【レビュー】登場人物も、読む人さえも、ときに傷つき涙する……激しく感情を揺さぶる青春ラブストーリー

『壊れそうな君と、あの約束をもう一度』

【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はMF文庫Jから10月25日に刊行される『壊れそうな君と、あの約束をもう一度』です。みなさんの感想も聞かせてください!


好きな異性と、ひとつ屋根の下。本来なら最高のシチュエーションなのに、「ある約束」のせいで、祈織にまっすぐ向き合えない廉司。そんな思いを募らせる日々のなか、ヒロイン祈織とは正反対の魅力を持ったもう一人のヒロイン愛華からの告白。つくづく、こんな状況でなければよかったのにと、ある意味、不運な廉司には同情したくなってきます。

恋敵である祈織に渡すプレゼントを一緒に選んでくれる愛華は、とてもいい子だと思いますし、疎遠になったと思っていたのに、実はずっと廉司の音楽活動を応援していた祈織のいじらしさにもキュンとします。なのに、どちらかひとりを選ぶなんて……そう簡単にできるわけがありません!

『壊れそうな君と、あの約束をもう一度』より

甘酸っぱい……というには、少々心の痛い三角関係ですが、それでも、廉司の思いが変わることはありませんでした。現在の彼が音楽活動に勤しんでいるのも、もとはといえば祈織の存在があってこそ。廉司と祈織にとって、なかば呪いのようになっていた約束は、何年経っても途切れることのない、絆でもあったのです。一方、愛華の廉司に対する思いも真剣で、人によっては彼女を応援したくなるはず(個人的には、けなげで物静かな祈織派ですが)。

『壊れそうな君と、あの約束をもう一度』より

ふたりのヒロインがどちらも素敵なだけに、三角関係がいかにもどかしいものなのかを、本作はあらためて思い知らせてくれます。明るく楽しいラブコメもいいですが、青春や恋愛には、傷や涙もつきもの。最後まで心をつかんで離さない、激しく感情を揺さぶられる作品でした。

文:瀧田伸也

ざっくり言うとこんな作品

1)より親しい存在にも、赤の他人にもなれる「幼馴染」という間柄で、「約束」をキーワードに揺れ動く、廉司と祈織の関係性に注目

2)『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』の汐見夏衛先生『きみが明日、この世界から消える前に』の此見えこ先生も推薦する、青春恋愛小説

3)儚げで守ってあげたくなる祈織と、華やかで行動力に満ちあふれた愛華。対照的な魅力を持つふたりと廉司の、もどかしい三角関係

主要キャラ紹介

▼月城廉司(つきしろ れんじ)
ギターが趣味で、演奏系動画の投稿や、バンドサポートといった音楽活動をしている高校生。幼馴染の祈織に片思いしているが、果たせていないある約束を負い目に感じている。

月城廉司


▼望月祈織(もちづき いのり)
廉司の幼馴染。校内では美少女と認知はされているが、他者との交流はなく、クラスで孤立している。

望月祈織


▼黒瀬愛華(くろせ あいか)
廉司とはとある縁で知り合いとなる。明るく嫌味のない性格で、学校一番の有名人であり、人気モデルとしても活動中。

黒瀬愛華

作品情報
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    壊れそうな君と、あの約束をもう一度 1

    著者: 九条蓮   イラスト: ゆがー

    2人の関係は、幼なじみから他人、同居人と変化を遂げ、これから――。

    月城廉司は、高1の夏頃から疎遠になっていた幼なじみの少女・望月祈織と一つ屋根の下で暮らしている。
    ただ、2人の間にできた時間的、精神的溝は浅くなく、関係を改善したいと思いながら何もできないまま高2の始業式を迎える。
    祈織と同じクラスになり、これから彼女に歩み寄ろう、あの日にした「約束」を果たそうと、決意を新たにする廉司。
    少しずつ関係は動きだす――と思われた矢先、廉司の秘密を知る愛華が告白をしてきて……。

    他人にも特別な関係にもなれる。

    近そうで遠い「幼なじみ」の2人が、すれ違い、成長して変化しながら歩んでいく。
    大切なものをもう一度見つけるための青春の1ページ。


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    MF文庫J
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