【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は4月10日に刊行される『君のガチ恋距離にいてもいいよね? ~クラスの人気アイドルと気ままな息抜きはじめました~』です。みなさんの感想も聞かせてください!
アニメ、漫画、プラモデル、ゲーム──オタクが好むサブカルチャーは数あれど、アイドルだけは別格です。まず、実在する人間にハマる点が根本的に異なります。握手会で交流し、ライブで熱狂を分かち合い、ファンとともに成長していく──それがアイドルですよね。知り合いのドルオタ曰く、『アイドルとは、リアルタイムで紡がれる物語』。まさに、アイドルだけの独自の文化が存在するのです。
残念ながら、私はこれまでアイドルにそこまで熱中したことがない人間でして……。でも、だからこそ主人公の灯也の気持ちがわかるんです。クラスメイトに日本を代表するトップアイドルがいて周囲は大盛り上がり。けれども自分だけその輪に加われず、疎外感を抱きながらも、どこか気になってソワソワしてしまう──そんな灯也の心情に共感してしまうのです。アイドルとしては興味がなくても、飛び抜けて可愛い女の子が近くにいたら、男子なら意識してしまうのは仕方がないこと。
本作は、そんな国民的アイドルと秘密の関係を築いていくシークレットラブコメですが、まるでアイドルのプライベートを覗いているようで、読んでいてドキドキしてきます。普段は清楚系アイドルとして輝いている姫野さんも、オフの素顔はごくごく普通の女の子。親しみやすさにあふれ、ときにはわがままを言い、一方的に灯也を振り回すこともある。そんな意外な一面に戸惑うけれど、それだけ信頼されているのだと感じられて微笑ましくなります。

アイドルとしても明るい笑顔を絶やさず、ファンに夢を届けている。仕事のストレスや疲れを抱えながらも、誇りを持ってアイドルを続ける姿が眩しく映ります。たとえ相手がアイドルでなくとも、同年代の少女がここまで健気に頑張っているなら、応援せずにはいられません。
しかし、「ただの息抜きに付き合ってほしい」、「ただの男友達でいてほしい」という姫野さんの願いは、簡単そうでありながら極めて難しい。なぜなら、アイドルとしても、女の子としても、あまりに魅力的だから。誰でもガチ恋してしまう距離にいながら、「好きにならないでね」というお願いは、男子高校生にとって無理難題すぎます。
それでも彼女のために友人であろうとする灯也の想い。それはアイドルに青春をかけて頑張る姫野さんと対等な関係でいたいという男の意地でしょう。ドルオタが推しに抱く感情とは異なるものかもしれませんが、一人のアイドルを応援したいという熱意を感じさせました。
日常が物語になる──これが“アイドル”なのだと痛感させられました。
文:愛咲優詩
ざっくり言うとこんな作品
・表では清楚で明るい笑顔が絶えない人気アイドル、裏では自由気ままな女友達の二面性あるヒロイン像
・主人公だけに見せる“女神すぎる”美少女の “小悪魔”な素顔のギャップがたまらない!
・本当の自分と他人から求められる自分に悩むヒロインを元気づけて応援したくなる青春ラブコメディ
主要キャラ紹介

瀬崎灯也(せざき・とうや)
ごく普通の男子高校生。アイドルには興味がなかったが、バイトをしているカラオケ店で姫野雫の素顔を見てしまい、彼女の息抜きにつきあわされることになる。

姫野雫(ひめの・しずく)
『女神すぎる美少女』としてTVやSNSで大人気の国民的アイドル。周囲には清楚系アイドルで売っているが、素顔は自由気ままで、さまざまなストレスを抱えている。

金井夏希(かない・なつき)
灯也の同級生。軽音楽部に所属しているバンド女子。姫野雫に憧れを抱いているアイドルマニア。距離感の変わった二人の関係を怪しんでいる。
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君のガチ恋距離にいてもいいよね?~クラスの人気アイドルと気ままな息抜きはじめました~
著者: 戸塚 陸 イラスト: ただのゆきこ
素顔が気まま可愛いアイドルとの息抜きラブコメ!
元バスケ部男子・瀬崎灯也の高校には、人気アイドル・姫野雫がいる。
周囲から“女神すぎる美少女”と呼ばれる雫は、その飛び抜けた容姿と明るい性格から、クラスでも人気者だが――
「やっほー、瀬崎くん。一緒に息抜き、しよ?」
灯也の隣でそう語る自由人。これこそが彼女の真の姿だった。
皆の前では一番星のように輝く雫だが、偶然にも彼女の素顔を知った灯也だけには、気ままで甘えたがりな一面を見せるようになる。
二人はお忍びでゲームセンターに行ったり、カラオケで歌ったり、夜の公園で過ごすうちに、身体が触れ合うほど距離も近くなって……?
気ままな“女神の息抜き”に付き合っていく、秘密の物語がはじまる。