【レビュー】執着心あふれるヒーローとの甘やかで少し毒のあるロマンスをご堪能あれ！

【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は3月28日刊行の『精霊に「お前は主人にふさわしくない、契約破棄してくれ！」と言われたので、欲しがっている妹に譲ります』です。みなさんの感想も聞かせてください！

タイパやコスパが謳われる世の中だからこそ、泥臭い努力ができる人を心の底から尊敬しています。ミスティアは精霊語の勉強にひたむきに打ち込む努力家で、他人を思いやる優しさももちあわせている、魅力的なヒロインです。であるにもかかわらず、感情表現が少し苦手なばかりに誤解をされがちで、精霊たちから契約を破棄されてしまいます。

なんて見る目がないのだろう……と呆れながら物語を読み進めましたが、精霊側も決して一枚岩ではない状況が明らかになっていきます。真っ先にアリーシャに乗り換えたシャイターンのような救いようのない馬鹿もいる一方で、水の精霊・アリエルのようにミスティアへの愛憎をこじらせているタイプや、風の精霊・シシャのようにどこか超然として思惑が読めない者もいる。それぞれが抱える事情や思いがあるからこそ、裏切り者たちに下される最終的な裁きがより重みをもって心に刺さりました。

本作で何よりも印象的なのは、どん底から這い上がって自らの手で幸せを掴み取るミスティアの鮮やかな逆転劇です。スキアとの契約をきっかけにミスティアは奮起し、自分を大切にすることも覚えていきます。行動を通じて悪評を払拭し、周囲の信頼を勝ち取っていくミスティアのまぶしい姿はまさに圧巻！　当初はスキアに守られていたミスティアが、彼を救おうと大胆な行動を起こすラストシーンには要注目です。

愛が重めで過保護すぎるスキアと、彼が放つストレートな愛の言葉の数々もときめきポイントとして見逃せません。執着心あふれる精霊との甘やかで少し毒のあるロマンスに酔いしれてください。

文：嵯峨景子

ざっくり言うとこんな作品

１）【ざまあ展開】
（婚約者との）婚約破棄ならぬ（精霊との）契約破棄から始まる逆転劇。主人公を虐げた叔父家族と彼女を見捨てた精霊へのざまあ展開が痛快！

２）【最強】
見下されている主人公が実はとんでもない才能を秘めていた。精霊語を読み解く能力をもつミスティアの才能の開花と活躍から目が離せない。

３）【溺愛】
ヒーローのスキアはヤンデレ気質で主人公への執着心が強め。ミスティアに対する激甘な態度と他の人にみせる冷酷な顔のギャップにときめく。

主要キャラ紹介

▼ミスティア
両親を事故で亡くし、叔父に家を乗っ取られた薄幸の貴族令嬢。没落した家を救うために３人の精霊を召喚して契約した。努力家で精霊たちを愛しているが思いは伝わらず裏切られてしまう。

▼スキア
５年前にミスティアに召喚された精霊。とある事情から姿は現さずに陰から見守ってきた。外見は聖騎士然としているがミスティアだけを溺愛し、彼女に害をなす者に対しては容赦しない。

▼アリーシャ
ミスティアの義妹で金髪碧眼の美少女。やりたくないことをミスティアに押しつける自分勝手な性格だが外面はよい。膨大な魔力の持ち主でミスティアが召喚した３人の精霊を奪った。

▼シャイターン
ミスティアが初めて契約した炎の精霊。燃えるような赤髪と同じ色の瞳をした美しい青年の姿をとる。上位精霊で何よりも強さを望んでおり、アリーシャへの乗り換えを提案する。