今年も「次にくるライトノベル大賞」が発表となり、『オルクセン王国史~野蛮なオークの国は、如何にして平和なエルフの国を焼き払うに至ったか~』が単行本部門で3位となりました!
そこでキミラノでは著者の樽見京一郎先生にインタビューを敢行! 「銃と魔法」の時代。平和なエルフの国を、野蛮なオークが焼き尽くす──そんな「異世界ファンタジーあるある」の常識を覆した異世界戦記はどうやってできたのか? お話を伺ってみました。

──「次にくるライトノベル大賞2024」上位入賞おめでとうございます! まずは今の感想をお聞かせください。
まだ驚きと喜びで信じられません。ひとえに関係者及び読者の皆様のおかげです。
──理知的なオークと酷薄なエルフ、対立の図式からして型破りで、しかも剣と魔法ならぬ銃と魔法の世界観、猛烈なインパクトを与えられました。この発想はいったいどのようにして生まれたのでしょうか?
核になったのはネットミームの「エルフの森を焼くオーク」「エルフの村に攻め込むオーク」でした。オークたちはなぜ焼くのか、なぜ攻めるのか。エルフたちはなぜそこに至るまで気づくことや防ぐことができなかったのか……と考えていくと出来上がった構図になります。
──銃と魔法を用いる、ミリタリーをテーマに選ばれた理由はどのようなものでしょう?
銃と魔法の世界にした理由でもありますが、もともと19世紀から20世紀初頭くらいの「近代」と文化や科学技術に惹かれるものがありまして。その時代と設定で色々と動かしたかったからですね。
──戦争を取り扱った作品のほとんどで描かれることのない「兵站」への着目と描写の細やかさと濃やかさ、本作最大の特徴であるものと思います。なぜ派手な戦闘でなく、この部分を押し出されたのでしょうか?
ささやかなものですが、企業間取引が主体の物流業を営んでおりまして。職業経験上、書けるものもあるんじゃないかなと無謀な挑戦をしてみた結果になります。 単純にモノを運ぶ部分や、目立ちやすいラストワンマイル(※)だけでなく、全体の管理や保管、仕分け、書類といった運用方法にまで言及があるのは職業経験が活かせたものと自負しています。
※顧客にモノ・サービスが到達する最後の接点
──銃と魔法ですと、素人考えではどちらも遠隔攻撃手段に思えるのですが、本作におけるそれぞれの特徴はどのように分けられているのでしょう?
銃や火砲という圧倒的な威力の存在を使う以上、魔法の能力は極力抑えるようにしました。この作品内ですと直接攻撃の手段としては使えないように。通信や探知、治療といった、サポート的な存在ですね。
──先生がオルクセン王国陸軍の兵士として参加されるなら、配属希望はどこに出されますか?
とても難しい質問ですね(笑)。彼らより能力の劣る私が役に立てるとしたら、職業経験も活かせる分野くらいだと思います。
──先生は戦争系シミュレーションゲームもプレイしていますか? もしプレイされておられましたら、基本的な戦略と戦場における戦術をお教えください。
若いころは「シヴィライゼーションシリーズ」や「コサックスシリーズ」などに熱中していた のですが。すっかり割ける時間と体力がなくなってしまいまして。ちかごろはまるで追えていません、申し訳ないです。
──多種多用な種族が暮らしているオルクセン王国、その有り様や発展の歴史も実に作り込まれたものになっていますが、記されていないところまで含めまして、どれほどの設定が存在しているのでしょう?
あれでもかなりバッサリ割愛していまして。おそらく本編と同じくらいの長さで設定が書けます(笑 )。本編中に触りだけ言及のある「神話伝承時代」や「前王時代」に何があったのか、周辺国だけでなく東洋に相当する地域の文化や社会なども、いずれ外伝や別作品のようなかたちで書けるといいのですが。
──日本からの転生者であるグスタフはオークらしからぬ個性を持っていますが、彼は元々どのような人物だったのでしょう? 差し障りない程度にお教えください。
もともとは経済統計について研究調査する、公益団体の職員でした。ただし何かの専門家や研究者であったわけではなく、一般職員。歴史や農業の知識も趣味で齧った程度。性格は劇中のように誠実であったのは間違いありません。だからこそ転生後の世界で苦労に苦労を重ねた……そんな存在ですね。
──グスタフの天候操作魔法の文言、元になっているものはあるのでしょうか?
これはオリジナルで練りました。彼が日本のどの地方の出身者であるのか、わからないようにしようと思いまして。
──先生が食べてみたいオルクセン料理はありますでしょうか? また、その際はどれほどの量を食べられそうでしょう? さすがにオークほどは無理ですよね?
若いころと比べると、もうすっかり食べられる量も減ってしまいましたからね(笑)。食べてみたいのは、オルクセン名物の焼きドングリです。
──本編とコミカライズ、両者の続刊を心待ちにしておられる読者の方々にメッセージをお願いいたします。
このように過分なご評価をいただけましたのも、ひとえに皆様のおかげです。今後とも皆様とともにオルクセン世界を盛り上げてまいりたいと思っておりますので、何卒よろしくお願いいたします。
──ありがとうございました!
取材・執筆:マイストリート
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次にくるライトノベル大賞とは
「次にくるライトノベル大賞」は、次世代にブレイクするであろうライトノベルを一般読者自らがエントリーし、またユーザーの投票でその頂点を決めるアワードです。
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オルクセン王国史~野蛮なオークの国は、如何にして平和なエルフの国を焼き払うに至ったか~1 (一二三書房)
樽見京一郎 (著), THORES柴本 (イラスト)
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オルクセン王国史~野蛮なオークの国は、如何にして平和なエルフの国を焼き払うに至ったか~2 (一二三書房)
樽見京一郎 (著), THORES柴本 (イラスト)
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オルクセン王国史~野蛮なオークの国は、如何にして平和なエルフの国を焼き払うに至ったか~3 (一二三書房)
樽見京一郎 (著), THORES柴本 (イラスト)
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オルクセン王国史~野蛮なオークの国は、如何にして平和なエルフの国を焼き払うに至ったか~4 (一二三書房)
樽見京一郎 (著), THORES柴本 (イラスト)