嬢様になっていく過程が面白い!
2)生活をともにすることで次第に変化していく令嬢と悪魔の関係性。種族の垣根を超えた禁断の主従ラブロマンスにドキドキ!
3)なぜ、アイリーンはこのようにダメな性格に育ってしまったのか? 彼女の境遇を取り巻く邪悪な秘密をめぐるサスペンスも楽しめる!
主要キャラ紹介
▼アイリーン
本作の主人公である公爵令嬢。婚約者に捨てられかけた際にブチ切れて悪魔を召喚してしまう。お嬢様としての資質は最悪だが、彼女を取り巻く境遇にはある思惑があり……。

▼カイン
気まぐれでアイリーンの召喚に応じた大悪魔。奇妙な魂のアイリーンに興味を惹かれ、執事として立ち振る舞う。しかし彼女の境遇を知り、徐々に態度を変化させていく。

▼パーカー
アイリーンの婚約者であり王子。しかし当の本人はアイリーンにまったく興味を示さず、別の女性レイチェルとの逢瀬に夢中。そのためアイリーンを冷遇し、遠ざけようとしている。