【レビュー】第31回電撃小説大賞《大賞》受賞作は、物理を支配する『現象妖精』という発想と、それを巧みに描いたハイスピードバトル!

妖精の物理学 ―PHysics PHenomenon PHantom―

【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は5月10日に刊行される『妖精の物理学 ―PHysics PHenomenon PHantom―』です。みなさんの感想も聞かせてください!


本作の魅力を象徴するのは、物理を支配する『現象妖精』という発想と、それを巧みに描いたハイスピードバトル! できることの幅が広く、ただの異能バトルと比べてひとつ上のレイヤーでやり取りをしているような面白さがありました。特に妖精同士が激突する終盤戦の駆け引きは新鮮な感触で息を吞みました。

始めのうち、カナエは巻き込まれてやむなく戦っていたのですが、最後には大切な人を助けるために(更に、かつての敵と共に!)自ら戦いへ赴く! こういうシチュエーションは激熱でしたね! 敵役の伏線は主張しすぎず、さりげなく散りばめる程度で、テンポを損なわない見事な構成でした。

物理法則に対する説明が覆っている状況ですから、書こうと思えば設定周りもいくらでも細かく描けたのではとも考えてしまいます。しかし、その辺りの掘り下げがサッパリしているのが印象的でした。込み入っていたのは既存の物理に反した情景描写ぐらいで、全体的にスピーディな展開が保たれていました。このスピード感にはハイテンションな日常会話も一役買っていたように感じます。キレのあるノリツッコミの応酬は、それだけで一読の価値ありです!読む人によって色々なところを面白がれるだろう、希有なバランスで成り立った、類を見ないタイトルです。

『妖精の物理学』より

これだけの相当な内容を凝縮したうえで400ページ越えの大ボリュームとなっているのが凄まじいです。浴びるような怒濤の読書体験を、ぜひ。

文:中谷公彦

ざっくり言うとこんな作品

・特定の物理現象を司る、身長30センチの少女たち――『現象妖精』によって大きく変わった世界!

・カナエが出会ったのは、なぜか人間と同じサイズの『現象妖精』。何者かに追われている彼女を救うことを決意する!

・物理現象を操る『現象妖精』の戦いは大迫力! 圧倒的スケールの戦いに刮目せよ!

主要キャラ紹介

カナエ

カナエ
何の補助もなく妖精と会話が行える青年。平凡な学生だが、現象妖精たちの助けを求める声に応えて、レヴィを救い、エルウェシィとも関わっていくこととなる。

レヴィ

レヴィ
カナエを慕いメイドとして振る舞う、頑張り屋な現象妖精。共通して甘いもの好きな現象妖精の中でも、食べ物への拘りが強い。固有の能力を持たないことを気にしている。

エルウェシィ

エルウェシィ
ゆきと名乗る現象妖精。人よりずっと小さな他の現象妖精と違い人間同様の大きさで、見目麗しい銀髪の美少女。巨大な力を秘め、刺客に追われるなど謎の多い存在。

かさね
改造したセーラー服に黒髪ストレート、水色メガネという個性的な風貌の少女。 相棒の男タツミと共にエルウェシィの捕獲任務に準じているが、本当はエルウェシィの命を付け狙っている。

作品情報
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    妖精の物理学 ―PHysics PHenomenon PHantom―

    著者: 電磁幽体   イラスト: necomi

    逆さまの街で、雪の結晶を宿す妖精に出会った。

    ――第31回電撃小説大賞《大賞》受賞作――
    「たった今、世界の法則を再定義しよう」
    2032年に提唱された前代未聞の物理学理論により、世界の在り方は大きく変わった。特定の物理現象が少女の姿で具現化した存在――『現象妖精』は、人類に多大なる恩恵と、未曽有の大災害をもたらした。
    七年前、『現象妖精災害』により一度崩壊し――復興した街・神戸。そこに暮らす少年・カナエは平穏な日々を過ごしていた――はずだった。あの日、助けを求める彼女の声を聴くまでは。
    「1500万もの人間を、この手で一度に、――殺しました」
    世界の秘密と、犯した罪。少年と妖精の逃避行が今、始まる。
    大賞受賞作家が遺した感動の大作が堂々刊行!

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