【レビュー】素の自分を曝け出して、本物の恋に落ちていく!『令嬢トリアは跪かない 死に戻り皇帝と夜の国』
【新作ラノベ先読み感想文レビュー】今回は6月28日に刊行される『令嬢トリアは跪かない 死に戻り皇帝と夜の国』です。みなさんの感想も聞かせてください!
家柄と素の自分……『【推しの子】』が流行った今なら、外面と内面は異なる、というのが伝わりやすいかもしれない。アイドルとしてメディアを通して見えていることと、そのアイドルが普段なにを考えているのかはイコールではない。それは私たちも同じで、仕事相手に見せる面と家族や友人に見せる面は異なるはずだ。私もこうやって文を書いて生きているが、家の中でまで取引先に見せるような姿を見せるわけではないのだから(とはいえリモートワークなので、よく妻には見られているのだが)。
外面と内面が異なるというのは、ファンタジー世界でも同じこと。令嬢として抑圧されてきたトリアや、皇帝として周囲から恐れられているラウも、実は別の考えを胸の内に秘めていた。
本書では、トリアは婚約破棄をきっかけに、騎士となる(ラウの婚約者という制約はあるが)。ラウは、皇帝として敵に狙われながら業務に邁進。しかし、実は精神よわよわ皇帝で、身近な人間から篤く守られている。そのギャップと二人の距離感が近づいていく展開に身悶えつつも、ついつい素の自分を吐露できる相手がいるとはなんとよいことか! と考えてしまった。
自分の場合は、(先ほども触れたが)妻にならすべてを吐露できているかもしれない。けれど、そういう関係になるまでにはかなりの年月を要した。出会ってから、交際して、結婚するまで……。それをトリアとラウは出会ってからたったの数ヶ月で……(それでも更なるラウの秘密や、婚約後に国を巻き込んだ波乱が待っているのだけれど)! 王国と帝国の問題にまで発展していく二人の関係性が愛おしくもたまらない、素の自分を曝け出して、本物の恋に落ちていくトリアとラウの姿が魅力な一冊だ。
文:太田祥暉
ざっくり言うとこんな作品
・令嬢として抑圧されてきたトリアが婚約破棄をきっかけにすべて捨て去り吹っ切る爽快感。
・令嬢をやめたはずなのに何故か将来の皇妃として婚約。困っている人を放っておけない性格でどんな立場の相手もいつの間にか懐に入ってしまう主人公の度量。
・周囲から恐れられ、「死に戻り皇帝」と噂されるラウが実はよわよわ皇帝と呼ばれているくらい身近な人間から守られているギャップ。
・騎士と主、婚約者と皇帝としての仮の関係性から、本物の恋へと落ちていく二人の、唯一無二と言える信頼関係への変化。そしてラウがどんどんほだされていく甘い関係。
主要キャラ紹介
キールストラ帝国の死に戻り皇帝。前皇帝を殺した噂があるが……?
ノエリッシュ王国の令嬢だったが、婚約破棄をきっかけに騎士となる。