【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はファミ通文庫・新文芸から1月30日に刊行される『一般聖者の救済戦線』(著者:破滅/イラスト:ファルまろ)です。みなさんの感想も聞かせてください!
『治す』スキルを治療だけでなく、神からの干渉を断つことや、いわゆる洗脳の解除に使うまでは想定の範囲内。ただこのうえに「亜人大粛正」によって立場が分かたれた種族間の禍根や、異なる神への信仰等、センシティブな問題を作品が暗くならない程度に、うま~く織り込んだことに脱帽です。
語り部でもあるジタローは決して高潔な人間ではないのですが、良識ある好漢で、読んでいくうちにどんどん印象が良くなっていきました。
ちなみにジタローさん、人並みのスケベ心を持ちながら子供には断じて手を出さない等、自制のできる紳士。こちらもすっかり安心して読んでいるので、お尻ぺんぺんや、それに伴うちょっとの暴走……だって、微笑ましく見ていられます! ホントです! チャンスがあれば逃さないガッツだって感じられます。次こそは大人向けのサービスシーンも期待しちゃいますよ!

最後に触れておきたいのは、ジタローの趣味「ウェブ小説を読むこと」について。他にも特徴的な喋り方をするわかりやすい悪役が登場するなど、メタな表現が散見される本作。これによって話の本筋でない部分がさりげなく簡略化されているため、数ある異世界ものの中でも群を抜いて読みやすいです。余裕がある分は、こちらがもっと読みたい! と思う描写のボリューム感に繋がっていて唸りました。話のスケールが更に広がりそうな、今後の展開が楽しみな一作です。
文:中谷公彦
ざっくり言うとこんな作品
1)どんな傷も『治す』ことができる応用で、服従を強制させられているものたちを解放していき、仲間を増やしていく王道ストーリー。
2)亜人への差別がはびこる過酷な世界を、強力なスキルで切り開いていく爽快感! 根深い問題をさらりと読ませる、軽妙な語り口が見事。
3)猫耳姉妹に竜人族といった魅力的な人外娘たち。助けた恩だけで好かれるのではなく、それぞれを尊重して、仲を深めていく様子は必見。
主要キャラ紹介
左)ジタロー
暴漢に刺されたことをきっかけに、異世界へ召喚された青年。
右)ニケ
奴隷となり心身傷ついた猫獣人の少女。同じく奴隷となった妹の救出を願う。

アストレア
『均衡』と『調律』を司る女神。ジタローに加護を与える。

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一般聖者の救済戦線
著者: 破滅 イラスト: ファルまろ
使命は女神の布教活動――でもなぜか俺が崇拝されているんだが
異世界に勇者の一人として召喚されたジタロー。彼に与えられたのは、『治す』というどんな大怪我も呪いも治すチート級回復スキルだった。戦争の道具として勇者を操る呪い「絶対服従紋」をスキル『治す』により解いたジタローだったが、依然として絶体絶命の状況は変わらない。だが突如現れた女神アストレアによって窮地を救われると、女神の信仰回復と悪神の手引きにより召喚された勇者たちの救済の命を受けるのだった。こうして神の使徒となったジタローは布教の旅に出るのだが……。神の使徒の救済戦線開幕!!