【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はMFブックスから1月24日に刊行される『俺の愛娘は悪役令嬢 1』です。みなさんの感想も聞かせてください!
“乙女ゲームの世界への転生”という、様式美のあるフォーマットをいかに味付けするか。作者ならではのアレンジや個性を味わうのが、このジャンル特有の楽しみです。「蒼乙女の幻想曲」は女性向けの乙女ゲームという設定ながら、ユーザーの属性を問わず多くのゲーマーを夢中にさせるような、気の利いたイベントやシナリオがふんだんに盛り込まれています。ルイーゼの悪役ルート進行に抗うヴォルフガングの奮闘が本作の見どころですが、この優れたゲーム内世界観があることで、読み進める上での面白みも倍加していると感じました。
作中で何よりも心に残ったのが、ヴォルフガングとルイーゼの微笑ましい親子愛です。若くして病死した妻への思いを今も抱きつつ、愛するルイーゼが悪役令嬢にならないよう、ヴォルフガングは悲しみを乗り越えて娘に向き合います。どうにか悪役令嬢ルートから外れたように見えても、ルイーゼの周囲にはさまざまな火種がくすぶり、一難去ってはまた一難。シナリオを先回りして危機を回避しようとするヴォルフガングの活躍と、父親を慕う娘との絆に胸が熱くなります。
魔法があまり使えないこともあって、ヴォルフガング自身の自己評価は低いですが、周囲の認識はだいぶ異なります。彼の能力の高さや整った容貌、そして何よりも思いやりのある性格を愛し、慕う人がたくさんいるのです。兄が大好きなブラコンの弟や、自称学院時代からの友人の公爵ペべル、美しい令嬢レナなど、彼を取り巻く個性豊かなキャラクターとの掛け合いも本作の大きな魅力。そして実は公爵代理としての的確な政治的手腕も素晴らしいヴォルフガング、新しいロマンスの展開にも期待が高まります。
文:嵯峨景子
ざっくり言うとこんな作品
1)亡き妻の忘れ形見であり、愛する娘のルイーゼを破滅から救うため、ゲームのシナリオに抗うヴォルフガングの姿を応援したくなる!
2)魔法をろくに使えないと言われているヴォルフガングが、自らの能力を上手く活用してさまざまなトラブルを解決する姿が痛快。
3)設定やシナリオが作り込まれた乙女ゲーム「蒼乙女の幻想曲」の世界が魅力的! 多彩なキャラと魔法やファンタジー要素も楽しめる。
主要キャラ紹介
▼ヴォルフガング
転生者。親に見限られたために公爵家を継がず、弟が成人するまで当主代理を務めている。病死した亡き妻への思いを胸に、娘ルイーゼの悪役令嬢ルートを回避すべく奮闘中。
▼ルイーゼ
乙女ゲーム「蒼乙女の幻想曲」の世界の悪役令嬢。ヴォルフガングの尽力によって悪役令嬢ルートには進まず、幼いながらも聡明なレディに育つ。父の再婚についても考えていて……。
▼マルクス
年の離れたヴォルフガングの弟。イケメンで頭もよく、魔法の扱いも上手い。実はかなりなブラコンでヴォルフガングが大好き。自分ではなく兄に公爵家を継いでほしいと思っている。
▼レナ
フィッシャー侯爵家の長女。「蒼乙女の幻想曲」ではモンスターに襲われて廃人になるが、ヴォルフガングのシナリオ改変によって救われる。金髪でアメジストの瞳をした美人。
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俺の愛娘は悪役令嬢 1
著者: かわもり かぐら イラスト: 縞
俺の可愛い娘を、悪役になんて絶対させない!
乙女ゲーム「蒼乙女の幻想曲」の世界の悪役令嬢の父親に転生したことに気づいたヴォルフガング。魔法がろくに使えないことで両親から見放され、公爵家の長子でありながらも将来は伯爵になる予定だった。しかし、次期公爵の幼い弟を残して両親は他界。ヴォルフガングは弟が成人するまで公爵代理として過ごすことになる。やがて愛する女性カサンドラと結婚し、愛娘ルイーゼを授かるが、娘が四歳の年に妻は病死してしまう。ゲームのシナリオでは妻の死を契機にルイーゼはワガママな悪役令嬢に育っていくのだが、ヴォルフガングは悲しみを乗り越えて娘の幸せのために立ち上がる。
「俺の可愛い娘ルイーゼを、愛しい妻の忘れ形見を、悪役になんて絶対させない」
これは、ゲームシナリオという名の運命に逆らおうとする父親の奮闘記。