【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はスニーカー文庫から1月31日に刊行される『あやかしアラモード』(原作:安田現象/著者:北國ばらっど/カバーイラスト:安田現象/口絵イラスト:にゅむ)です。みなさんの感想も聞かせてください!
画面の向こう側。お天気雨の下、鳥居の連なる参道をキツネ耳の少女が歩いてくる。その道中、幼い女の子と出会い、キツネ少女が着ていた和服が突然ウェディングドレスに変化する。戸惑う花嫁に、幼女は一輪の花をそっと渡す──。人気アニメ作家の安田現象さんが動画投稿サイトで公開している自作ショートアニメの一幕である。
そのショートアニメの世界観を小説化した『あやかしアラモード』。本作は、人間の少女と現代社会の片隅に棲まう"あやかし"との交流を描いた、ちょっと不思議な怪奇譚である。片田舎の神社に捨てられた少女ヨシノが、巫女のマミコから深い愛情を受け、自由気ままなキツネの神様ウカや、街の"あやかし"と触れ合う姿が、どこか懐かしさと、愛おしさを呼び起こしてくれる。

ヨシノの日常に当たり前のように溶け込んでいる"あやかし"は、妖怪や天狗、呪いの人形、魔女、忍者、幽霊と、見た目も中身も性格も一癖も二癖もある個性的なキャラクターばかりだ。妖怪や幽霊とは思えないほど活き活きと行動し、どこか愛嬌があり、独特な存在感が読者を引きつける。そんな彼らが毎度巻きこすドタバタな騒動は、下らなくありながらも温かく、思わず笑ってしまうような楽しさがつまっている。
しかし、"あやかし"と人間とでは進む時間も歩む世界も違う。夢のような楽しい時間は、ヨシノの無邪気な童心とともにあっという間に過ぎ去ってしまうのだ。"あやかし"と過ごした日々の思い出を胸に刻み、友人との別れや悲しみを味わい、少しずつ大人へと成長していくヨシノの姿が切なく、読者の心を静かに締め付ける。
本作は、日常の中の非日常を愛おしく描き出している。笑いと涙、そして優しさを通して、大切な人との思い出や絆を改めて思い起こさせてくれる。原作の映像作品とも合わせ、ぜひ、多くの人にこの温かい世界を味わってほしい。
文:愛咲優詩
ざっくり言うとこんな作品
1)あやかしたちとの愉快なやり取り、垣間見える日常が愛おしい!
2)出会いと別れ、そして少女の成長に真正面から向き合った物語。
3)各種SNSで大人気の怪異ショートアニメの世界観をまとめ上げた一冊。
主要キャラ紹介

右)ヨシノ
神社に捨てられていた人間の女の子。あやかしを引き寄せる特殊な体質で、あやかしと触れ合いながら成長する。
左)マミコ
神社に仕える巫女。ウカの世話係でヨシノの母親代わり。人々に害をなす危険なあやかしを退治する。

ウカ
神社で祀られているキツネの神様。少女の姿をしているが"あやかし"のなかでも長命。長い間、人間と街を見守っている。
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あやかしアラモード
著者: 北國ばらっど カバーイラスト: 安田現象 口絵イラスト: にゅむ 原作: 安田現象
安田現象による怪異系ショートアニメ、待望のノベライズ!
この世界には、“あやかし”がいる。
そして神社に捨てられていた人間の少女・ヨシノは、そんなあやかしに見守られつつ健やかに過ごしていた。
沢山のあやかしを巻き込む家出騒動を巻き起こしたり、呪いの人形たちのケンカを仲裁したり、友達の忍者を尾行したり……。
やがて生まれた【神社の巫女になる】という目標に向かい修行を積む中で、ヨシノはあやかし友達の西洋人形・カトリーヌとの突然の別れに直面してしまい……!?
各種SNSで話題沸騰のショートアニメ待望のノベライズ化!
ちょっぴり変だけれど、強く優しいあやかしとの出会いと別れ――立派なレディに育っていく少女の、心温まる成長譚。