【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はスニーカー文庫から11月29日に刊行される『女装の麗人は、かく生きたり』(著者:ショーン田中/イラスト:夕子)です。みなさんの感想も聞かせてください!
闘技奴隷として生きる“女装の麗人”リオは、精霊の頂点に立つ竜をいつか殺してみせるという野望を抱いています。精霊たちが世界を支配し、人間を奴隷として扱うこの世界では、その野望はあまりに不遜。
けれども、そんな逆境に立ち向かい、精霊たちと剣を交えるリオの姿は、あまりに凛々しく美しい。一見、フリルのドレスを身にまとう可憐な“少女”だからこそ、その雄々しい勝利への執着との対照は、痛快な読み心地をもたらしてくれます。そして、最弱の人間による華麗な逆転劇のカタルシス……! 華麗な主人公がみせる鮮やかなギャップが好物な方には、おすすめの一作です。
人間を奴隷として支配する精霊たちですが、その精霊たち同士の間にもまた、力の差による圧倒的な序列が存在します。どこまで行っても、強固なヒエラルキーに取り巻かれる殺伐とした世界。しかし、だからこそ精霊たちのキャラクターもリオの奮闘も際立つようで、バトル描写のスリリングさには息を呑んでしまいます。
精霊と人間が、ただ対立するだけの二者ではない点も、この物語の秀逸なところ。闘技者の訓練所を切り盛りするウッドエルフのディアはリオの所有者でもありますが、ディアとリオはともに、竜の殺戮によって故郷を失った過去を持ち、竜への復讐心を抱えたいわば同志です。支配―被支配の関係で終わらない、種族を越えた二人に芽生えた絆には、思わず胸を打たれます。異種同士がへだたりを埋めながら歩むストーリーを、ぜひ堪能してみてください。
文:嵯峨景子
ざっくり言うとこんな作品
1)ヴァンパイアやエルフなど数多の種族が暮らす国が舞台。個性豊かな登場人物は皆魅力的!
2)主人公のリオはとっても可愛い美少年! 日頃から女の子の恰好で過ごしていて、周りからは女の子だと思われている。
3)「力」こそ唯一絶対の国で、最も非力で身分が低い”人間”のリオが、その身と巨大な軍用大剣ひとつで「力」を示す成り上がりの様も気持ちいい!
主要キャラ紹介
リオ=カーマイン
ディアに仕え、闘技者としての日々を生きる少年。
その美しい戦姿は見る者を魅了してやまない。
ディア=エルギリム
エルギリム訓練場をひとり切り盛りするウッドエルフ。
リオに女装をさせている張本人。
アネルドート=オルガニア
オーガゆえの英雄的頑固さを持ち、戦場を愛する豪傑。
鍛え抜いた一閃は全てを断絶する。
エミー=ハーレクイン
貴族階級のヴァンパイアとして百獣議会の一席を担う謀略家。
リオを溺愛し、ディアのパトロンでもある。
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女装の麗人は、かく生きたり
著者: ショーン田中 イラスト: 夕子
第29回スニーカー大賞《銀賞》 最弱の少年が最強の英雄へと至る活躍譚!
ハルピュイア、ヴァンパイア、オーガ――数多の精霊たちが集うこの国において唯一絶対のもの、それは『力』。ゆえに、ここで成り上がるには闘技者となり『力』を示さねばならない。
血気盛んな闘技者の中で、絢爛豪華な紅色のドレスを翻し戦う一際麗しい少女――"彼"の名はリオ=カーマイン。何の能力もなく最も低い身分にある人間ながら、たゆまぬ鍛錬の経験則は未来視に迫り、その身と巨大な軍用大剣ひとつで、上位の精霊とも渡り合う! "女装の麗人"が精霊たちの常識を覆す!
「見ていてください。僕はこの大陸で一番の闘技者になります」
これは、最弱の少年が最強の英雄へと至る活躍譚!!