【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はMFブックスから12月25日に刊行される『怠惰の魔女スピーシィ1 魔剣の少年と虚栄の塔』です。みなさんの感想も聞かせてください!
人間関係は難しい、煩わしい──けれど人間社会において他者とのコミュニケーションは欠かせないもの。本作の主人公スピーシィも魔術に没頭するあまり他者との関係性を蔑ろにした結果、追放されてしまいます。けれどその事件こそが彼女を覚醒させる結果になるなんて、何たる皮肉。予想外の展開を見届けずにはいられません!
追放された先は、魔獣が湧き出る恐怖の島。そんな場所でスピーシィは、魔獣や他の罪人を魔術で制御し、貴重な魔草で大儲け! これぞ正しい魔術の使い方……でなくとも、スピーシィには合っているのでしょう。だって美容と健康に良いお昼寝付きですもの。なんてホワイトな職場!
そんなある日。少年騎士のクロがやってきて、危機に瀕した王国の救済をスピーシィに求めますが……自分を追放した国を救う義理なんてあるの? とバッサリ切り捨てちゃう。自分を貶めた奴らに良くしてやる義理なんてないですものね。いいぞもっとやれ。
けれど困るクロを哀れに思ったようで、主従を結ぶことを条件に協力することに。人の心がないわけでもなくてちょっと安心。スピーシィは姫ではなく、クロも正式な騎士ではないのですが……。それでもひざまずいて忠誠を誓い、それを受け入れる様はさながら本物の姫と騎士のようでグッとくるものがありました。
ごっこ遊びのような関係でも、スピーシィはクロを振り回してとっても楽しそう。貴族や王妃などといった枠に収まらないほうが、彼女は生き生きと輝いて見えます。そんな彼女が助けてやる義理もない王国を引っ掻き回しつつ、その深~い闇を暴いていく。善人ではない、けれど外道でもない。その愉悦極まりない自由な行動が痛快に突き刺さります!
文:入賀ましろ
ざっくり言うとこんな作品
1)規格外の魔術の才能を持って周囲を圧倒するスピーシィ。罪人として追放された彼女が『魔女らしく』やりたい放題する姿が痛快!
2)わがままプリンセス(魔女)なスピーシィと、振り回されつつも付き合ってくれる少年騎士クロの主従関係にキュン。
3)亡国の危機に瀕する王国が抱える闇は想像以上に深くて……!? 謎が徐々に解き明かされる重厚なストーリー展開に引き込まれる!
主要キャラ紹介
▼スピーシィ
大貴族の長女で類まれなる魔術の才能を持つが、コミュ障ゆえに策略に嵌められて追放される。国の存亡や王の命令よりもお昼寝の方が大事だと主張する、ちょっと変わり者。
▼クロ
主の命を受けてスピーシィの元にやって来た少年騎士で、国の暗部を支える『影の騎士』の一員。まじめな性格のため、スピーシィのわがままに振り回される。
▼ローフェン
スピーシィの元婚約者で、現国王──通称・魔術王。魔力を生み出す塔の建設を実現し、魔術を発展させることで衰退していた王国に繁栄をもたらした偉大なる功績を持つ。
▼プリシア
名門騎士を輩出する家系の出身で、ローフェンを支える王妃。スピーシィを策略に嵌め、追放した張本人。他人に興味がないスピーシィが顔を覚えるほどの狡猾さを発揮する。
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怠惰の魔女スピーシィ 魔剣の少年と虚栄の塔 1
著者: あかのまに イラスト: がわこ
魔に魅入られた国の謎を、怠惰の魔女が暴き出す!
若くして魔法使いの才覚を持ち、王子の婚約者だったスピーシィ。
しかし、あらぬ嫌疑をかけられ、婚約破棄され罪人が住まう辺境の地に追放されてしまう。
それから20年後――王国は【停滞の病】によって滅びの危機に面していた。
「貴女に王から調査依頼が出されています――原因を突き止めろと」
「私を追放した国王様から? 不思議なナリのあなたに免じて、私を護衛してくれるなら考えましょう」
辺境で怠惰な日々を過ごす魔女を訪ねてきたのは、魔剣を佩いた少年。
怠惰の魔女が動く時、魔に魅入られた王国の真実が紐解かれる!
(なお、魔女にやる気はあまりない)