【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はMFブックスから8月23日に刊行される『初歩魔法しか使わない謎の老魔法使いが旅をする』です。みなさんの感想も聞かせてください!
年老いた、飄々とした雰囲気の冒険者。ギルドで彼を見かければ、誰もが歴戦の強者だと思うはず。そのぶん、仲間に誘うなら、きっとお高いに違いない。しかし、ヘルートの契約金は、まさかの格安。なぜなら彼は、本当に初歩的な魔法しか使えない、魔法使いなのです。
それなら彼は、見かけ倒しの残念キャラなのかと言うと、決してそうではありません。確かに、単純な魔法での攻撃は……ちょっと頼りないですが、ヘルートには確かな観察眼や、道具や魔法を応用的に使う、自由な発想力があります。このあたりは、年の功と言ったところでしょうか。旅の途中で出会った冒険者たちを支え、鼓舞し、勝利に導く。魔法使いとしての実力はともかく、彼の言動は、間違いなく、歴戦の勇士。渋みの効いた格好良さを感じます。
また、彼には謎が多い、というのも魅力のひとつ。年齢の割に身体能力が高かったり、普段は丁寧な口調なのに、ふと粗野な一面を見せる場面も。なにより、彼が大切に持ち歩いている「永久氷壁の欠片」。このアイテムにまつわる過去の出来事が、彼が旅を続ける理由なのであれば、気にならないわけがありません。
彼が旅先で出会う人々も魅力的で、彼らとヘルートのやりとりは、若い冒険者のそれとは、また違った趣もあります。高齢の主人公ならではの、落ち着いた雰囲気と、それでいて熱さも感じられる展開は、本作特有の持ち味でしょう。前に出るだけが活躍じゃない、という大人の格好良さを、もっと見たくなる作品です。
文:瀧田伸也
ざっくり言うとこんな作品
1)柔和な雰囲気の老魔法使いが、ときには自由な発想で戦い、ときには力強く若き冒険者を助ける。年長者らしい、渋い活躍が格好いい
2)老魔法使いらしからぬ体力。時折見せる妙な迫力。そして彼が持つ「永久氷壁の欠片」。ヘルートにまつわる、数々の謎に興味津々
3)ある目的のために、あてのない旅を続けるヘルート。彼が行く先々で起こる出来事や、街の様子、そこで出会う様々な人々も魅力的
主要キャラ紹介
▼ヘルート
冒険者ギルドでは、ルーキーのような契約金を設定している老魔法使い。ただし、使える魔法は初歩魔法のみ。普段は飄々としているが、時折、猛禽のような鋭い眼光を放つ
▼カテナ
霧に閉ざされた村で出会った少女。霧を晴らすための生贄に選ばれたが、ヘルートに救われ、旅の同行者に。まだ幼いながらも、金銭に無頓着なヘルートを支えるしっかり者
▼サークス
「魔物狩人」の称号を持つ、世界冒険者ギルド協会認定の特級冒険者。余計なことばかり言うので、カテナは苦手にしているが、彼の強さと、人々を守ろうとする意志は本物
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初歩魔法しか使わない謎の老魔法使いが旅をする 1
著者: やまだ のぼる イラスト: にじまあるく
謎の老魔法使いが、かっこよすぎる!
冒険者パーティ“燃える魂”に、魔法使いの欠員が出る。彼らが臨時メンバーを探しにギルドを訪れ、唯一契約可能な冒険者として紹介されたのは、飄々として妙に雰囲気のある、けれど手頃な契約金の老魔法使い、ヘルートだった!
彼を仲間に加えたパーティは、ダンジョンに潜る。ヘルートは、血気盛んなメンバーたちに的確な助言をしながらも、なぜか戦いでは初歩魔法しか使わない。身のこなしは魔法使い離れしており、そしてローブの袖には、永久氷壁の欠片。パーティが窮地に陥り悲壮感が漂う中、ヘルートは緊張感のない声で言う――面白くなってきましたな。
この老魔法使いは何者なのか? そして彼の旅の目的は? 霧の村、天災級の魔物、そして過去の英雄……ヘルートの秘密と、彼の旅の物語!