第二話『ちっちゃくてかわいい先輩についての考察と、照れるアフレコレッスン』4

「それでは失礼します、先輩」

「……ん、ああ、また明日な……」

 アフレコレッスンを終えて。

 どこか疲れたような表情の先輩に挨拶をして、帰路へと就く。

 今日も無事に目標を達成することができた。

 先輩を三回以上喜ばせることができた。

 あふれ出るような達成感で、りゆうすけの胸はいっぱいだった。

「今週はこれで二日連続……か」

 順調に一日三回先輩に喜んでもらおう運動を全うすることができている。

 こんなに調子がいいのは珍しい。

 今のこの勢いだったら……もしかしたら、今週こそは目標を成し遂げることができるかもしれない。

 グッと拳を握り締める。

 確かな手応えを感じながら、家への道へと足を向けたのだった。


 ✿


「ううう……今日もダメだった……」

 一方。

 帰り道をとぼとぼと歩きながら、りんはがっくりと肩を落としていた。

「な、何でいちむらは真顔であんなことができるの……心臓がジュラルミンとかでできてるの……?」

 あんなに恥ずかしい台詞せりふを口にしていたのに、顔色一つ変えないなんてもう正気とは思えない。

 本当だったらあそこで恥ずかしがるいちむらに年上の先輩としての余裕を見せつける予定だったのに。いやそもそも台詞せりふを口にする前にとことんまで照れさせる予定だったのにどうしてこうなった……

いちむらに先輩の威厳を見せつけられる気がしない……」

 それどころか、照れさせられないように踏ん張れる自信すら欠片かけらもわいてこない。

 目標達成までのハードルは思っていたよりもはるかに高いのかもしれない。

 深いため息を吐きながら、りんは家路に就いたのだった。

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