【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はファンタジア文庫から10月19日に刊行される『はじめよう、ヒーロー不在の戦線を。』です。みなさんの感想も聞かせてください!
まず惹き込まれたのは設定。だって、主人公っぽい言動をする――つまり“主人公的行動”をするほど、秘められていた機能が解放されて強くなる人型兵器ですよ! それがわかってるのに、やる気も適正もない主人公をどうやって描くんですか!? って思うじゃないですか。
次期主人公に選ばれた嗣道は、前主人公であり幼なじみの茜の死から立ち直れず、絶望してやる気が一切出ない状態です。でも、読み進めていくと突然頭をぶん殴られることになるのです。嗣道だけじゃなく我々もいつの間にか忘れていた当然の真実によって……。
それは、「主人公らしさとは主人公自らが望んで発動させるものではない。いつだって他の誰かのために絞り出すものだ!」ということ。
まさに王道ど真ん中な主人公の有り様! そしてその主人公精神を嗣道に気づかせる誰かがヒロイン格の麒麟ではなく、彼の思いの内にずっと居続けている茜である点もまたドラマチックなのですよね。
彼は生きている誰かのためじゃなく、死んでしまった幼なじみから「託された」思いのために戦います。その事実を中心に置いて、麒麟を始め他のキャラクターたちの立場や心情が渦巻く人間模様、見どころしかありませんよ。もちろん、茜を挟んで向かい合っている嗣道と麒麟の関係性がどうなっていくものか。これはもう凄まじく気になるところです。
主人公をテーマとしてその存在に焦点を絞り込んだこの物語、しかし“まだ”主人公は不在です。果たして嗣道は誰より主人公らしい主人公となってくれるのでしょうか!? 期待して見守りますよ!
文:髙橋剛
ざっくり言うとこんな作品
1)“星の歪”から出てきて人々を襲う宇宙怪獣。人類に残された対抗手段とは、搭乗者の「主人公的行動」を力に変える“主人公性人型兵器”スターゲイザー!
2)スターゲイザーの前搭乗者である少女・茜は命と引き換えにかつて世界を救った。しかし、次の搭乗者に選ばれた茜の幼なじみである嗣道にはやる気も適正もなくて……!?
3)最強の宇宙怪獣が地球を襲うまでの猶予、あとたった3ヶ月! その間に嗣道は主人公らしくなれるのか!?
主要キャラ紹介
高橋嗣道(たかはし つぐみち)
前スターゲイザー搭乗者の小日向茜により、次の搭乗者とさせられてしまった少年。茜の死のショックから引きこもっている。
山田麒麟(やまだ きりん)
スターゲイザーを開発した科学者で、自称天才美少女。突然嗣道の前に現れ、3ヶ月で彼を主人公に仕立て上げると豪語する。
小日向 茜(こひなた あかね)
嗣道の幼なじみで、命と引き換えに怪獣の出現口“星の歪”を閉ざした前スターゲイザー搭乗者。まさに主人公の中の主人公。
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はじめよう、ヒーロー不在の戦線を。
著者: 服部 大河 イラスト: 河地りん
世界を救う方法は――“主人公”を演じること。
第36回ファンタジア大賞《金賞》&《細音啓特別賞》W受賞!!
『主人公的行動』――例えば、困っている人を助けたり、窓際の席で転校生と出会ったり。そんな行動を力に変える兵器・スターゲイザーは、まさに小日向茜のための兵器……だった。
「おまえは小日向茜の代わりに、戦わねばならない」
茜が命と引き換えに世界を救ってから一年。一人残され、絶望の中引きこもる幼馴染・高橋嗣道に、それは突然告げられた。
茜を殺した仇敵の復活。迫る人類の危機。対抗できるのは、茜からスターゲイザーの後継者に設定されていた嗣道だけ。
「だから、天才科学者の私がお前を主人公にしてやる!」
突如現れた少女・山田麒麟による、《主人公化計画》が始動!?