【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は角川ビーンズ文庫から7月1日に刊行される『初夜のベッドに花を撒く係(メイド)、魔族の偽装花嫁になる 1年のはずが100年契約でした』です。みなさんの感想も聞かせてください!
男性と女性の恋愛観って、しばしばズレがありますよね。たとえば、男性は結婚を人生のゴールと考えますが、女性は結婚が新たなスタートと考えることが多いように感じます。だからなのか、女性向けの恋愛小説は、結婚や婚約から物語が始まるパターンが圧倒的に多いんですよね。そんなところにも、恋愛に対する男女の違いが出てるなと思います。
この作品は、そんな男女の恋愛観のズレをコメディに仕上げているのが上手い。ベルドラド(夫)は結婚の契約を交わした時点で能天気に喜んでいるけれど、リシェル(妻)はもうこれからの結婚生活をどう過ごすかに意識が向いているんです。そんなズレた二人が巻き起こす新婚生活が初々しくて、毎回ニヤニヤしてしまうんですよね。
ベルドラドは花嫁のために、住む部屋を整えて、朝ごはんまで作って、かわいい護衛まで用意して、まさに「理想の新婚生活プラン」を進めようとする。けれどリシェルはそんなのお構いなしに新しい仕事を見つけて、魔王城の中を自由に歩き回っちゃう。ベルドラドの計画は毎回あっさり崩れて、「どうしてこうなった!」って驚愕する姿が、もう笑えるんですよ。しかし、彼なりに一生懸命だから、ちょっと気の毒ですけどね。
リシェルは偽装結婚を信じてるから、ベルナルドが義務で自分を愛していると思っている。けれどベルドラドは最初から本気で彼女だけを愛してるっていう。もう、このすれ違いが切ないやら愛おしいやらで、読んでて感情がめちゃくちゃ揺さぶられました。
そんなボタンのかけ違いから始まる夫婦喧嘩がリアルで、胸が苦しくなりました。背景も種族も違う二人が、衝突しながらも、少しずつ歩み寄って、お互いの気持ちを確かめ合っていく姿が素敵で、こういう夫婦の関係っていいなぁと羨ましく思います。笑えるラブコメだけじゃなくて、ちゃんと心に残る純愛を描いていた一冊でした。
文:愛咲優詩
ざっくり言うとこんな作品
1)ベルドラドのズレた恋愛観と、それにツッコむリシェルの秀逸なワードセンス。二人のやり取りがとにかく楽しい!
2)美人事務員に天才博士、美少女にモフモフまで! 足湯も完備の魔王城は賑やかで案外居心地がいい?
3)『偽装』と言いつつ……? ベルドラドの一途で献身的で激重な愛!
主要キャラ紹介

左)リシェル・テイル
王宮に勤めるメイド。王族の初夜のベッドに花を撒き、ロマンチックを演出する係。
右)ベルドラド・アウグスタ
必要に迫られ花嫁を攫いに来た魔族の青年。人間として有力商社会長の肩書きも持つ。

カーネ、カニス、シアン、ペロ
凶悪なるお留守番犬・ケルベロス。ベルドラドの部下。
-
初夜のベッドに花を撒く係(メイド)、魔族の偽装花嫁になる 1年のはずが100年契約でした
著者: 棚本いこま イラスト: むいこ
これって本当に偽装ですか!? 一途で甘くて重いニセ偽装結婚ラブコメ!
今日は王族の結婚式。新婚夫婦のベッドを花で演出するのが王宮メイド、リシェルの役目。
しかし寝室に現れたのは花嫁を攫いに来た魔族の青年だった。
「俺と結婚しろ、花嫁」
「いや私はメイドです」
偽装花嫁募集中というベルドラドに今度は自分が勧誘されてしまう。
破格の条件につられ承諾すると――
「魔王城で1年、俺の領地で99年。たった100年の結婚生活だ」
囲い込みが止まらない! 初恋拗らせ魔族の一途で甘い激重愛!