【レビュー】二人の少女の甘くも背徳的な同棲生活。これは浮気? 浮気じゃない?

彼女のカノジョと不純な初恋

【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は1月10日に刊行される『彼女のカノジョと不純な初恋』です。みなさんの感想も聞かせてください!


思えば浮気という言葉には、定義の難しい部分がある。どこからどこまでが浮気なのか? という問題は個人の感覚や裁量に依存するところだろう。相手が同性であるならば、その定義はより複雑なものになっていく。しかし確実に言えることは、浮気は誰かを傷つける悪い行為だということ。そして、その小さな火種は少しずつ人間関係を変えていく。本作はそんな事を考えさせてくれる。

平凡な少女ユキが、同学年のつかさと出会うことで日常が崩れ始めていく――というのが本作の物語だが、とにもかくにもつかさが魔性の美少女すぎる! 特につかさの彼女である玲羅との面談の最中、玲羅の見えないところでつかさがユキの指を絡めとり、恋人結びのようにつながっていく場面などは、もう背徳感がものすごい。「なにやってんのこの娘!?」と思う反面、ぞくぞくとした尊みを感じてしまうのだから困ったものだ。隠れて悪いことをしている時のような、昏い恍惚がある。それがたまらなく、読む手が止められなくなっていった。

『彼女のカノジョと不純な初恋』より

だがつかさ本人にとっては、依然として玲羅のことは好きだし、浮気だとは全然思っていないわけである。そこで本作の登場人物それぞれが、確固とした価値観で動いている事に気づく。浮気や恋愛を主軸とした少女たちの価値観。平穏だった彼女たちの日常は、彼女たちの価値観のすれ違いによって少しずつ歪んでいく。この甘くも昏い人間ドラマは病みつきになってしまう。そしてその中で少女たちがどのような答えに至るのか、という物語の結末へ自然と期待が高まってしまう。

少しずつすれ違っていく少女たちの、禁じられた遊びに不安と期待が同時に味わえる物語だった。

文:明日香 譲

ざっくり言うとこんな作品

・ユキとつかさの同棲関係をきっかけに、だんだんと歪んでいく4人の関係性。からみあう登場人物たちの想いが互いを傷つけあう。

・登場人物たちの背景と価値観に根差した人間ドラマ展開。登場人物は皆それぞれに考えがあり感情移入してしまう。

・ユキとつかさの甘くも背徳的な同棲生活。これは浮気? 浮気じゃない? そんなギリギリのラインを探るような生活に、ドキドキ!

主要キャラ紹介

拝島 雪(はいじま ゆき)
一人暮らし中のフツーの女子高生。
クラスでは目立たないが、実はツッコミ気質な内弁慶。
成績はフツーに悪い。

拝島雪(はいじま・ゆき)


碧海 つかさ(あおみ つかさ)
校内で知らない者はいない美人生徒。
ミステリアスに見えるのは、マイペースでいつも眠いから。
玲羅がカノジョなのは一部で有名。

碧海つかさ(あおみ・つかさ)


狭山 玲羅(さやま れいら)
元子役の高校生兼声優であり、つかさのカノジョ。
思い込みが強く感情的な反面、面倒見がいい。
つかさとは幼馴染みでもあり、過去を知っている。

狭山玲羅(さやま・れいら)


久留米 弓莉(くるめ ゆみり)
自称清楚系なバスケ部所属の同級生。
ユキに強い感情を向けている。
清楚な部分は見た目ではなく根の真面目さ。

久留米弓莉(くるめ・ゆみり)

作品情報
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    彼女のカノジョと不純な初恋

    著者: Akeo   イラスト: 塩こうじ

    彼女がいるカノジョと、私は同棲をしている――

     「わたしが勉強を教える代わりに、夏休みまでユキの家に泊めて」
     次に赤点を取ったらひとり暮らしはおしまい。崖っぷちの私・ユキは学校で随一の美人・つかさの提案を流されるまま受け入れた。
     でも、私見ちゃった。つかさが公園で同級生の女の子とキスをしていたところを。妙に近い距離感で私を何度も困らせてくるつかさは、まさかの「カノジョ」持ち。友達の弓莉には、女同士でも「浮気」じゃないかって同棲に反対されたけど、つかさはどこ吹く風。でも私の学力は上がってきてるし、つかさとの生活も楽しく感じはじめている。「恋愛感情がなければ浮気じゃない」ってそうかもしれないけど、けど――
     ――大丈夫、私が恋を知らないままなら、みんな幸せなままだよね?

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