【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は7月1日刊行のスニーカー文庫『クラスの姫は私のわんこ』です。みなさんの感想も聞かせてくださいね。
無邪気で人懐っこく、好きな人に忠実で、スキンシップが好き……みたいな女の子の事を、俗に「犬系女子」とかいうらしいです。空橋星羅という少女も、確かに「犬系」なのでしょう。ただ、彼女の場合、もっとレベルが高いというか、方向性が微妙に違うというか──。
ご主人様に叱られたい、そのうえで甘やかされたい、自称「わんこ」の星羅がご主人様に選んだのは、世話焼きのくるみ。飼い主たる素質を見抜き、そうなるように仕向ける……彼女、実はかなり欲望に忠実なイケナイわんこです。一方で、星羅のペースにはまり、自身さえ知らなかったSの扉を開けてしまったくるみ。何気ない日常から突然スイッチが入り、ふたりが理性を捨てて人から獣へと堕ちてゆく様子は、実に背徳的。
アニメでもたびたび百合をテーマにした作品を見たりもしましたが、映像と文章では、描写の生々しさが違う気がします。自分がこのジャンルのライトノベルを読むのが初めてだから、という部分も大きいのでしょうが、本来なら彼女たちだけの、見てはいけない世界をのぞき見ているようで、始終ドキドキしっぱなしでした。

本作は、百合ライトノベル作家として人気な犬甘あんず先生と百合コミックで人気のイラストレーター・桜木蓮先生による作品だそうで、物語が興味深く、濃密なのも頷けますね。ともかく、大変刺激的な作品なので、自室でじっくり読むのをオススメします。いや、あえて人前でこっそり読んで、より背徳感を高めるのもアリ、かも……!?
文:瀧田伸也
ざっくり言うとこんな作品
1)クラスでも目立たず、恋愛にも興味のないくるみ。そんな彼女が、学校一の有名人・星羅に「私を飼ってほしい」と迫られて──?
2)普通の友達のように接していく日常のなか、ふいに始まるご主人様とわんこの主従関係。誰にも言えない感情に満ちた百合の背徳感!
3)百合ライトノベルの新鋭・犬甘あんず&『アネモネは熱を帯びる』で大人気の漫画家・桜木蓮のタッグで贈る大注目作!
主要キャラ紹介
空橋星羅(そらはし せら)
明るくて可愛い、学校で知らない者はいないほどの有名人。常に周囲からもてはやされてきた事に退屈さを感じ、子犬のように叱られ、躾けられたいという願望を内に秘めている。

菜花くるみ(なばな くるみ)
友達に頼られると、放っておけない世話焼きな高校生。これまで忙しい両親のかわりに妹の面倒を見てきたが、意図せずその役割から解放されてしまい、自分自身を見失っている。

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クラスの姫は私のわんこ
著者: 犬甘 あんず イラスト: 桜木蓮
「私のご主人様になってよ」世話好きな地味子がトップ女子のご主人様に!?
《世話好きな地味子×しつけられたいクラストップ女子》
私・菜花くるみとクラスメイトの空橋星羅は、まだまだ友達ですらなくて、教室じゃほとんど話すこともない。
平凡な私と学校一可愛いと噂される女子では、クラスでの立ち位置だって違うのだ。
ある日の放課後、そんな彼女にラブレターで呼び出され――
「私のご主人様になってよ、くるみ」
でたらめな“お願い”に、私の日常は一変した。
他の誰かに空橋さんが傷つけられるくらいなら。そう言い訳して、
「……わかった。つけるからね」
今日も私は、ご主人様になる。
首輪をつけ、躾(しつけ)をして、人目に隠れて散歩して。
私たちは、どうかしている?