【レビュー】角川ビーンズ小説大賞奨励賞受賞作は、“関係性萌え”の心をくすぐる「つがい」の物語!

大魔法使いと死にたがりのつがい

【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は11月29日に刊行される『大魔法使いと死にたがりのつがい』です。みなさんの感想も聞かせてください!


物語を読むうえで個人的に大きなウエイトを置いているのが、キャラクター同士の関係性です。少し歪みのある、それでいて強い絆で結ばれた関係性に惹かれがちな私にとって、本作に登場する「つがい」という概念は好みど真ん中の設定でした。

命の源・マナを生み出せる大魔法使いと、マナを消滅させる力が人々に疎まれている魔封士。一人では制御しきれない強大な力を持つ者が、正反対の能力を持つつがいと契約することで自身をコントロールするという結びつきの強さに、“関係性萌え”の心は躍ります。

『大魔法使いと死にたがりのつがい』より

おまけに主人公の魔封士・シャルロットも、彼女の新しいつがいとなる大魔法使いのヴィルジールも、互いに大切な相手を亡くした絶望の中で出会います。辛い過去を抱え、これまでは他者と関われなかったシャルロットが、ヴィルジールの隣に新しい居場所を見つけ、少しずつ強さを身につけて未来を切り拓いていく。その姿には、やはり他者の他者と支え合うことなしには生きられない我々もまた励まされます。

一見無愛想ですが、本当は心優しいヴィルジールの不器用な思いやりも、ときめきポイントです。シャルロットとの絆が深まっていくにつれて、彼の過去のつがいだったアニーの存在がちらつき、少しやきもきさせられる瞬間も。けれども最後まで読むと、そのやきもきが解消する、「なるほど」の展開が待っています。この驚きを、ぜひ多くの人に味わっていただきたいです。

大切な人の喪失を受容できずにいる人や、孤独や辛さを抱えた人の背中をそっと押してくれる、再生と希望の物語でした。

文:嵯峨景子

ざっくり言うとこんな作品

・主人公のシャルロットとつがいのヴィルジール、お互いに孤独を抱える二人が前向きに人生を歩みはじめる様子にじんわり感動!

・命の源・マナのやり取りを介してお互いの命を握る2人の関係性の歪さと、歪だからこそ、心が通じ合う人間ドラマ。

・死にたかったシャルロットと死なせたくないヴィルジール、2人の過去にまつわる秘密が気になる!

主要キャラ紹介

シャルロット
命の源・マナを吸収して枯渇させてしまう「魔封士」。迫害されていた村から助け出したミレイユの「つがい」になったが、ミレイユが亡くなったことで再び孤独に。

シャルロット


ヴィルジール
マナを無限に生み出すことができる「大魔法使い」。つがいのミレイユを亡くしたシャルロットの前に現れ、新しい「つがい」として契約する。

ヴィルジール


ミレイユ
シャルロットの元つがいの大魔法使い。

レティシア
ヴィルジールの同僚の大魔法使い。ルネのつがい。

ルネ
レティシアのつがいの魔封士。

作品情報
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    大魔法使いと死にたがりのつがい

    著者: いちしちいち   イラスト: 白峰 かな

    角川ビーンズ小説大賞奨励賞受賞作! 命を共有する『つがい』を巡る物語。

    生命の源・マナを吸収し、命を奪う魔封士のシャルロット。
    忌み嫌われた彼女の前に現れたのは、マナを無限に生む大魔法使い・ヴィルジールだった。
    彼と『つがい』として契約し、マナを授受することで生きることを許される。
    「俺には君が必要なんだ」彼の真摯で不器用な優しさに触れ、彼を支えたいと思うシャルロット。
    そんな時、国中のマナが失われる異変が起きて!?
    命を預ける唯一の『つがい』と歩む宿命のファンタジー!

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