【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はMFブックスから6月25日に刊行される『千変万化の変装術師』です。みなさんの感想も聞かせてください!
カレンがトリップした異世界は政争のど真ん中! しかも通勤メイク顔が行方不明中の第二皇子の婚約者と激似だったからさあ大変! 彼女はいったいどうなってしまうのか!?
……これが導入ですからね。いきなりのクライマックス展開に引き込まれてしまったわけですが。すぐに目を奪われるのですよ。物語の芯に据えられた「化粧」の魅力に。

化粧は女性にとってすごく身近なものですよね。カレンは異世界トリップ特典で現代世界の化粧品を自由に購入できます。でも、その品で商売無双したりしない。コンプレックスや不幸を抱えた人々と真っ向から相対し、地味女子だからこそ磨き抜いてきた化粧スキルを駆使して幸せをもたらしてしまうのです。
そして救われる人たちを見ている内、気づくわけです。顔というものには映らないカレンの本当の美しさと強さ、優しさに。読み進めるほど好きになる主人公、たまりませんねぇ。
しかもですよ。政争のどろどろさしかり、周囲の人々の性格やスタンスしかり。ふわっとごまかすことなく舞台背景やキャラクターが描き込まれていて、何気ない1シーンが思わぬ展開を巻き起こしたり、「伏線でしたか!」となったりする。
異世界ファンタジーのテンプレへしっかり沿いつつこうも骨太な物語を魅せてしまうこの構成の巧みさ、舌を巻かされてしまわずにいられません。ひと言で表すならやばいです!
さくさく読み進められるのに、気がつけば綿密に組み上げられた設定とそれによって浮き彫られるドラマの深みにまんまと嵌められてしまうこの極上の悔しさ、みなさまにも味わっていただきたい!
文・髙橋剛
ざっくり言うとこんな作品
1)カレンは自分の顔にコンプレックス持ち⇒チート化粧術を持って異世界転移!?
2)皇子皇女に拾われて、化粧スキルを使って異世界ライフを楽しんでいく!
3)仮面を被って顔を隠している謎の男性ヴィンターと親交を深めていく一方、この国の後継者問題にも巻き込まれていき……?
主要キャラ紹介
▼カレン
卓越した化粧の技を持つ23歳の社会人。だが、気がつけば見知らぬ世界にいて、その通勤メイク顔が行方不明の伯爵令嬢ベアトリスとそっくりだったことで騒動に巻き込まれる。

▼プリマ
側妃から生まれた中央帝国第一皇女にして権勢欲皆無なしっかり者。弟のサマルと共にカレンを保護し、パトロンを買って出て以来、彼女の不慣れな異世界生活を支えることに。

▼サマル
中央帝国第三皇子でプリマの双子の弟。地位にそぐわないチャラさが特徴で、姉と共にカレンの保護者を務める。また、髪の毛の色を変じる特殊能力を備えており、女装も得意。

▼ハーベスト
プリマ、サマルとは別の側妃を母に持つ第二皇子。婚約者の伯爵令嬢ベアトリスと幸せに過ごしていたが、第一皇子が突然の病に倒れたことで政争の中心に立たせられてしまった。

▼ヴィンター
カレンが魔法を習いに通っている魔法院で出会った謎の男性。とある理由で仮面を被り、顔の左側を隠している。ぶっきらぼうながらもカレンを気にかけてくれているようで……。

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千変万化の変装術師 化粧スキルは万能です
著者: 八華 イラスト: 盧
異世界来たけどメイクがしたい!
会社員として働いていたごく普通の女性カレン。彼女にはある隠しごとがあった。それは、自分の素顔が嫌いなこと。彼女は努力してメイクのスキルを上達させて、美人だといわれる顔をつくっていたのだ。
――そんなカレンはある日、異世界に転移してしまう。元の姿のまま異世界に来ていることに気づいたカレンは、今後はちゃんとした化粧ができないことを悟り絶望する。しかし、カレンは日本で使っていた化粧品を召喚する特殊スキルを取得していた!
さらに、カレンの化粧姿がこの国の第二皇子の婚約者(行方不明中)に似ていることが判明。カレンは第三皇子・サマルと第一皇女・プリマに保護されることに。ようやく平和な王宮暮らしがはじまると思われたが、やがて後継者問題に巻き込まれていき……!?