【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は3月17日に刊行される『異世界最強の中ボスはレベル999 ~勇者はカンストレベルを99だと勘違いしているようです~』です。みなさんの感想も聞かせてください!
自分より上司や部下を優先し、過労で倒れた都仲はじめ。ゲームの中ボス・ザウスに転生し、今度こそ自分の人生を、と思ったのにゲームでの彼は、五年後には勇者に倒される運命で。生き残るため、彼が取った戦略は――?
配下モンスターの待遇を改善し、領地の環境を充実させる。……本人はこれを、自分のために部下をこき使う、冷酷な魔族の所業と言ってはばからないあたり、やはり彼、前世からいい人なんだなあとほっこりします。一方で、勇者のセアは、その強さと肩書きを笠に着てやりたい放題。もはや、どちらが善か悪か、わかったものではありませんね。だからこそ、セアの強化を阻止するザウスの念入りな作戦が、いわゆる「ざまぁ」な展開になるんですが、なんだかんだで強くなっているセアを見ていると、コイツ意外と努力家なのでは? と、少し感心してしまいます。さすがは勇者、ということでしょうか。

こういう、お約束的な流れのはずが、ナナメ上の展開になっていくのが、本作の面白いところ。加えて、ザウスとセアをはじめ、メエエルにアルジェナなどのヒロインたち。はてはザウスの効率的な訓練の結果、(現状では)セアよりも大幅にレベルアップしたゴブリンまで、登場キャラクターはみんな愛嬌があり、読了まで楽しく読めました。周到な作戦で次々とワガママ勇者に痛快な「ざまぁ」を仕掛けていくザウスと、それにもめげず、元のゲームとはだいぶ違う形で強くなっていくセア。ふたりの対決が、楽しみでなりません。
文:瀧田伸也
ざっくり言うとこんな作品
・五年後に迎える死の運命をどう攻略するのか、主人公が動くことで変る勇者の行動とは? 先が読めそうで読めない展開にハラハラ、ドキドキします。
・悪をなそうとする主人公は結果として正しい行動を行い、勇者は自身の正義を信じ悪行を行う。コミカルに書かれながらも「善悪」についても考えさせてくれます。
・勇者は正義と称して横暴に振る舞いますが、周囲は勇者である彼に文句が言えません。そんな勇者を、ザウスがいろんなざまぁしてくれるので、スッキリ・ワクワクしながら読めます。
主要キャラ紹介
ザウス・ジャーメル(都仲はじめ)
青い肌をした額に一本角を持つ、ゲーム・ブレイブソードクエストの中ボス。都仲はじめが転生したあとは、悪役ムーブを楽しむ無自覚ないい人に。極度の効率厨でもある。
メエエル・ソバニィー
ザウスの専属侍女兼世話係の清楚で美人な羊魔人。優しく淑やかなレディーではあるが、気位が高く部下や人間に対しては厳しい一面もある。ザウスのことは溺愛している。
アルジェナ・ウォッカ
「魔神狩り」の異名を持つ人間の美少女魔法剣士。性格は純粋で素直だが、ザウスに対しては絵に描いたようなツンデレムーブをしてしまう。
セア・ウザイン
ゲーム・ブレイブソードクエスト本来の主人公。青みがかった銀髪のイケメン。自身のことを「真の正義」と信じてやまず、自己中心的な行動をためらいなく行う。
-
異世界最強の中ボスはレベル999 ~勇者はカンストレベルを99だと勘違いしているようです~
著者: 神伊 咲児 イラスト: 片桐
最強の中ボスが勇者を迎え撃つ! 痛快ざまぁファンタジー開幕――!
お人好しの社畜・都仲はじめは、気がつくと……人気ゲーム・ブレイブソードクエストの中ボスであるザウス・ジャーメルに転生していた。
ザウスはゲーム序盤で魔公爵である父親が勇者に殺されてしまう。その復讐のため勇者に戦いを挑み、
そして――勇者に倒される運命だった。
って、倒される運命ってなんだよ!
前世は社畜でいいことなかったのに、転生先でも散々な人生なのか!?
いや待て、ザウスは現在十五歳。
勇者に倒されるのは二十歳の時だから……。つまり、残り五年あるのか!
まずは自軍の強化だな。モンスターは貴重な戦力になる。十分な食事を与えて治療も徹底しておこう。そうだ、勇者が入手する前に、ダンジョンの宝箱の中身も奪ってやるか。
なにごとも効率的に! 五年は思ったよりも短いからな!
果たして、五年後の勇者との激突は?
最強の中ボスによる、痛快ざまぁファンタジーが開幕――!