【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は6月10日発売の『白瑞宮のお料理番 異世界の神様と飯テロスローライフを満喫する』です。みなさんの感想も聞かせてください!
瑞獣が守る国でありながら、三百年前の人間の非礼によって神々が去ってしまった清槐皇国は、かつての豊かさや美しさを失い、衰退の一途をたどっています。そんな清槐皇国に、異世界から召喚された冬花。彼女自身は後宮で料理に没頭するスローライフを送っているつもりですが、その行動や料理はやがて神々の心を虜にしてゆき──。

料理や食べ物をテーマにした小説は大人気で、さまざまな作品が刊行されています。その中でも本作が個人的に大ヒットだったのは、おいしそうな食べ物描写に加えて、冬花の料理哲学である「誰かに食べてもらってこその料理」という信念にぐっと来たからでした。お嬢様体質の、不遜にも思える後宮妃に対しても、諌めたりこらしめたりすることなどなく、妃が大切にする喉をいたわりながら、栄養にまで気を配った心からのもてなしをしてみせる冬花。心のこもった料理を振る舞うことによって、気難しい相手の心までも密かに解きほぐしていくその姿に、優しくも心の通った冬花の人間的魅力をひしひしと感じるのです。
また、こまやかで食欲をそそる料理描写も本作のポイント。現代日本とは異なる世界でも冬花は創意工夫を凝らし、読んでいる私たちにも親しみのある料理や風味をありありと想起させてくれます。何より、食べ物を通じて人々に笑顔を届けようとする、冬花のホスピタリティがたまりません。

人間たちの後悔と切ない願い、そして神々の葛藤や人間に歩み寄ろうとする姿が織りなすドラマも必見です。男女の機微には鈍感な冬花と、一筋縄ではいかない冬長官との今後にも大いに期待を寄せています!
文:嵯峨景子
ざっくり言うとこんな作品
1)冬花が作る料理がたまらない飯テロ小説。のど飴やクレープ、梅シロップに卵焼きなどなど、異世界にはない料理で人々の心を掴む描写が絶品。
2)本当は偉い神様なのにもふもふキュートな姿で冬花に懐く「白ちゃん」がかわいい! 愛らしい外見をした神様たちの言動にほっこり癒される。
3)人間が犯した罪によって「神去りの国」となった清槐皇国を冬花が救う! 冬花の活躍が神々と人間の途切れた絆を繋ぐ、心揺さぶるファンタジー。
主要キャラ紹介
▼冬花(とうか)
清槐皇国という異世界に連れてこられた日本人。瑞獣・白澤から力を授けられた「白瑞の巫女」だが偉ぶることはなく、白瑞宮という後宮で大好きな料理三昧の日々を満喫中。

▼冬雷宗(とうらいそう)
冬花と白澤の秘密を知る美形の宦官。後宮全体を監督する立場にある長官で、いつも仕事に追われている社畜。皮肉屋で冬花に対して辛辣な態度を取りがちだが……。

▼白澤(はくたく)
冬花をこの世界に連れてきた神様。普段は真っ白な牛のぬいぐるみのような外見で冬花から「白ちゃん」と呼ばれている。清槐皇国の人々に敬われているが人前に出るのを嫌う。

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白瑞宮のお料理番 異世界の神様と飯テロスローライフを満喫する
著者: 巻村 螢 イラスト: 藤小豆
ありがた~い神様の力を料理に全振り!? 空腹もお悩みもお任せください!
中華風の異世界に迷い込み、後宮で暮らすことになった日本人の冬花(とうか)。瑞獣・白澤(はくたく)の巫女として、神様の力を借りられる【白澤図】を授かった彼女だったが、本人は大好きな料理に夢中で……。神様にハーブを育ててもらったり、炭酸水を出してもらったり、ありがたい力を料理に全振り!?
美形の長官が持ち込むトラブルや後宮の権力闘争なんて何のその、梅クレープやフレンチマントウで神々や後宮の人々をメロメロにする、自由気ままなグルメ生活がスタート!