【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はMF文庫Jから12月25日に刊行される『エンバーミング・マジック 魔法を殺す魔法』です。みなさんの感想も聞かせてください!
魔法で命を救った少年と、救われた少女。少女は魔力が切れると猫になるからと、通学中には手をつないだりなんかして。この作品が、青春と甘酸っぱさでいっぱいなラブコメだったなら、夢のあるスタートだと思うのですが。彼らが操る魔法も世界も、そこまで甘くはないみたいです。
この世界で人に魔法を使うのは、厄介な運命に巻きこむということ。一度は少年シズキの魔法で救われたとはいえ、そのために少女ナギは、あと半年ほどで魔法を操れるようにならないと、魔物化する運命となりました。しかも魔物化した場合、シズキ自身が彼女を処分するとのこと。
魔法とはいえ、決して万能ではない。なかなかにシビア、なかなかにハードですね。それでも、ナギが魔法を使えるようになれば万事解決、ハッピーエンド! と、思ったのですが。彼らを包む魔法の闇は、もっと深く、濃密だったのです。
過去の記憶がないシズキ。ときに不自然にも感じる、ナギの言動。弟子のシズキはもちろん、ナギについても何かしら関与しているらしい千歌。さりげなくちりばめられていた伏線が、読み進めるにつれ、大きなうねりとなっていく感覚は、読者自身もシズキたちが操る魔法の闇に引きこまれるかのようで、読了まで目が離せません。
さすがは、MF文庫Jライトノベル新人賞〈最優秀賞〉受賞作品。しかも、歴代受賞者も推薦、というのも納得です。自身の過去を乗り越え、魔法使いの運命を背負ってゆく、シズキとナギの今後に期待が高まりますね。
文:瀧田伸也
ざっくり言うとこんな作品
1)魔法によって一命をとりとめた少女。しかし、その姿は猫になり、そのうえ、早く魔法を操れるようにならないと、魔物化してしまう!?
2)抜け落ちているシズキの記憶や、言動が不安定なナギの秘密。彼らの過去と、魔法にまつわる深い闇が、しだいに明らかになってゆく。
3)第20回MF文庫Jライトノベル新人賞〈最優秀賞〉受賞作品。歴代の〈最優秀賞〉受賞作家陣も推薦する、注目のファンタジー!
主要キャラ紹介
▼斬桐シズキ(きりとう しずき)
「破壊」の魔法を得意とする、高校生の魔法使い。クラスでは人当たりもよく、いじられ役となっている。交通事故の現場に居合わせ、慣れない魔法でナギを救おうとするが……。
▼家入ナギ(いえいり なぎ)
周囲からは孤高で気難しそうと評される、シズキのクラスメイト。シズキの魔法で一命をとりとめるが、このままでは魔物になってしまうため、彼に魔法の扱いを習うことに。
▼千歌二絵(ちか にかい)
スタイルは良いが、怠惰で実年齢不詳なシズキの師匠。『忘却の魔女』を名乗り、地下に広がる廃駅を寝床にしている。シズキが連れてきたナギに対して、思うところがある様子。
『エンバーミング・マジック』公式Xアカウント
https://x.com/embal_magic_mfj
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エンバーミング・マジック 魔法を殺す魔法
著者: 茶辛子 イラスト: カラスロ
第20回目のMF文庫Jライトノベル新人賞≪最優秀賞≫受賞作!
目の前で女の子が車に撥ねられた。
その日、初めて僕は禁忌と知りながら一般人に魔法を使った。
彼女は助かったが、「破壊」以外の魔法が下手な僕は家入ナギを猫にしてしまった。
『魔法憑き』の人間は魔法を使えるようにならないと魔物になってしまう。
……このままだと、僕がナギさんを消さなくてはならない。
彼女に魔法を使えるようになってもらうため、師匠の千歌さんにも力を借りて特訓を始める。
だが、ナギさんが呪文を唱えても魔法は発動しない。
迫るタイムリミット、何かを隠す師匠、どこかちぐはぐなナギさん。
そして僕、斬桐シズキの空白の過去。
現代の魔法使いと少女の生き方を描く、退廃的ジュブナイルファンタジー開幕!