【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はドラゴンノベルスから3月5日に刊行された『悪役令嬢、宇宙を駆ける 二度目の人生では宇宙艦隊を率いて星間戦争を勝利に導きます』です。みなさんの感想も聞かせてください!
死に戻りの能力を持つ悪役令嬢キャラは数いれど、それが戦艦で宇宙を駆ける女提督というのは珍しいかもしれません。ニッチながら面白いところを突いた作品と言えるでしょう。これは大きな罪の意識を抱えながらも、戦艦を愛し、宇宙を巡り続ける女性の物語です。
年齢を重ねると、子どもの頃には理解できなかったことがわかるようになりますよね。死に戻ったリリアンの最大の強みは、年月に裏打ちされた大人の見識でしょう。死に戻り後のリリアンは、かつての自分がいかに何も見えていなかったかを痛感します。一方的に見下していたステラの才能や、他の生徒の優秀さ。家柄にあぐらをかき、努力を怠る自分が軽蔑されていたこと。成長してから過去の自分の未熟さに気づき、気恥ずかしさや自己嫌悪に襲われるリリアンの心情描写はリアリティがあって共感できます。私自身も覚えがありますが、それは決して気持ちの良いものではありません。ましてリリアンは未熟さ故に人の命を巻き込む失敗をしたのです。その苦痛は計り知れず、読んでいて胸が痛みました。
しかし、後悔や反省はしても負の感情に振り回されないのが大人の強さ。リリアンは罪悪感を脇に置き、仲間たちの強みを冷静に見極め、協力を仰ぎながら窮地を乗り越えていきます。次々と起こる問題に仲間たちが力を尽くすことで、それぞれの魅力が引き立ち、一つ山を越えるごとに読者も達成感を味わえます。読んでいて思わず胸が熱くなること間違いなし。そして、中でも彼らを信じ「自分は何をすべきか」を考え続けるリリアンの姿が一層カッコよく映るのです。
どんな人であっても、過去の失敗をなかったことにはできません。それによって非難され、辛い思いをすることもあるでしょう。それでも苦い経験を生かして試行錯誤し、前向きに生きていこうとすることが、カッコいい大人への第一歩なのかなと思いました。物語の面白さと同時に、苦悩しながら前に進むリリアンに自分を重ねながら応援したくなる一冊です。

文:安芸 沙織理
ざっくり言うとこんな作品
1)異星人との戦争で、自らの杜撰な指揮により人類敗北のきっかけを作ったリリアンが死に戻り、未来を変えるため奮闘する。年齢を重ねたからこそ冷静な彼女のかっこよさ。
2)リリアンたち学生だけを載せた宇宙船のワープ事故により、人類は初めて、後に敵となる異星人に遭遇した。リリアンたちは未知の存在を退け、無事に地球へ生還できるのか。
3)死に戻り前はいがみ合っていたリリアンとステラが友人として絆を深め、二人で作戦を立てて窮地を乗り越える爽快感。臨場感溢れる宇宙戦艦ならではの戦闘や駆け引きが熱い!
主要キャラ紹介
リリアン・ルゾール
地球帝国の元提督。自らの指揮で地球帝国軍が壊滅し、数十年間閑職に甘んじて戦死する。18歳の少女に死に戻り、未来の知識と艦隊指揮能力を活用して人類の勝利を目指す。

ステラ・ドリアード
未来で天才総司令官となる少女。元は戦艦の整備をしていたが天才的な戦術眼を持つ。普段は割と抜けている。かつては険悪な仲だったが、死に戻り後はリリアンと絆を深める。

ヴェルトール・ガンデマン
かつてのリリアンの初恋の人。若き帝国の獅子と呼ばれるエリート士官候補生の一人。ステラの戦術眼を評価し、彼女を憎からず思っている。仲間たちの頼れるリーダー。

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悪役令嬢、宇宙を駆ける 二度目の人生では宇宙艦隊を率いて星間戦争を勝利に導きます
著者: 甘味亭 太丸 イラスト: ヨシモト
人類敗北を招いた艦隊提督が死に戻り――最強の提督令嬢誕生!
「異星人に勝つ? 地球へ生還する? 全部、やってやろうじゃない!」
異星人との戦争に敗北した宇宙艦隊提督のリリアンは、十八歳の少女に戻っていた。
前回は己の失態により負けた。次は勝って凄惨な未来を変える――!!
そんな彼女の目前に迫るのは、士官学校の演習中に起こる宇宙戦艦の漂流と、異星人からの襲撃(ファーストコンタクト)。
リリアンは培った戦術眼と未来の知識で実戦経験のない生徒をまとめ上げ、たった一隻の戦艦で異星人艦隊に立ち向かう。
後に奇跡と呼ばれる活躍は、人類存続の未来へと繋がっていく――。
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