【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は1月15日に刊行される『姉の身代わりで嫁いだ残りカス令嬢ですが、幸せすぎる腐敗生活を送ります』です。みなさんの感想も聞かせてください!
海外旅行に出かけた際に、日本食が恋しくなった経験がある人は少なくないでしょう。そう思うと、日本の記憶を持つ転生者・マグリットが日本食を食べたがり、異世界でなんとか母国の調味料を作れないものかと試行錯誤する気持ちが痛いほど分かります。
……と、マグリットに素朴な共感を覚えていたところ、そんな日本食への偏愛が、予想外に身近な人を助けてしまうのです!マグリットが思いがけず嫁ぐことになった相手は辺境伯のイザック。彼はすべてを腐らせてしまう恐ろしい「腐敗魔法」の持ち主で、その能力ゆえに大切な人たちを傷つけてしまうことに思い悩み、他人を遠ざけて生きていました。
けれど、腐敗と発酵は紙一重。イザックにとっては忌むべき能力でも、マグリットには味噌や醤油を作るための格好の材料。彼女の並々ならぬ“発酵食愛”が、イザックの存在を肯定してくれる鍵になるのです。味噌や醤油造りを通じて心を通わせていく二人の姿はなんとも微笑ましく、発酵食のことで頭が一杯で、イザックの好意に全く気がつかないマグリットのトンチンカンな言動も笑いを誘わずにはいられません。
さらに注目してほしいのが、痛快な「ざまぁ」要素です。マグリットを虐げてきた自分勝手な家族に怒りを抱くイザックの行動に、誰もがすっきりするでしょう。不幸な境遇にありながら、健気に生きてきた太陽のように明るい少女が、自らの力で愛と幸せを掴む。「魔法×発酵食×ラブコメ」という異色の組み合わせが、いい味を醸し出しています。
文:嵯峨景子
ざっくり言うとこんな作品
・マグリットのどんな境遇にもへこたれない雑草魂(逞しく明るい性格)を見て、誰もが応援したくなる!
・発酵食品(今回は主に味噌+少しの醤油)の描写が出てきて、思わず食べたくなる!
・ちゃんとざまぁも待ってます! そんな爽快感+辺境伯の心をこじ開け愛されていく過程もぜひ堪能ください!
主要キャラ紹介
マグリット・ネファーシャル
子爵家の次女として生まれるが、魔力を持たず《残りカス》と呼ばれ使用人として育てられる。前世持ちで、日本食を食べることが夢。
イザック・ガノングルフ
辺境を守る公爵。腐敗魔法を使うことから恐れられており人を避けて暮らしてきた。兄の王に結婚を命じられるが……?
ローガン・リダ
魔法研究所の所長兼リダ公爵家の若き当主。イザックを恐れない唯一の友でもある。