【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はファンタジア文庫から3月19日に刊行された『仮面の黒騎士。正体バレたのでもう学園でも無双する』です。みなさんの感想も聞かせてください!
能ある鷹は爪を隠すと言いますが、隠した爪を人助けの時にだけ存分に振るうというのなら、これほどカッコいいことはありません。この作品の主人公アデルは、まさにそんなニクいヒーローです。
だらけた生活を愛し、無能呼ばわりされてもまったく気にしないアデルは、一方で黒騎士として人助けをしています。その行動は矛盾しているようにも思えるのですが、正体を隠しておきたいのに困っている人を放っておけず、結局目立ってしまう彼を見ていると、それが彼の生まれ持った性格なのだとわかって、好感を抱かずにはいられません。

アデルはいわゆる無双系の主人公で、規格外の力で周囲を圧倒する姿は文句なしにカッコよく、バトル時の爽快感もしっかりあります。けれど彼の一番大きな魅力は「自分のためには力を使わない」というポリシーだと思うのです。彼が力を振るうのは、誰かの涙を止めるため。そこには周囲を見返してやろうとか、感謝されたいといった私欲は一切ありません。助けたいから助ける。自分にはそれだけの力があるのだから躊躇なく使う。彼のシンプルな行動原理は、誰もが一度は憧れる正義のヒーローそのものではないでしょうか。
そんな彼の一見すると高潔な部分が鼻につかないのは、正体がバレて「ちくしょうがぁぁぁ」と頭を抱えるコミカルな一面も引き出しているからかもしれません。ニクいヒーローでありながら、どこかニクめない不憫さもある、とても良い主人公像だと思いました。
ともすれば青臭くも見えてしまう理想を、自分の力のみで確実に成し遂げていくアデル。年齢を重ねて、それがいかに難しいかを実感できるからこそ、彼がこの上なくカッコよく見えました。読み進めるほどに、彼に惹かれていく女の子達への共感が止まりません。弱きを助け強きを挫く、昨今では珍しい直球のヒーローに、あなたもきっと胸が熱くなるはずです。

文:安芸紗織理
ざっくり言うとこんな作品
1)面倒臭がりで実力を隠しているけれど、助けを求められたら遺憾なく力を発揮して必ず救うアデルのかっこよさ。普段のだらけた態度と圧倒的実力のギャップがたまらない!
2)学園内で繰り広げられる派手なバトルが激アツ! 一流の剣技と植物を自在に操る魔法を駆使するアデルをはじめ、すべてのキャラクターが渾身の技をぶつけ合う様子は見応えたっぷりです。
3)どんな立場の相手でも分け隔てなく助けるアデル。彼に思いを寄せる女の子達が抱える事情とは……? それぞれ違った魅力を持つ彼女たちとアデルの関係性から目が離せない!?
主要キャラ紹介
アデル・アスティア
「アスティア公爵家の恥さらし」と揶揄され、無能だとされているが、実は自堕落に過ごすために実力を隠している。世間を騒がす英雄「黒騎士」であるとバレて焦っている。

エレシア・エレミレア
魔法家系エレミレア伯爵家の令嬢。魔法にかけては天才であり、容姿も飛び抜けているが、アデルに惚れ込んで彼のメイドとして付き従っている。彼への好意を一切隠さない。

ルナ・カーボン
王国の第二王女。王位継承争いで兄ユリウスに命を狙われ、アデルに救われる。生き残るためアデル達を自分の派閥に引き入れるが、政治的野心は持たない心優しい女の子。

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仮面の黒騎士。正体バレたのでもう学園でも無双する
著者: 楓原こうた イラスト: へいろー
謎の黒騎士が仮面を脱いだら――取り繕えない程の最強だった
『黒騎士』。それはどこからともなく現れては人々の窮地を救い、名も告げず去る最強の騎士。王女を救うなど無数の功績を上げているが、その仮面の奥は謎に包まれている――
「『正体不明の英雄。黒騎士の正体はまさか侯爵家の恥さらし』だそうですよ、ご主人様」
――謎にしてたのに俺だとバレたの!? あえて無能を偽って自堕落な生活を送っていたのに!
正体がバレたせいで学園でも実力を隠しきれず大騒動。世話してくれるメイド(前に助けた貴族令嬢)は何故か得意げだし、救った王女様までこちらを熱烈に慕って押しかけてくるし――
ああもう、しょうがないからもう好きにやるしかないかクソ!