【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はMFブックスから2月25日に刊行される『転生した空間魔法使いは正体隠して目立ちたい!1』です。みなさんの感想も聞かせてください!
「目立ちたくないけど目立ちたい」。本作の主人公トーリの心情はその矛盾した一言に集約されている。出る杭は打たれるというのは世の常だが、「活躍したい」「脚光を浴びたい」という、相反する想いがくすぶ燻ってしまうのもまた人情というもの。だから私はトーリの気持ちがよく分かるし、深く感情移入する事もできた。

しかし実際のところトーリが目立たず異世界生活を送るのは難しい。彼の扱う『空間魔法』は強すぎるのだ。【断裂】の魔法を使えば最強のドラゴンだろうが首と胴が切り離される。そんな力を用いて目立たないなど、どだい無理な話だ。事実無理だった。目立ちたくないのに最強の力を持っているアンバランスさに悩むトーリの姿には、ついつい笑ってしまう。
だからこそトーリは最強すぎる『空間魔法』の力に頼りすぎることなく、自分だけの強さを模索していくのである。この点は目立ちたくないというトーリの心情が確固たるものであると、感心する部分だった。偉いぞトーリ。
だがいざ仲間や街に危機が迫ると、『空間魔法』の使用を躊躇しない。謎の仮面魔法使いとして縦横無尽に無双を行う。普段平凡な冒険者であるトーリが、姿を隠す仮面をつけた瞬間、最強の存在になる。そのカタルシスたるや、非常に爽快感があり読んでいて気持ちがいい! 正体が分からなければ目立っても問題ない。なるほど。私、これ知ってる。世を忍ぶ仮の姿というやつだ。

平凡と最強というトーリの二重生活にはしかし、マリーンを始めとした彼の正体を追うヒロインたちが迫るのだ! 正体バレを危惧するトーリには不穏要素でしかない。そんな子たちに囲まれて、これからどうなるのか。先の展開を想像するのも、実に楽しい!
文:明日香譲
ざっくり言うとこんな作品
1)異世界転生したトーリが、正体を隠しヒーローのように活躍する爽快感と、正体を探られてビビるコメディ要素のバランスが最高。
2)攻守一体の最強魔法『空間魔法』を駆使し、並み居る強敵たち相手に無双する圧巻のバトルシーンは大興奮間違いなし!
3)普段は平凡なトーリが、『空間魔法』に頼らず自分なりの強さを求めていく姿は、彼の目立ちたくない信条を応援したくなる。
主要キャラ紹介
▼トーリ
転生者。無敵の『空間魔法』の使い手。出る杭は打たれるという信条の下、あまり目立たずに異世界で活躍する方法を探る。その結果、謎の仮面魔法使いとして大活躍することに。

▼マリーン
《魔女》の異名を持つ、冒険者パーティ《白亜の剣》の魔法使い。王国最強の魔法の使い手。トーリの魔力に奇妙な懐かしさを感じ、彼に強い興味を示す。クールな食いしん坊。

▼アイシャ
《斬姫》の異名を持つ、冒険者パーティ《白亜の剣》のリーダー。『纏い』という戦闘技術を使う、数少ない☆6冒険者。命を助けてくれた謎の魔法使い(トーリ)の正体を追う。

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転生した空間魔法使いは正体隠して目立ちたい! それ俺ですとは言いません 1
著者: 岳鳥 翁 イラスト: KeG
転生したので最強の《空間魔法》で目立ちまくる! (正体は明かしません)
「もしかして……謎の実力者ムーブして目立てるのでは?」
子供を救って異世界転生した東山東里が、転生特典のくじ引きで貰ったのは――特異魔法【空間魔法】を扱う最強の力!?
東里は『謎の実力者ムーブで目立ち、その噂を酒場の端で耳にしながら美味い酒を飲む』という夢、そして憧れのヒーローのように活躍することを決める。
そんな東里は転生後すぐ、デカい魔物にやられるピンチの冒険者パーティを救う状況に出くわした! 正体隠して颯爽と助けたのはいいものの……彼女たちは国でもトップレベルの冒険者パーティだった!? しかも魔物も最強クラスで!? 想像以上の規模に、ニヤニヤどころか冷や汗ダラダラ! 果たしてトーリが美味い酒を飲める日はくるのか!? いやきっとくるはずだ……!(願望)