【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はファミ通文庫から6月30日に刊行される『重いタバコを吸ってる不健康そうな年上美人とドロドロの関係になっていた話』(著者:友橋 かめつ/イラスト:椎名 くろ)です。みなさんの感想も聞かせてください!
男子であれば、人生に一度は年上の女性に憧れを抱く時期があるものです。幼稚園の先生であったり、学校の先輩であったり、バイト先の先輩であったり──同年代よりも垢抜けていて、大人の余裕を感じさせる仕草に、心ときめいてしまうのです。
本作も、最初は隣に綺麗なお姉さんが引っ越してきて、「これは甘々なスイートラブコメが始まるのでは!」と期待してみれば、ヒロインは清楚な見た目と裏腹に魔性の美女。二人の関係も甘々なスイーツというほど洒落たものではなく、むしろドロドロの沼に沈んでいくようなイメージが浮かんで、これは生半可な気持ちでは読めないと一気に気が引き締まりました。
しかし、そんなミステリアスなお姉さんとの自堕落な生活が、実に倒錯的で引き込まれるんですよ。ぼっちで真面目だった榎木くんが、瑠衣に影響されて堕落していく姿にも思わず共感してしまう。多感な時期の高校生が、こんな美女と出会ったら間違いなく性癖が歪んじゃいますって。社会に生きづらさを抱える現代人ほど、瑠衣の魅力には抗いづらいし、自分も高校生の頃だったら致命傷を負っていたでしょうね。
アパートの片隅で、ふたりだけの世界を作っていく姿は、まさに共依存そのものですが、社会から孤立しながらも、その関係性を完全には否定できないんですよね。周囲に嫌われても自分の意思を貫くことは、大人でもなかなかできることじゃない。瑠衣の存在が榎木くんの自己肯定感に繋がっているのであれば、それもまた一つの成長の形なのではないでしょうか。
そして最後に思春期特有の鬱屈した感情をぎゅっと濃縮した銃弾が、胸を撃ち抜いていく――憂鬱でありながらも、どこか痛快。そんな不思議な読後感をもたらしてくれる一作でした。
文:愛咲優詩

ざっくり言うとこんな作品
1)バイト先のコンビニにいつも客としてやってくる美人のお姉さんが、アパートの隣人として引っ越してきて始まるご近所付き合いがドキドキする。
2)学校に居場所のない偏屈な男子高校生が、重いタバコを吸う退廃的な美女に溺れて社会からドロップアウトしていく背徳感がたまらない。
3)思春期のモラトリアム全開。現代社会に閉塞感を抱く若者のフラストレーションをかきたてる秀逸な人間ドラマ!
主要キャラ紹介

榎木結斗(えのき・ゆいと)
一人暮らしの高校生。学校に居場所がなく、生活費を稼ぐためにコンビニでバイトをしている。小説を読むのが好き。

葉月瑠衣(はづき・るい)
アパートの隣室に住み始めた女子大生。結斗のバイト先のコンビニでいつも同じ銘柄のタバコを購入していく。

相沢紗希(あいざわ・さき)
瑠衣と同じ大学の友人で、一見すると美青年と見間違う凛々しい女性。口は悪いが面倒見が良く、二人の関係を案じている。
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重いタバコを吸ってる不健康そうな年上美人とドロドロの関係になっていた話
著者: 友橋かめつ イラスト: 椎名 くろ
ただ、堕ちていく日々
どこにも居場所のない男子高校生・榎木結斗には憧れの女性がいた。バイト先のコンビニでいつもタバコ一箱だけを買っていく女子大生・葉月瑠衣。ある日、彼女がアパートのお隣さんであることがわかると、ベランダで過ごす他愛もない時間が二人の距離を縮めていく。学校をサボっての喫茶店、酔った彼女と一夜を過ごしたりと自由奔放な瑠衣に振り回されながらも次第に依存していくようになった結斗は、その関係に溺れていく。タバコを嗜む年上美人との爛れた生活の向かう先はーー。