【レビュー】杉井光先生の新作は、2周目必至！　冒頭から最後のページまで一文たりとも目が離せない作品です。

【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は6月10日に刊行された『天嬢天華生徒会プリフェイズ』です。みなさんの感想も聞かせてください！

　杉井光先生の新作――！ そう聞けば、期待に胸躍らせずにはいられない。果たして本作はその期待通りだった。本作の舞台、巨大学芸都市「天涯学園」は、入園にパスポートの提示が必要になる等、日常とは切り離された世界だ。しかしリアリティのある描写によって、この世界にたちまち引き込まれてしまう。たとえば生徒の価値を査定し、現実世界の社会に売り出すビジネスとして確立している点などは、非日常な学園の存在に現実性の説得力を感じ、とても興味深かった。

　物語をことさら彩るのは登場人物たちの会話劇だ。ウィットに富んだ言葉遊びにも似た会話の応酬は非常に愉快。キャラを掘り下げながら繰り広げられる一幕はニヤニヤが止まらない。キャラ達がじゃれ合う場面をずっと読んでいたい気分にすらなってしまう。この味わい深い会話劇は、まさしく杉井先生の真骨頂だ！

　キャラの中で特筆すべきは本作の語り部「先生」の存在だ。天涯学園という非日常の中で凰華の無茶ぶりに翻弄される不憫さも、その中でなんとか頑張ろうとする健気さも、実に愛らしいったらない。その一方内心ではツッコミをいれまくりなところもギャップが心地良い。こんな面白可愛い先生は凰華たちじゃなくても、そりゃ好きになってしまうよ。読めば読むほどそんな先生沼にハマっていく私がいて、ちょっとこわいくらいだった。

　そして本作最大の魅力は、何度でも読み返したくなるという点だろう。とても細かい部分まで、「あの描写はこういう意味だったのか！？」となってしまうのである。本作に仕込まれた数々のギミックは驚きの連続だ。神は細部に宿るというが、まさに冒頭から最後のページまで一文たりとも目が離せない作品だった。

文：明日香 譲

ざっくり言うとこんな作品

・非現実な巨大学芸都市『天涯学園』を舞台に繰り広げられる、王道ラブコメ作品！　特別な恋愛体験が味わえること間違いなし――！

・溢れんばかりの『杉井 光』節は本作でも健在！　小気味の良い会話劇と、思わず唸ってしまいそうな謎の深さに打ちのめされる！

・この物語には様々な謎が隠されている！？　「えっ」と思わされる仕掛けの数々は２周目必至！　何度でも楽しめる極上の読書体験！

主要キャラ紹介

天祿院凰華
輝ける生徒会長。天涯学園を自分の国と言って憚らない、完全無欠の女王。しかし先生のことは非常に慕っており、先生の前では一人の女の子として振舞う魅力的なギャップも。

妃毬坂竜胆
凛然たる副会長。クールな見た目通りに、真面目かつ粛々と責務をこなす、生徒会不動のNo.2。風紀委員への伝手があり、荒事にも長けている。しかし実はかなりの天然。

七星アルテミシア
聡慧明達なる書記。白衣を身に着けてはいるが、低学年と見紛うような小柄な生徒。しかし、生徒会の中では一番の母親気質の持ち主。生徒会での技術担当も華麗にこなす。

琴吹緋奈乃
先生が直接担当する生徒会庶務。垢抜けない風貌とは裏腹に、華々しいプロフィールを持つ。とある理由があって人付き合いがうまく出来ない。コミュ力不安な生徒会の四人目。

先生
凰華に見いだされ、天涯学園に赴任することになった教師。担当科目は現代文だが、生徒会の顧問も担当することになる。物腰柔らかな口調と態度だが、内心はツッコミ気質。