あらすじ紹介
古来より伝わる御伽噺の数々――。
物語の英雄達は、人知れず現代の浅草に顕現していた。
彼らの使命は、悪しき怨念と共に現れた魔物「夷狄」の討伐。
だが、この使命の中心である「桃太郎」の顕現者、桃瀬みろくはというと、
「……腹減りすぎてマジ死ぬ……」
家賃三万三千円のボロアパートで飢え死にかけていた……。
肝心の才能は弟の小太郎にしか受け継がれず、不貞腐れて大学も休学したみろくは、無力・無能・無職の干物女に成り下がっていたのだ。
だけども、所詮この世は諸行無常。どう見てもヤクザにしか見えない顕現者のリーダー「師匠」に雇われたみろくは、再び悪鬼妖怪と対峙することに……。
これは「昔々」から続く現代の御伽噺――百鬼目録(フェイクロア)。
鬼退治は桃瀬さん家にお任せあれ!
みんなからのレビュー
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星野流人
27日日日さんの原案に、ゆずはらさん世界観設定を加えて、2名の執筆陣を加えた御伽話現代伝記小説。「桃太郎」になりそこねた主人公のみろくがいい具合に喪女で、気に入っています。1巻だとSOWさんの「ものぐさ太郎」がとてもおもしろく、文章のノリも読みやすくて好きでした。SOWさんの出番はここだけのようなので、少し残念です。 1巻だと夷狄や小太郎ガールズ絡みの話が少なかったので、そのへんは後半のお楽しみといったところでしょうか。全体的に雰囲気が裏社会チックというか、顕現者たちとは関係なくハードな部分が多めでしたね 続きを読む…
ネタバレあり -
ひぬ
12桃太郎の魂と記憶をそれぞれ継いでいる桃瀬姉弟を軸に、浅草に現れる怨念と魔物「夷狄」の討伐をする事になります。主人公のみろく自身は桃太郎の記憶しか継いでいないため、力は無く戦えないため、あまり戦闘要素はない1巻でしたが、面白かったです。複数作家が参加するリレー形式で、それぞれの作家ごとに作品の雰囲気が違う感じでした。私の一番のお気に入りは「ものぐさ太郎」のエピソードでした。全体的にちょっとB級映画チックに感じました。 続きを読む…
ネタバレあり -
真白優樹
12御伽噺の主人公達の生まれ変わりが集まる浅草で、それぞれ桃太郎の力と記憶を受け継ぎ転生した姉弟が恨みにより生まれる化物を討伐する為駆け回る物語。―――継いだ呪い、生み出す憎しみ。全部抱えてそれでも生きて。 主人公も脇役達もはみ出し者の変人揃い。そんな奴等が織りなす物語であり、時にしみじみと考えさせられたり、時に何も考えず笑える、一冊で様々な楽しみ方のできるオムニバス形式だからこそ面白い物語である。始まったばかりの戦いは、姉弟をどこへ連れていくのか。この先の道の行方とは。 次巻も勿論楽しみである。 続きを読む…
ネタバレあり -
のれん
12非常に変わった形式。 設定的にはオーソドックスな怪奇譚なのだが、複数の作家が同じ世界観どころか同じキャラまで使って短編を仕上げている。 主人公の設定が短編探偵向きなのは分かるし、それぞれのキャラ設定も光るものがあるのだが、やはり作家ごとの特色や文体にキャラは揺れているので、キャラがイマイチ掴みきれなかった。 また作品の雰囲気も明暗の差が激しく、設定自体にインパクトがあれば気にならないであろう作品の多様性が足を引っ張っていた。 連続刊行とのことだが、逆転を次巻に期待したい。 続きを読む…
ネタバレあり -
羊山羊
11その日のご飯にも事欠く干物女にして自分より優秀な弟を持った主人公桃瀬みろくが織り成す伝奇譚。コメディ調の筆致や展開に比べ、主人公の心の劣等感や辛さが痛いほど文章に乗せられて伝わってくる。本著中ではそれは解決にならないけど、2巻で何とかなるのか。面白いのが、スーパ〇玉出や芸能人と半グレの事件など、現実を下敷きに伝奇譚を絡めている点で、伝奇モノながら荒唐無稽になりすぎない、ちょっぴり風刺のきいたダークな展開が地に足のついたエンタメしててよかった。正直もう少しふざけてくれても良かったけどナーな感想。 続きを読む…
ネタバレあり
製品情報
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レーベル
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発売日2020/11/10
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定価693円(本体630円+税)
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ISBN9784049133110
パートナーのおすすめレビュー(宣伝)
力太郎の元になった垢人形が美少女のフィギュアに置き換わっていたり、函館戦争の記憶を語る浦島太郎がいたり。現代によみがえったおとぎ話たちは、物語が作られた時代にはありえない再解釈がなされていて、私たちの知るおとぎ話と比べてみるだけでも興味と好奇心がくすぐられちゃうんですよ。中には、竜宮城とクトゥルフ神話に登場する半魚人、「深きものども」がつながっていた、なんて現代ならではのびっくりな組み合わせも。確かに、考えてみれば彼らの住処って同じ海底ですし、知り合いでもおかしくないですものね……?
この物語は、日日日先生をはじめとして、いろんな場所で活躍している作家さんたちの連作でもあります。主人公がおとぎ話の怪異に襲われる章もあれば、別の章ではえっちなお風呂屋さんがおとぎ話に結びついていてと、章ごとに異なる作家さんたちによる、読み味の変化も楽しかったですね!
ふたりいる桃太郎の顕現者のうち、その片割れには三人の女の子が全力で懐いてるし、ものぐさ太郎は判子ひとつ押すことすら嫌がってと、彼らのふるまいは伝承に則っていてとてもコミカル。ただ、おとぎ話ってハッピーエンドばかりじゃないよね。一見面白おかしい顕現者の中にも、事情を知ると背筋が寒くなる人もいたりするんだ。しかもそれが、ボクたちもよく知るおとぎ話に沿って明かされるんだから、彼らのことをもっと知ってみたい、なんて感情移入させられちゃったよ。
そしておとぎ話といえば、悪役との戦いも王道。このお話でも、災いをなす怪異「夷狄」とのバトルが繰り広げられるんだ。ただ、主人公のみろくは桃太郎っていう超有名な英雄の顕現者でありながら、戦う力を持たない異質の無能力者。主役になれない主人公っていう、特殊な視点で怪異を眺めるのも興味深いんだけど、彼女は今後、桃太郎にはなれるのかっていう、みろくの未来も気になっちゃったな。