【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は1月31日に刊行される『聖王猊下は無能王女に殺されたい』です。みなさんの感想も聞かせてください!
もし、家族や部下からも無能と思われるような事態が発生したらどう思うだろうか。しかも、その無能と呼ばれる所以が先天性のもので、あがいたとしてももうどうにもならないのだとしたら……。おそらく心が折れてしまう人が大半のはず。しかも、そんな状況で家族に戦争の前線に連れて行かれ、敵の大将格と相対することになってしまったら。絶望に次ぐ絶望となるのは必至だ。
しかし、本作『聖王猊下は無能王女に殺されたい』ではそうならない。そもそもタイトルを読んだとき、殺されたい、ってどういうシチュエーションなんだろうと感じたが、本作で展開されるストーリーはまさしくこのタイトルのままであった。無能とされて戦地に送られた王女に、最強のはずの聖王が殺してほしいと半ば一目惚れで告げる。そこから始まるラブストーリーだ。

にしても、そこからの驚天動地なロマンスっぷりといったら! これまで自分に対して卑下した目線しか感じてこなかったからこそ、自分に興味を持ってくれた敵国の聖王に興味を抱きはじめる展開。そして、聖王が殺してほしいと願った理由。その二つが明かされる頃にはもう感涙せずにはいられない! 特に主人公は実は最強だったとか、そういう展開もなく、純粋に心にフォーカスしていくストーリーがとても心に刺さる一冊だ。
……いや、いくらラブロマンスができるとしても、この世界にエレクトラの境遇で過ごすことは御免被りたいですが……。こういうのは物語だから尊くて、胸がキュンキュンするんです!
文:太田祥暉
ざっくり言うとこんな作品
・魔力を持たないが故に実の親からも蔑まれている王女が、世界最高の魔力を持つ孤高の聖王から愛されるラブストーリーに胸キュン!
・戦場で始まる、敵とのドラマチックな恋。何故自分を殺してほしいと無能な王女に頼むのか? その恋の行方が鮮やかで惹かれる!
・シリアスな物語だけではなく、徐々に心を開いていくエレクトラの口調や、信頼している騎士との軽快なやり取りが面白い!
主要キャラ紹介

エレクトラ(左)
ミトス王国第一王女。魔力を持たないため、家族からも臣下からも『無能』と蔑まれている
サイリュス(右)
ガラテア帝国第一皇子。強い魔力を持ち、神に最も近い存在と崇拝される『聖王』の称号を持つ

オニキス
エレクトラの守護騎士。エレクトラに心から仕える凛々しくたくましい女性騎士

ユリウス
エレクトラの従兄。ミトス王国の聖騎士団長も務める筆頭貴公子で、次期女王の婿候補
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聖王猊下は無能王女に殺されたい
著者: 一石月下 イラスト: 鈴ノ助
蔑まれ、殺されるはずだった王女が戦場で出会ったのは――運命の恋でした。
魔力を持たず『無能』と蔑まれる王女エレクトラ。厄介払いで送り込まれた戦場で、帝国軍を率いる聖王サイリュスと出会う。
「遺物」と嘲笑される愛剣で斬りかかると――どんな魔力攻撃も通じない彼になぜか傷を負わせることができた。
サイリュスはそれを喜び、エレクトラを帝国に連れ帰ってしまう。
そして「存分に愛して、それから――殺してほしい」と懇願してきて!?
殺されるはずだった王女と殺されたい聖王、運命の恋物語。