【レビュー】遊び半分で奴隷を救ってホワイト待遇してただけなんですが……？　忠誠心が暴走しまくるハーレムファンタジー爆誕!?

【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はファンタジア文庫から2月20日に刊行された『転生したら奴隷使役と回復のスキルを持っていたので遊び半分で奴隷だけの秘密結社を作ってみた』 （著者：Crosis/イラスト：あゆま紗由）です。みなさんの感想も聞かせてください！

　え、「奴隷」って聞いてたんだけど、いまどきはこんなホワイトな職場なの……!?
　と思わず驚いてしまう本作。主人公と奴隷たちの関係性が明るく爽やかな印象で、読んでいて気持ちが良かった。ほのぼの、心温まるとか、そういうのとはまた違うベクトルなのだけど。

　それはさておき、命の危険すらあった悲惨な境遇から救ってくれて、おまけに自身の能力や適性にあわせた仕事の割り振りをしてくれる雇い主がいたら、それはやっぱり忠義を尽くしちゃうかも。そしてそれは、主人公ローレンスが集めた奴隷たちも同じこと。
　フレイムはドラゴノイドとしての戦闘力を活かし冒険で稼ぎまくるし、マリアンヌやキース、フランもそれぞれのスキルが求められていたからこそ、目をかけられ身の回りのお世話だとか食品づくりのお手伝いを命じられる。ローレンスとしては「楽して生きたい」という願望に沿って十分貢献してくれていると思っている一方で、奴隷である当人たちからしたら、どうしてもっとこき使わないのかといった疑問が先に立つみたい。まぁ命を救われたらそれくらいの恩義は覚えて当然……なのかな？　この辺のすれ違いも本作の面白いポイントだ。

　しかし、だからといって、ローレンスに黙って奴隷たちが勝手に世直しを始めてしまう展開は斜め上で、思わず笑ってしまった。秘密結社を作って裏組織を潰して回って気がついた時には触っちゃいけないところに踏み込んでしまって……って、やりすぎやりすぎ！
　知らず知らずそれだけのことが出来るほどの人材を集めてしまっていたローレンスの目利きぶりには恐れ入るけれど、このままでは平穏な暮らしどころか首謀者として命を狙われかねない。どうするローレンス？　主人の思いを勘違いした奴隷たちによる忠誠心ゆえの暴走ぶりにひとしきり笑った後で浮かび上がった深刻な事態のその先。ローレンスが本気で世直しに向かうのか、そのためにどんなスキルの奴隷を求めるのか――笑いとハラハラが共存した一作。今後の展開に今から興味津々だ。

文：タニグチリウイチ

ざっくり言うとこんな作品

１）転生した世界で無能扱いされている【奴隷使役】と【回復】のスキルで楽に生きようとするローレンスが選ぶ奴隷たちが個性豊かでみんな可愛い！

２）ローレンスのホワイトすぎる奴隷の扱いと、それ故に奴隷のヒロインたちが彼を慕うサイクルが、微笑ましくてずっと見ていられる関係性で◎。

３）親の心子知らずとばかりに勝手に秘密結社を作り、勝手に裏組織の殲滅に乗り出して達成してしまう奴隷たちの忠心と強さに思わずニッコリ!?

主要キャラ紹介

ローレンス
ストレス発散で酒を飲み過ぎて死に異世界の貴族に転生。【奴隷使役】のスキルで有能な奴隷を集めて今度こそ楽に生きようと願う。

フレイム
魔蔵と呼ばれる器官を抜かれ死にかけていたドラゴノイドの少女。ローレンスの【回復】スキルで完治し強大な力を振るって冒険者たちをファンにする。

マリアンヌ
隣国の王妃だったが第二夫人に熱した油を浴びせられて売り飛ばされる。ローレンスが【回復】スキルで治療し視力と美貌を取り戻す。

フラン
隣接する領地・クヴィスト家の領主の娘。じゃじゃ馬で天真爛漫な性格のお嬢様だが、目標に向かってしっかり努力する頑張り屋の一面も。