【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は6月30日刊行の『ギア×マジックの世界でエンジニアとして生きていく~転生者は悪役皇女を救いたい~』です。みなさんの感想も聞かせてください!
人類が半人半機の怪物ガーゴイルに抗う世界の動乱を描いた人気ロボットアニメ『ギア×マジック』の世界へ転生していた主人公グリム。原作知識を含む前世の記憶と稀少スキルのダブルチートで、エンジニアという裏方ポジションから原作改変を試みる、という物語なのだが──。

強烈なインパクトを与えるのは冒頭のシーン。原作の主人公フェルナンドが帝国打倒に大きく踏み出すはずの場面で、彼を追い詰め殺してしまうのだ。これ以上ないくらいの原作改変! 物語はそこからいったん十三年前まで遡り、被差別民の孤児であるグリムがメカニックとしてこの改変シーンへどうたどり着くかの道筋が描かれていく。
現実でアニメなどを観ると、つい登場人物の行動に不満を覚えてしまうことがある。だからグリムがやがて迎える事態を変えたい、知識を用いて状況を有利に進めたいという気持ちはわかるのだが、それは、事前に結果を知る者の傲慢さではないかとも思いながら読んでいった。しかし今回の終盤、原作で示されたフェルナンドの性格や以後の行動が明らかにされ、そりゃ殺す以外に他に手はないのかも⋯⋯という気持ちに至った。

帝国の侵略と支配という題材は、ついロシアの戦争などを意識しながら読んでしまった。フェルナンドの死後、原作知識はいずれあてにならなくなると思われるが、そんな中で全体の最善を目指し行動していくであろうグリムに、アニメ最終話でフェルナンドが突きつけられた言葉がいずれ向かわないのか……そこが気になってたまらない。
文:高橋義和
ざっくり言うとこんな作品
1)一騎当千のパイロットになれなくても、百機を倒せるロボットを十機生産できればいいのでは? という発想のもと、エンジニアが戦場を変えていく!
2)無名時代の強力キャラを次々ゲット! 歴史シミュレーションゲームのような面白さ!
3)未知の怪物との戦いこそが最優先される過酷な世界。主人公は、原作主人公よりもまともな形で世界を変えていけるのか?
主要キャラ紹介
▼グリム
前世では人気アニメ『ギア×マジック』のファンだった。属州民の上に孤児だった五歳の時に前世を思い出し、原作知識と稀少な分析スキルを活用して身を立てていく。

▼スカーレット
原作では救いようもない差別主義者として「悪逆皇女」と呼ばれていた。しかし原作開始三年前にグリムが出会った彼女は、性格に歪みは見えるもののひたむきな努力家で……。

▼グウェン
原作ではシーズン2から登場する天才エンジニアの女性。兵学校では周囲が理解できないほど頭が良すぎて落ちこぼれ扱いされていたが、グリムと組んで早くから才能を発揮。

▼マクベス
原作では反乱軍の主戦力となる、植民地出身の天才パイロット。原作開始前にグリムが偶然出会ったことで彼にスカウトされ、グリムに恩義を感じながら帝国内で頭角を現していく。

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ギア×マジックの世界でエンジニアとして生きていく~転生者は悪役皇女を救いたい~
著: 小夜中 夜市 画: ヤナギ リュータ
バッドエンドを変えるのは、アニメ未登場の天才技師!?
人類が半人半機の怪物に抗う世界の動乱を描いた大人気ロボットアニメ『ギア×マジック』。
物乞いの少年グリムは廃屋に眠る人型兵器『ギア』を見て前世を思い出し、アニメの世界に転生したことを自覚する。原作通りならば、暴走した主人公に帝国皇女が殺され、帝国崩壊のバッドエンドへ一直線。アニメ未登場キャラながらエンジニアの才能があったグリムは決意する――原作主人公を倒す最先端のギアを開発し、技術の力で皇女の死を回避すると。
ギアの整備士になったグリムは、レアな分析スキルで幼くして帝国に貢献。有力貴族や軍人から信頼を獲得し、帝国の中枢へと食い込んでいく。さらに原作知識を駆使し、未来を先取りした圧倒的な技術革新を起こしてゆき……!?
メカオタクな転生者がアニメ世界の常識を凌駕する異世界ロボットファンタジー!