3人の人気作家に、KADOKAWAのサブカルチャー文化を開拓し牽引してきた角川会長が加わり、ライトノベルの30年を語る豪華座談会が実現! これまでとこれからについてじっくり語っていただきました。

(左から)水野良、角川歴彦、神坂一、鏡貴也

角川歴彦 (かどかわ つぐひこ)
株式会社KADOKAWA取締役会長。「ザテレビジョン」「東京ウォーカー」の創刊に携わる一方、スニーカー文庫や、電撃文庫などを立ち上げ、出版文化に新たな風を吹き込みメディアミックスで牽引してきた。

神坂一 (かんざか はじめ)
第1回ファンタジア長編小説大賞にて準入選した「スレイヤーズ」でデビュー。ほかに、「ロスト・ユニバース」「クロスカディア」「日帰りクエスト」(スニーカー文庫刊)など、著作多数。

水野良 (みずの りょう)
小説家・ゲームデザイナー。「ロードス島戦記 灰色の魔女」(スニーカー文庫刊)にて小説家デビュー。ファンタジア文庫では、「魔法戦士リウイ」「グランクレスト戦記」をはじめ、多くのヒット作を持つ。

鏡貴也 (かがみ たかや)
第12回ファンタジア長編小説大賞にて準入選した、「武官弁護士エル・ウィン」でデビュー。代表作に「伝説の勇者の伝説」があるほか、「終わりのセラフ」(ジャンプ・コミックス刊)の漫画原作を手がける。

ドラゴンマガジン2019年7月号では、創刊30周年を記念した『ファンタジア文庫&ドラゴンマガジン30周年記念特別座談会』を掲載。合わせてチェックしてね!

——今回、とても豪華なみなさまにお集まりいただくことになったのはKADOKAWAの新春謝恩会でのお話がきっかけだそうですね。どんなお話をされていたんですか?

鏡貴也(以下:) 最初は角川会長と水野先生、神坂先生がなにげない雑談をされていて、そこに僕も混ぜていただいていたんです。ところが、しばらく話が進むうちに、ライトノベルを日本のサブカルチャーの代表的な例として研究されている海外の方が、会長にお会いに来られたという、真面目な話題が持ち上がったんです。そして、そうした研究も始まっていることも思うと、一度、お三方でライトノベルの歴史と現状について公の場でまとまったお話をされるのはどうか……ということになって、今日に至る、と。つまり僕は、たまたまそこに居合わせた結果、若手の代表として混ぜていただけることになったわけですね(笑)。

——いやいや、鏡先生のご参加も重要です。お三方の次の世代の担い手であると同時に、20年にもなろうという豊富なキャリアの持ち主でもあられるわけで。

 デビューしたのは2001年ですからそうなりますね。とはいえ、僕はデビュー前に、一読者として水野先生と神坂先生の作品を大量に読んでいたような立場です。一緒に名前を並べていただくのは、恐縮してしまいます……。

——2001年というと、すでにパソコン通信でライトノベルという言葉自体は生まれているのですが (参考:https://togetter.com/li/331517)、まだ今ほど広まってはいませんよね。2ちゃんねる(現:5ちゃんねる)にライトノベル板ができたのは2000年ですし「このライトノベルがすごい!」(宝島社)の創刊は2004年です。鏡先生はライトノベルという言葉をデビュー当時は意識されていましたか?

鏡 僕の印象としても、2001年当時はまだ、ライトノベルというジャンルが今ほどははっきりとは存在していませんでした。ですから水野先生、神坂先生の作品はもちろん、他の作品に関しても、「これはライトノベルだ」と意識して読んでは来ませんでしたね。

水野良(以下:水野) 僕の感覚だと90年代の後半ごろから、〈ライトファンタジー〉という言葉が富士見ファンタジア文庫を中心に広まっていた印象があるんですよ。

神坂一(以下:神坂) たしかに、そんな言葉があったような……。

水野 スレイヤーズは代表例としてそこにラベリングされていたような気がします。よく読むと、ギャグの要素はあっても、内容は全然〈ライト〉じゃないんだけどね。

神坂 いやいや(笑)。

角川歴彦(以下:角川) 〈ライトファンタジー〉という言葉にもあらわれていますが、僕は「D&D(ダンジョンズ&ドラゴンズ)」という、迷宮と龍と、「アーサー王と円卓の騎士」の聖杯伝説の物語が結びついたTRPG(テーブルトーク・ロール・プレイング・ゲーム)が、ライトノベルの源流にあると考えてきました。「D&D」を安田(均)さんが日本に紹介し、その流れで、水野先生が「ロードス島戦記」という小説を書いたことが、ライトノベルの歴史の上で、とても大きい出来事だったんです。

水野 恐縮です。今日はせっかくですので、角川会長のお話をもう少し詳しくお聞きしたいのですが、「D&D」を知られたきっかけは、なんだったのでしょう?

角川 もともと私は、コンピュータゲームに関心があったんです。任天堂がファミコン(ファミリーコンピュータ)を発売する前、PCが社会に少しずつ広まっていく中で、必ずそれを使ったゲームの市場が生まれてくるであろうと考えていたんですね。

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