【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はファミ通文庫から2月28日に刊行される『カタブツ女領主が冷血令嬢を押し付けられたのに、才能を開花させ幸せになる話』(著者:藤之恵/イラスト:毒田ペパ子)です。みなさんの感想も聞かせてください!
悪役令嬢は、いまやファンタジーの一大ジャンルですよね。王子様の婚約者でありながら、理不尽な冤罪をかけられ、「婚約破棄だ!」と一方的に突き放されてしまう。しかし、誹謗中傷に晒されても黙って泣き寝入りなんてしない。むしろ婚約破棄をチャンスに自分の人生を切り拓いていく──それこそ誇り高き悪役令嬢ってもんです。
田舎貴族のライラが出会ったアシュタルテも悪役令嬢。貧しい領地を切り盛りするライラを襲うトラブルを知識と力技で解決していく完全無欠のアシュタルテ無双が痛快です。驚異的な知識量と迅速な書類仕事に圧倒されるだけでなく、モンスターと戦える戦闘力まで兼ね備えて、いったいどんな淑女教育を受けてきたのかと驚かされる。これぐらいは悪役令嬢の嗜みですか。さすがアシュタルテさま!

これはただの悪役令嬢ファンタジーではないですね。本格的なビジネスドラマですよ。技術はあるものの経営に疎い町工場の女社長が、冷徹ながらも有能な敏腕コンサルタントの力を借り巨大企業に立ち向かう──そんな構図を彷彿とさせます。領地の経営だけでも大変なのに、さらなる厄介事を持ち込んでくる二人の婚約者たち。思い込みが激しく頭の固い上司だったり、現場に口を出しては混乱を招く二代目社長のような人物。職場にいますよね、こういう厄介な人たち……! しかし、そんな彼らにイラつきつつも、仕事で確かな成果を出して見返すのが、これまた一興。
アシュタルテは冷徹な言動から冷血令嬢と囁かれることが多いものの、意外なほどの優しさと思いやりが垣間見えるんです。ライラもまた数々の困難を乗り越える中で世間の厳しさを知って領主として強く成長していく。ただアシュタルテに頼っているだけじゃない、二人の関係性もまた魅力の一つ。単なる「女友達」ではなく、共に戦う戦友であり、共に働く同僚である対等な関係が、とても清々しいです。悪役令嬢が活躍する作品は数多くありますが、ここまで痛快かつ本格的なビジネスファンタジーは珍しい。仕事に奮闘するすべての人におすすめしたい一作です。
文:愛咲優詩
ざっくり言うとこんな作品
1)主人公ライラックの「開発」スキル×主人公2アシュタルテさまの「知識」をあわせて困難に立ち向かっていく、わかりやすい下剋上ストーリー。
2)無理難題を押し付けてくる元婚約者の鼻を明かす痛快なざまあ展開。
3)百合大好き作者による、シスターフッドであり微百合なので、主人公二人の絶妙にもどかしい距離感。
主要キャラ紹介
ライラック
領民思いの田舎貴族の娘。亡き父に代わって領主の代行をしている。アイテムを設計する「設計」のスキル、素材の鑑定をする「分析」のスキルを持つ。

アシュタルテ
第二王子の婚約者として王妃教育を身に着けた公爵家令嬢。第二王子毒殺の容疑で婚約破棄される。冷血令嬢といわれるが本当は心優しく気高い少女。

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カタブツ女領主が冷血令嬢を押し付けられたのに、才能を開花させ幸せになる話
著者: 藤之 恵 イラスト: 毒田ペパ子
不遇な女領主のスキル「開発」が、冷血令嬢の手によって開花する!
亡くなった父に代わり領主代理となるため、王に挨拶することになったライラック。領主代理はすんなり了承されたものの、代わりに王子暗殺疑惑をかけられた冷血令嬢アシュタルテを領地で預かることになってしまう! 女神のような美貌、恐るべき魔法能力を有した冷血令嬢が、北の田舎町で暮らすのは無理なのでは!? とライラックの心配をよそに、アシュタルテは町の人々とも交流し、楽しそうに羽を伸ばしていた。そしてライラックのスキル「開発」で作った機織り機に興味を示してきた。そんな折、隣町から機織り機に対して特許侵害の訴状が届く。その内容に頭を悩ませるライラックに、アシュタルテがとある提案をしてきて――。不遇な女領主のスキル「開発」が、冷血令嬢の手によって開花する。淑女たちによる辺境復興ストーリー!