【レビュー】人形化した男子高校生とそれを操る美少女のバディもの。練り込まれた設定が物語への没入感を高める極上サスペンスです!

『マリオネット・マギアネッタ』

【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はMF文庫Jから4月25日に刊行される『マリオネット・マギアネッタ』です。みなさんの感想も聞かせてください!


「操縦型魔法人形」で「マリオネット・マギアネッタ」と読む。これだけで好みだという方も多いのではないでしょうか。作品全体に漂う仄暗い雰囲気と合わせて、好きな人にはたまらないだろうタイトルです。センス抜群の固有名詞はそれだけひたすら語っていたいぐらい魅力に溢れていますが、今回は中身の話をいたしましょう。

『マリオネット・マギアネッタ』より

報復を請け負う少女リリシュカと、それに操られる魔法人形となってしまった高校生シモン、二つの視点を行き来していく構成が面白い作品でした。血の通った人間であるリリシュカは冷徹な態度をほとんど崩さない。一方、人形となったシモンは自らの感情と倫理を積極的に伝え、それが相互に影響を及ぼしていく。シンプルな対比がグッときました。お互いの考えを徐々に認めつつも、まだ打ち解けたというには距離がありそうなところもニクいですね。

『マリオネット・マギアネッタ』より

人形中心の世界は、シモンが生きてきた現代日本とは何もかもかけ離れた様子で、本作の設定に大きな仕掛けがあることを予感させてくれます。1巻では彼の出自に関わる情報開示は決して多くありませんでした。大きな謎をこれからじっくり紐解いていくのか、すぐに怒濤の伏線回収が始まるのか、どちらに転んでも面白くなりそうです!

そして今後の注目は物語の鍵を握るであろうリリシュカの兄。やけにキャラが濃い教員たちには引っかかりを覚えていましたが、まさかこんなところに因縁を仕込んでいるとは……。次巻は大人組の動向も楽しみです!

『マリオネット・マギアネッタ』より

文:中谷公彦

ざっくり言うとこんな作品

1)目覚めた先は異世界で、美しい少女に操られる人形となっていた――。先の見えない状況で道具として扱われてしまう背徳的サスペンス。

2)陰気で幻想的な独自の世界観。それぞれ印象的な語感を持つ専門用語からも察される、拘り抜かれたディテールが魅力。

3)どのような経緯で人形にされてしまったのか。唐突な出会いは何を意図されていたのか。多くの謎を秘めたストーリー。

主要キャラ紹介

▼リリシュカ
昼は劇団、夜は報復代行として活動する「ニズド・カンパニー」の実力者。差出人不明の人形・シモンを躊躇わずに使うことを決意。エトワールを目指し、日々張り詰めた雰囲気を保っている。

リリシュカ

▼シモン
非業の死を遂げた高校生・久々里志門(くくりしもん)の記憶を有する魔法人形。他の自立型人形と比較しても一段と流暢に思考しており、人間そのものと見まごう振る舞いを見せる。

シモン

▼ヨハナ
リリシュカのルームメイト。穏やかな性格で人望も厚い人気者だが、扱う人形には陰りを帯びた印象もある。公演中の事故によって足を怪我している。

ヨハナ

作品情報
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    マリオネット・マギアネッタ

    著者: 八木 羊   イラスト: Yucomi

    成績優秀、なれど問題児。 昼は踊り子の少女は夜には違う顔を見せる。

    病気で死んだはずの高校生の俺・久々里志門が目を覚ますと、そこは見知らぬ舞台の上だった。
    「貴方は私の魔法人形よ」
    俺を目覚めさせたのは人形劇団の踊り子・リリシュカ。
    未知の世界を生き抜くためにリリシュカの相棒の魔法人形・シモンとなった俺は、成績優秀ながら問題児でもある彼女に振り回されつつも、劇団が運営する学校で他の少女らとも交流を深めていく。
    だがある晩、復讐依頼専門の始末屋組織という劇団の隠された顔を知ることになる。
    昼の舞台と夜の依頼の成績で格付けされる少女たち。
    リリシュカはその頂点である首席を狙うと言う。
    俺は人殺しに躊躇しながらも、徐々に他の人形を超える力を発揮し始め――?

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