【レビュー】前世の最推しの人と"両片思い"。大好きなのに、この恋を成就させるわけにはいかない！

【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は5月1日に角川ビーンズ文庫より刊行される『ラスボス令息に殺される義姉ですが、彼を好きになってしまいました。』です。みなさんの感想も聞かせてください！

お互いに好意を抱いているにもかかわらず、すんなりとは結ばれない。そんなじれじれな恋模様を楽しめる“両片思い”は、個人的に大好きなジャンルです。フィオナにとって、クロヴィスは前世からの最愛キャラクターなので、告白されるのは本来であればとても嬉しいはず。けれども愛する人の命を救えるのは自分ではないという事実が、二人の恋の障害として立ちはだかります。

物語はフィオナ視点とクロヴィス視点を織り交ぜながら進み、それぞれの相手への想いや葛藤が丁寧に掘り下げられているのが特徴です。家族として慕う気持ちが恋へと変わる瞬間や、深まりゆく想い、クロヴィスの熱烈な執着や、好きだからこそ恋心を押し込めて身を引こうとするフィオナの姿など、苦しくも切ない描写がたまりせん。

とはいえ作風はシリアス一辺倒ではなく、作中にはコミカルな描写も登場し、思わずくすりと笑ってしまう瞬間もありました。また二人のデートの場面はなんとも甘くてくすぐったく、きゅんとさせられます。個人的に一番心を惹かれたのが、「追いかけっこ」をしていた二人が一緒に見た朝日の場面。この時のクロヴィスの美しい言葉は、どんな愛のセリフよりも深く心に突き刺さりました。

身の内に膨大な魔力を秘めた半魔クロヴィスの、重すぎる愛も本作の注目ポイントです。半魔を排斥しようとする一団や、魔人に対する人々の偏見と闘いながら、大切な人を守ろうとするクロヴィス。どこまでも一途な彼の想いを、ぜひ見届けてください。

文：嵯峨景子

ざっくり言うとこんな作品

・大好きなのに、この恋を成就させるわけにはいかない！　愛する義弟を助けようと藻掻くほど追い詰められていく、切ない恋物語！

・義弟の執着愛を諦めさせる唯一の方法は――「追いかけっこ」!?　必死すぎる逃亡劇にハラハラドキドキが止まらない！

・どんなにヒロインが逃げても拒否しても、この義弟の愛は止められない！　限界突破の執着愛にドキドキ必至！

主要キャラ紹介

フィオナ・アングラード
乙女ゲーム『トワイライトエンド』の脇役令嬢。ラスボス化する義弟・クロヴィスの闇落ちを阻止しようと奮闘するが、ヒロインと恋をしなければ助からない彼に恋心を抱いて苦悩する。

クロヴィス・アングラード
魔人の血をひく母と国王の間に生まれた庶子。スラム育ちで半魔ゆえに周囲から虐げられている。養子になったアングラード公爵家で出会った義姉・フィオナに想いを寄せ、強い執着をみせる。

アレックス・バスティアン
第二王子でクロヴィスの腹違いの兄。ゲームのメイン攻略対象。俺様なプレイボーイで女性をよく口説いている。フィオナを気に入り、婚約者になれとたびたび迫るが……。

ヴィオラ・マティス
ゲームのヒロインで魔力を中和する癒しの力をもつ。クロヴィスのラスボス化を阻止するルートでは、癒しの力で彼の暴走を止めて救う。クロヴィスが好きでアタック中。