【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はMFブックスから1月24日に刊行される『異世界で貸倉庫屋はじめました1』です。みなさんの感想も聞かせてください!
固有スキルの「トランクルーム」はまさにチートな代物です。収納力や利便性はもちろん、快適に住める! でも、真っ先に目を奪われたのはスキルが物語を魅せる「きっかけ」となっている点でした。
高校生+1人を召喚したスフェノファ王国の目的は魔王討伐。でも国際情勢は複雑ですし、自国内に面倒な政治問題も抱えています。なので王国側は外れ能力者である(と思い込んだ)太郎を執拗に監視し、さらに数々の小細工まで仕掛けてくるわけですよ。背景設定の細やかさとそれを生かし切った嫌な展開。これがあるからこそ太郎の大逆転劇と、その先の"ざまぁ"が最高に気持ちいいのですよねぇ。
そして、読み進めていくほどキャラクター力の高さに気づかされます。太郎が関わる人たちは個々の立場や目的に沿って動いています。当然のように見えますが、敵キャラはちゃんと嫌なことを考えて嫌なことをして、味方になるキャラなら太郎に好意を持つに至る心の動きまでしっかりと綴られる……ただの説明やセリフだけじゃなく、しっかりと自分ならではのアクションを魅せてくれる“人物”の妙がすごい!
まあ、味方の場合、料理上手な太郎の作る料理やお菓子に釣られたりもするのですが……それらが場の中心に躍り出ず、交渉の脇役に徹する奥ゆかしさ、わたくし大好きです。奥ゆかしいといえば白金を忘れてはいけません。彼はけして出しゃばらず、ロジカル思考で完璧に仕事をこなす賢い子です。でも、太郎と過ごす中で垣間見せるのですよ。ロジックからはみ出した感情の片鱗を。彼の成長を視ていたくなるこの気持ち、親心ってやつでしょうか?
能力無双かと思いきや、しっかり読み込ませてくれる分厚い物語、自信を持っておすすめします!
文:髙橋剛
ざっくり言うとこんな作品
1)勇者一行となる高校生の異世界召喚に巻き込まれた太郎! 帰還を目ざしつつ、まずは貸倉庫屋を営みスローライフを満喫!
2)特殊スキル「トランクルーム」はレベルが上がるたび、便利にランクアップ! 有能なアシスタント(元パソコン)も完備です!
3)料理やお菓子まで、太郎が作る食べ物は異世界のみなさまに大好評! スキル頼りじゃないおもてなし能力の高さがすごい!
主要キャラ紹介
▼太郎
異世界転移に巻き込まれた主人公。スキル「トランクルーム」を使って料理をするなど異世界では予想できない使い方で周囲を驚かせる。貸倉庫屋を始めるため旅をしていく。
▼白金
太郎のスキル「トランクルーム」のアシスタント。冷静沈着で銀髪碧眼の少年の姿をしている。膨大な知識を活用して太郎をサポートする。
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異世界で貸倉庫屋はじめました 1
著者: 凰 百花 イラスト: さかもと侑
日本のトランクルームにつながれる!? スキルを駆使してスローライフ
突然異世界転移に巻き込まれたサラリーマンの太郎。彼が持っていた固有スキル「トランクルーム」はあまり価値がないとみなされ、自ら王城を出て、一人市井で生活を始める。しかしそのスキルは、彼が日本で借りていたトランクルームとつなげることができ、レベルを上げていくと設備も部屋数も増やせる特別なスキルだった。加えて銀髪碧眼、知識豊富で魔物も討伐できてしまう優秀なアシスタントの白金までついていた!
そのスキルを活かしてポーターの仕事をしていたある日、太郎は一体の女神像を運ぶ依頼を受ける。並の能力では運べない女神像であることを知らずに運んでしまった太郎は国に目を付けられてしまい、白金と共に国を脱出し新天地を目指すのだが――!? 旅先で出会う仲間と織りなすほのぼのスローライフ第一弾!