
その色の帽子を取れ Hackers’ Ulster Cycle
彼らが選ぶのは秩序を守る白の帽子か、それとも混沌をもたらす黒の帽子か。
著者:
梧桐 彰
(著者)
/
O-sd!
(イラスト)
シリーズ:その色の帽子を取れ(電撃の新文芸)
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あらすじ紹介
東京オリンピックを控え、加速するサイバー犯罪に対抗するため、高度な知的人材が求められる東京にて。クー・フーリンというサイバーセキュリティ製品をあつかうショウは、かつて同僚だったサクを探していた。
サクは優秀な開発エンジニアだったが、彼の失踪により会社は解散し、残された仲間も違う道へ進んでいた。ある日、ショウは知人に紹介された仕事を進める中、仮面に義手と義足という異様な姿の女性からサクの情報を得ることに。
廃屋に住む闇医者、落ちぶれたかつての上司、新型の拳銃をあつかう非合法員、さまざまな仲間に支えられ、ショウはサクに再会する。しかし、彼は――。
職業を決めることは人生を決めること。そう信じた親友同士の別離は、やがて大きな悲劇へつながっていく。
情報処理安全確保支援士、JNSAメンバーの現役サイバーセキュリティエンジニアによる、既存技術のみで描いたハッカーたちのドラマ。
みんなからのレビュー
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あおやまみなみ
13サイバーセキュリティに関わる2人の男、ショウとサクの話。 2人とも真っ直ぐなところが良いです。 序盤からは想像もできないラストの熱量にやられること間違いなしです。映像で見てみたい。 特に第4章の最後の方の濃密さがすごい。アルトさんがカッコ良かった。 続きを読む…
ネタバレあり
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朝子
8【非IT人の雑感】あるメディア書評と「既存技術のみで描いた…」の文句に惹かれて読了。端的に表現できずに歯がゆいけれど、余韻は被災シミュレーション番組を視聴後に近い。筆者が「今俺たちがが住んでいるのは、ハッキングで人が死ぬ世界なのだ(p331)」という危機を、読者に警告することに徹した作品。目視不可能な危険に対して、私はいかに無防備かを思い知らされた。IT技術に留まらず、見聞きしたことのある現実で実際に発生したサイバー攻撃事件、実在するセキュリティー他IT企業に触れ、易しい説明も欠かさないので、 続きを読む…
ネタバレあり
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ちゃか
4学生時代に出会った友人、サクと一緒にIT分野を学んでいったショウ。 サクが天才的な技能で作り上げたツールを、ショウが営業していくというスタイルで、二人は、順調に成長していたはずだった。 しかしある日サクは失踪し、シュウは失意の中で怠惰な生活を送ることに。シュウの葛藤っぷりは中々のモノで、うじうじしてるな……とは最初ちょっと思いましたけど。 それだけサク相手に真摯だったからこその最後なんですよね。読み返すと印象変わりそう。 続きを読む…
ネタバレあり
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お咲さん
4セキュリティ製品を扱うショウは忽然と姿を消した親友サクを探し続けていた。だが、その先に待ち受けていたのは想像を絶するような悪夢でーー近い未来に起こり得そうなサイバーテロは読んでいると非常にリアルで恐怖を煽る。我々の世界は薄い氷上に打ち立てられたものであるとまざまざと突きつけられる。ITは使い方を誤れば簡単に人間を殺し、社会を崩壊させる。それを御するは秩序を守る心、愛なのかもしれない。ライト文芸とは思えない重みのあるハードボイルド小説でした。 続きを読む…
ネタバレあり
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臓物ちゃん
3情報技術に溢れた2019年の東京でサイバーセキュリティへの理念を違えた親友同士が対決する、福田和代や一田和樹とはまた違った味わいのサイバークライムサスペンスの力作。キャラはライトだが情熱はハード、ヤマハMOTOROiDとか実在するイカしガジェットがポンポン出てきて都会はハイカラだっぺ〜と感心しながら一気に読んだ。同月に発売された竹田人造『人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル』に比べるとIT分はやや薄味だが、まぁなんかカッコイイこと言ってんな〜ぐらいの認識でも十分楽しい。すげー人が死ぬけどオススメ。 続きを読む…
ネタバレあり
製品情報
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レーベル
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発売日2020/11/17
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定価1300円+税
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ISBN9784049133295
パートナーのおすすめレビュー
つむぎ
かつて多くの企業へ実際に被害をもたらした、ランサムウェアのお話が出てきたりなど、この物語に出てくる事件の多くは、現実で私たちが体験してきた出来事そのものです。作中のサイバー攻撃も、「世間がテレワークに切り替えていく中、社外へ一切の情報を持ち出せなくなる」なんて表現されたりと、このお話の舞台は、現代のまさにこの時なんですよね。東京を舞台に具体的な地名もたびたび登場するので、今もどこかで物語の登場人物たちが本当に暮らしているのかな、なんて、心地よい没入感を覚えちゃいました。
そして、現実に即した精緻な描写が生み出すのは、サイバーセキュリティという耳慣れない分野の事件における、真に迫った迫力です。東京に旅客機が落ちてくるなんて大惨事にも、そこに至りうる道程がしっかりと描かれていて、現実でもこんなことが起こるかもという真実味にあふれているんですよ。クライムサスペンスにふさわしい、新鮮な驚きとドキドキが止まりませんでした……!
レオン
でも、突如失踪したサクが次に姿を現したとき、彼はブラックハッカーとして、飛行機墜落事故や都市インフラの停止、信号の作為的操作による事故の誘発等、サイバー攻撃によるテロ活動を辞さない人間になっていた。なぜかって? 作中ではサイバーセキュリティを生業にした者として、信念を貫いている結果なんだって明かされているけど……自分の人生の大半を――場合によっては全てを捧げるものと考えれば、仕事ってある意味それだけ重いものなのかもしれないね……。
サイバーセキュリティに人生を捧げた者として、信念のためには旧知の人間すら殺す。倫理的には受け入れられない価値観だけど、だからこそ、サクの想いは果てしなく純粋なんだ。現代の倫理を超えた場所で繰り広げられる、仕事への向き合い方や、親友との命懸けのぶつかり合いは、サイバー世界が舞台でありながらどこまでも人間的。心の深いところにぐっとくるお話だったな。