【レビュー】作者の代表作になりそうな予感……最近のラノベについていけない人に刺さる可能性あり

『若返った俺が、二度目の高校生活でやりたいこと』

【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はMF文庫Jから1月24日に刊行される『若返った俺が、二度目の高校生活でやりたいこと』です。みなさんの感想も聞かせてください!


正直、序盤の数十ページは困惑した。南樹と綾香の関係がかなり特殊で、南樹の境遇がまたさらに特殊。特殊が二つ重なって、しかもそれらについて軽く流されたり省略されたりする部分が多々あるのだ。南樹自身の性格も、妙に有能だったり、それでいて理想主義的で不器用なせいで無双などできずしくじったり、微妙につかみどころがない。もやのかかった世界を歩かされるような居心地の悪さがある。

だが、70ページで綾香が動き出してから、流れが変わる。ああ、これをやりたかったのかと腑に落ちる。綾香の観察力や機械工作の腕前、南樹の資金力や世間知やコネ、すべてはこのコンビがこういう活動を始めるのにうってつけだ。

そして今回の山場となる、がーねっととの一種の対決に入るわけだが、「安直な常識の押しつけ」にならないよう作者が気を配って書いているのがわかる。自分への表面的なイメージを嫌う綾香が、自身もまた表面的なイメージに基づいてがーねっとを毛嫌いしてしまう構図の絶妙な皮肉。そこを南樹が取りなしつつ、二段構えの説得になることで、南樹と綾香、それぞれの良さが引き立っている。

さらに驚かされたのは、ラストの流れ。だいたい予想がついたつもりでいたら、あれよあれよと様々なことが明かされていく。二巻以降への導入にもなっていて、今後が俄然楽しみになった。

作者のデビュー作『あまのじゃくな氷室さん』に次ぐ代表作になりそうな予感がある。「最近のラノベには少しついていけないな、こういうタイトルはちょっと敬遠しようかな……」と考えてしまう人たちにこそ、むしろ刺さる可能性がありそうに思うので、よかったらぜひ読んで欲しい。

文:髙橋義和

ざっくり言うとこんな作品

1)図らず獲得した二度目の高校生活。だが世代のギャップはあるし見たくない裏の顔も見えてしまうし、キラキラした青春は遠い。

2)救われたから、自分と同じような人を救いたい。綾香の意志が南樹を動かし、不思議なコンビの奇妙な活動が幕を開ける!

3)少女が夜の世界に見つけた喜びと目標。でもそれは昼の生活と両立しうる。気づいた矢先に暴力が牙をむくが……。

主要キャラ紹介

篠原綾香&風間南樹

▼風間南樹(かざま みなき)/右
本来は29歳の「本条大和(ほんじょう やまと)」だが、瀕死の重傷を負った際に違法な治療を受け、副作用で17歳ほどに若返った。戸籍を偽造し高校生になり、青春をやり直したいと思っている。

▼篠原綾香(しのはら あやか)/左
クラスの女王的存在のギャル。南樹を見下していたが、毒親の借金のせいで売られそうになった際、彼に助けられて、彼の「妹」となり、現在は同居中。機械工作などが得意。

▼がーねっと
地元のヤクザ「狂武会」の幹部が仕切るキャバクラ「ジュエリーボックス」で働く美少女。実は南樹らと同じ高校に通っている高校生。

作品情報
    • 試し読み
    • BookWalkerで購入する

    若返った俺が、二度目の高校生活でやりたいこと 何故か妹になったクラスの女ボス付き

    著者: 広ノ祥人   イラスト: さなだケイスイ

    見た目は高校生、中身は――? 若返りやり直し青春ラブコメ、開幕!

    後悔と妥協ばかりの人生を歩んで大人になった本条大和は、ひょんなことから体が若返ることとなり、風間南樹という名前で再び高校生活を送っていた。思い描いていた輝かしい青春を送り直すことはできなかったものの、とある事情からクラスの女ボスとも言える女王ポジションの篠原綾香と同居するという、普通の男子高校生とはひと味違った毎日を過ごす。
    そんなある日南樹と綾香は、同じ学校内に年齢をごまかしてキャバクラ勤めをしている女子生徒がいるらしいことを知る。二人はその少女が悩みを抱えているのではと思い、彼女を救うべく行動を起こすが……?

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