【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はファンタジア文庫から2月20日に刊行された『じゃれついてくる年下な女の子たち、俺への好きがバレバレ。』 (著者:陸奥こはる/イラスト:セイル)です。みなさんの感想も聞かせてください!
タイトルからはイチャイチャのハーレムものが想起されるのだが、意外にも登場人物ひとりひとりに実はビターな設定が敷かれているところが本作の一味違う部分だと思った。登場人物一人一人の「言えないこと」がドラマを生み出し、事態をときに予想外の方向に進めていく。そんな印象の第一巻だった。
もちろんラブコメとして、ヒロインに振り回される日々の甘酸っぱさに思わずニヤけそうになる部分も多いのだが、キャラクターにきちんとバックボーンが描かれていることで、それぞれが作品の中で“生きている”と感じられたことが、ドラマ性を感じた要因かもしれない。
主人公である佐古代吉は上流階級の子女が通う学園の高等部二年生。訳あって年下の美少女二人を見守っているものの、妙に達観した人生観を持っており恋愛には踏み込もうとしないキャラクターだ。そんな大人びた主人公に対して、心の中で信頼感があるからこそちょっかいをかけるようにからかってくる二人のヒロインが特に可愛らしい。
一学年下の後輩である桜咲は、年上であるはずの代吉を「赤ちゃん」扱いしてきたりちょっと生意気なところはあるけれど好意が全然隠せてないし、代吉のいとこで中等部の生徒である椿も椿で、苗字の佐古をもじってザコよばわりしてくるなどウザ絡みをする一方で、それはお兄ちゃんに構って欲しいと甘える気持ちの表れだったりと、とにかくタイトル通り好きがバレバレなわけで。
そんな風に日常の延長線上で展開される青春ラブコメは、やがてヒロイン二人の好意のエスカレートと共に、徐々に「言えないこと」と混ざりあって物語として深まっていく。代吉とヒロインたちとの個別の関係だけでなく、桜咲と幸子、桜咲と椿など、ヒロイン同士のやり取りもこれからさらに増えてきそうで、関係性の織り成す人間模様も楽しみにしたい。

文:髙橋義和
ざっくり言うとこんな作品
1)全員年下のヒロインたちが、主人公をからかうようにじゃれついてくる物語。構ってオーラ全開の甘いウザ絡みに色んな意味で耐えられるか……!?
2)普段周りに見せているしっかり者の顔と、主人公にだけ見せる年相応に構ってちゃんな顔とで全然印象が違うヒロインたち。そのギャップに思わずメロメロ!?
3)ただ甘いだけじゃない、作り込まれた人間模様が織りなすシリアスな展開でもグッと読者を惹き込む、意外性のある読み心地。
主要キャラ紹介
佐古 代吉(さこ だいきち)
高等部二年。旧華族の家柄だが、数年前に両親が事故死。後見人の家庭でしばらく暮らした後、現在は一人暮らし。両親が事故直前に気にしていた桜咲を見守っている。

花曇 桜咲(はなぐも さき)
高等部一年。成績優秀な特待生。代吉が自分の様子を見ていることに前から気づいていて、彼を異性として意識しつつも、彼のことを時に「赤(エケ)ちゃん」呼ばわりする。

山茶花 椿(さざんか つばき)
中等部三年。代吉の従妹(代吉の伯父が老舗商家の山茶花家に婿入りした)。昔は代吉によく懐き甘えていたが、今では「ざこ」「きー君」などと呼んでおちょくってくる。

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じゃれついてくる年下な女の子たち、俺への好きがバレバレ。
著者: 陸奥 こはる イラスト: セイル
見守っていたいだけなのに…どうして俺にだけ生意気なんだ!?
1つ下の学年で、校内有数の美少女・花曇桜咲。
2つ下の従妹で、『可愛い』と評判の山茶花椿。
幼い頃の記憶から、彼女たちをただ見守りたいだけの俺は、積極的に2人と関わろうとはしなかったのだが……。
なぜか空き時間のたびに、俺にちょっかいをかけにやってくるように……!
そして――「代ちゃん先輩、私の傍から離れちゃダメだよ~?」と頬を赤く染めて体を寄せてくる桜咲に、膝枕をして「きー君、うちの太ももの感触はどうでしたかねぇ?」とからかってくる椿。
素直になれない2人のアプローチは、次第にエスカレートしていって……!?
(いや、お前ら俺のこと好きすぎるだろ……)