【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はMF文庫Jから5月23日に刊行される『口もききたくないあいつと、自習室で甘い筆談』です。みなさんの感想も聞かせてください!
やむにやまれぬ事情故に、自分たちの関係を隠している二人。そんな物語に興味が掻き立てられてしまうのは、そこに必ずロミジュリ的なドラマが生まれると期待できるからではないでしょうか。
立場上は対立する組織のトップである西丸と東口。自由奔放なカリスマとそれを抑え込む堅物生徒会長として、敵対しているように見せてはいますが、それはあくまでも周囲が求めているから。人の心の機微に聡く、他者からの期待に応えられるだけの能力があるからこそ、二人は自分の感情を抑えて、キャラを演じてしまうのです。でも、それを続ければ続けるほど心はすり減っていくようで……。すごく切ない気持ちにさせられました。

ですから、二人が同じしんどさを共有して素の自分を曝け出し、どんどん親密になっていく姿には、嬉しさを覚えると同時にホッとしました。肩の力を抜いて一緒に過ごせる相手がいるのって、すごく気持ちが楽になりますよね。
とはいえ、せっかく築いた関係を壊さないためには、秘密を悟られずに両者の対立を解消することが不可欠。これまで以上に緊張感を持って、時には策も弄しながら行う大仕事に、ハラハラドキドキです。そこでふたりは、不本意ながらもずっと演じてきたキャラクターを駆使してでも、難局に立ち向かいます。苦悩の元凶だったものを武器として振るう展開は熱いですね。優秀な頭脳をフル回転しながら、冷静にしたたかに立ち回る二人がカッコよく、ワクワクしっぱなしでした。
二人の間にはたくさんの障害が立ちはだかっています。でも感じるのは重苦しさではなく、どうやって乗り越えていくのだろうという期待感です。続きが気になる作品でした。
文:安芸沙織理
ざっくり言うとこんな作品
1)生徒会長と部活連総代という、立場上は敵同士の東口と西丸。彼らがいがみ合っていないことは、絶対にバレてはならない。秘密を共有する二人の関係性にドキドキさせられる!
2)本音で話し合えるのは、二人きりの自習室での筆談だけ。文字でのやりとりだからこそ滲み出る本心に、ニヤニヤせずにはいられない! 恋心を隠さない西丸のかわいさにも注目!
3)無意味な敵対関係を終わらせようと画策する二人。常に注目されざるを得ない彼らは、秘密を守りながら願いを叶えられるのか? 二人のクレバーな立ち回りに引きこまれる!
主要キャラ紹介
▼東口真北(ひがしぐち・まきた)
本作の主人公。周囲からは生真面目な生徒会長として、悪役冷徹メガネと言われているが、役割に徹している。立場上西丸と対立せざるを得ないが、本心では敵視していない。

▼西丸何南(にしまる・なんな)
部活連合の総代。いつもどこか妖しい笑みを浮かべており、ミステリアスなキャラで通っている。カリスマ性があり男女問わずファンが多いが、本人は今の状況に疲れている。

▼中卯月(なか・うづき)
生徒会副会長で、東口と行動を共にすることが多い。生真面目な割にからかった時のリアクションがかわいいので、皆から好かれている。西丸ほどではないがファンが多い。

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口もききたくないあいつと、自習室で甘い筆談
著者: 持崎湯葉 イラスト: さぼてんむし
喋るとバチバチ、筆談ではいちゃいちゃ。宿敵を演じる二人の裏表ラブコメ!
柊ヶ丘学園の生徒会と部活連合は対立関係にある。
特に生徒会長の「冷徹メガネ男」東口真北と、部活連総代の飄々としたカリスマ女子・西丸何南は両陣営を代表する宿敵。
顔を合わせれば口論する日々を送っていた。しかしある日の放課後、東口がひとりで通う学校の自習室に西丸が訪れる。
身構える東口であったが、西丸がノートの切れ端に書いてきた言葉は、『……てか、付き合ってる人いる?』 本当は西丸は、東口と仲良くしたいのであった!
二人は宿敵を演じながら、放課後は自習室で筆談する秘密の関係に。東口が初めて知る、可愛くっていたずら好きな西丸の素顔。
話せば敵同士、紙の上では付き合う目前(?)の恋の行方は!?