【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はファンタジア文庫から5月20日に刊行された『あそびのかんけい』です。みなさんの感想も聞かせてください!
大好きな作家と大好きなイラストレーターがタッグを組んだら、そりゃもう大々々好きな作品になることは間違いありません。何だこの夢のような贅沢セットは!
文字だけで笑いを起こし、あらゆるキャラをイキイキと動かして「キャラが立つ」とはこういうことか、と思わせてくれる……そんな葵せきな先生によるすれ違いラブコメディの最新作が、この『あそびのかんけい』です!
率直に、前作に負けず劣らず神作と言っていいでしょう。ストーリーはもちろんキャラの掛け合いによる面白さは更にパワーアップしていて、葵せきなファンは迷わず買うべきだし、この作品から入る人は、葵せきな先生の過去作がこれから読める幸せを羨ましく思うくらいです。

本作のヒロインは、主人公が店長代理を務めるボドゲカフェでバイトをする女子高生ギャルの小鳥遊みふる。これがまた、めちゃくちゃ可愛いんですよ。タメ口の絶妙な距離感なんかはもちろん、深崎暮人先生のキャラデザが最高にハマっていて。いわゆる「オタクに優しいギャル」なんですけど、そんな枠組みに収まらない独自の魅力を持っています。
そして主人公・常盤孤太郎はそんな彼女のことが好きで好きで堪らないわけなんですが、彼女には他に好きな人がいるという嘘を吐いていて……。この拗れた設定、関係性から繰り出されるボケとツッコミが巧妙に織り交ぜられた軽快なテンポの会話劇――これがもう素晴らしいんですねぇ!! 二人の関係の行方を追いたいような、あるいはずっとその会話を聞いて(読んで)いたいような不思議な気持ちになります。
また、本作の舞台はボドゲカフェですが、その知識はほぼ必要ありません。そして、あのキャラクターを翻弄しまくるすれ違いの波は本作でも健在。それどころか時系列シャッフルまで行い、「え、前の章ではこう書いてあったのって、そういう意味だったの!?」と読者をも揺さぶってきます。つまり、神の視点としてキャラクターたちがドギマギしている様をニマァ~と眺める僕らでさえも、葵せきなの掌の上にいるのです。そして気付いた瞬間には、また最初から本を読み直していること間違いナシ。最後まで読んだ上でプロローグを読むと、「そういうことだったんかい!」と一粒で二度美味しい、読者にすらある種のすれ違いをさせている小説なのだから……! おそらく第2巻が発売された際にも、確実に読み終わったら第1巻から読み直すはず。それほど虜になってしまう、青春群像劇がここに開幕しました!

文:太田祥暉
ざっくり言うとこんな作品
1)1. 「え、そこがそう繋がるの!?」という時系列シャッフル&群像劇だからこその予想がつかない多角関係ラブコメ。葵せきな先生の『ゲーマーズ!』が好きだった人は必ず刺さる!
2)2. ヒロインたちの表情がとにかく可憐! 深崎暮人先生ならではの、リアルで棘があって鮮やかなキャラクターたちのイラストにとにかく惚れ込むこと確実!
3)3. 葵せきな先生ファンの皆様、お待たせしました。『あそびのかんけい』第1巻のあとがきも長いです。17ページあります! あんな話やこんな話が飛び出すあとがきが読めるのはここだけ!
主要キャラ紹介
常盤孤太郎(ときわ こたろう)
高校を中退し、ボドゲカフェ『クルマザ』でバイトをしている少年。店長が研修と称して出勤しないため、実質店長代理を務めている。ボドゲのことが大好きなお人好し。

小鳥遊みふる(たかなし みふる)
ボドゲ素人だったにも関わらず、ボドゲカフェ『クルマザ』で働き始めたギャル。孤太郎とは同い年。彼の対人スキルが拙いため、『クルマザ』のカフェ部分は彼女が回している。

ウタマル
ボドゲカフェ『クルマザ』に通うようになった負けず嫌いな少女。ボドゲは『クルマザ』に訪れるまで親しくなかったが、孤太郎やみふると遊ぶことでどんどんのめり込んでいき……

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あそびのかんけい
著者: 葵せきな イラスト: 深崎暮人
誰もが秘密を抱え、あそびのかんけいを続けるラブコメ、スタート!
高校を中退し、ボードゲームカフェ『クルマザ』で店長代理として働く生粋のボドゲオタク常盤孤太郎は、恋をしていた。
ボドゲ愛の欠片もない天敵のような女子高生ギャルバイト小鳥遊みふるに。想いに気付かない当人から進展を煽られるも――
「まずはサイコロを振らなきゃ、恋は始まらないぜ」
告白はありえない。なぜなら……みふるには超絶ラブラブなイケメン彼氏がいるのだから!
さらに孤太郎が想いを隠すため、みふるに伝えた嘘の好きな人――女流棋士の歌方月乃は、正体を隠して『クルマザ』に入り浸っている常連客で!?
誰もが秘密を抱え、あそびのかんけいを続けるラブコメ開幕