【レビュー】グイグイと興味を刺激される設定と、繰り広げられるドラマが心を抉る!『輪転式ステレオプティコン - jailed in 2002 -』
【新作ラノベ先読み感想文レビュー】今回は6月28日に刊行される『輪転式ステレオプティコン - jailed in 2002 -』です。みなさんの感想も聞かせてください!
宇宙人が東京の一部を消し飛ばす事件を起こしたとか、大量に押し寄せてきた宇宙人が人類と共生するようになったとか、宇宙人とペアを組むことで異能を使えるようになるとか。そんな設定だけでもグイグイと興味を刺激されるのに、繰り広げられるドラマが恋の思い出という奴をグリグリと抉ってくるからたまらない。
畦倉拓夢が消失した都心部に潜入すると、何年も前に起こった消失に巻き込まれた高校の先輩で、告白しようと思っていた寂院夜空先輩が当時の姿のままで歩いていた。そこで無事だったんだと喜び駆け寄る択夢の気持ちは分かるけど、すっかりおじさんになってしまっていた拓夢が夜空に変質者呼ばわりされたのには心を痛め付けられた。
今さら告白は無理でも、生きてくれていたんだからそで良い。後は切り離されている都心部を元の場所に戻して先輩を救い出すだけだと頑張る拓夢はなかなか偉い。ただ、本当に元に戻せるんだろうかといった不安も浮かんで暗くなる。閉鎖された空間が同じ日をずっと繰り返していて、無理に止めると全部消えてしまうかもしれないシビアな状況を突破できるのか? 妨害してくる敵をどうやって探すのか? 先が見えない状況から少しずつ進んで真相にたどり着こうとするミステリアスな展開が面白い。
ようやく見つけた強敵を相手に、拓夢とメリノエが見せる異能を使ったバトルも実にスリリング。そんな2人の活躍をもっと読みたいし、甘いものを美味しそうに食べるメリノエの可愛らしさにも触れたいから、早く続きをと言いたくなる。そんな作品だ。
文:タニグチリウイチ
ざっくり言うとこんな作品
・渋谷から新宿あたりの都心部が突然消失。宇宙から大勢の宇宙人がやって来て人類と共生し始めた世界で起こる奇妙な事件の数々。
・犯罪を起こす宇宙人を異能の力を使って取り締まるのは、中年男の畦倉拓夢と少女の姿をした宇宙人のメリノエという異色バディ。
・消失した都心部に潜入した拓夢が会ったのは消失に巻き込まれた高校の先輩の夜空。しかも当時の姿のまま。何が起こったのか?
主要キャラ紹介
調停者として働く少女の姿をした宇宙人。甘いものが大好き。
高校時代の拓夢が好きだった先輩の女子だが消失に巻き込まれた。
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輪転式ステレオプティコン - jailed in 2002 -
著者: 枯野瑛 イラスト: パルプピロシ
「愛があろうが何だろうが、傷つけられる側にしてみりゃ関係ねえんだよ」
明るく元気な近未来バディアクションのふりをした愛と勇気の物語のふりをした近過去くいだおれの旅のふりをしたSF定番の某ジャンル作品の皮を被った別の何かで、それでもきっと、愛とかそういうものの物語なのだ――と、奇妙な銀髪をたなびかせたその少女は、そう言って笑う。
――2002年6月5日、東京と呼ばれていた都市の一部分が消滅した。
地球人と異星人の間に発生したトラブルを解決する調停者・畦倉拓夢が奇妙な銀髪の来訪者・メリノエと共に送る近未来バディアクション。
宇宙人のメリノエとバディを組み宇宙人の犯罪を取り締まる調停者。