「次にくるライトノベル大賞2023」単行本部門1位『TS衛生兵さんの戦場日記』まさきたま先生スペシャルインタビュー!

つぎラノ2023 単行本部門1位
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「次にくるライトノベル大賞2023」単行本部門1位『TS衛生兵さんの戦場日記』まさきたま先生スペシャルインタビュー!

次にくるライトノベル大賞2023」で単行本部門1位に輝いたのは、KADOKAWA刊『TS衛生兵さんの戦場日記』! 今回はこちらを記念して著者のまさきたま先生へのインタビューをお届けします。一人の少女が衛生兵として前線に送り込まれ過酷な戦場を生き延びる本作品。戦争という題材を選んだきっかけや容赦なく死んでいくキャラクターたちへの想いから、好きなゲームまで様々にお話をお聞きしました!

<第1巻のあらすじ>
トウリ・ノエル二等衛生兵。彼女は回復魔法への適性を見出され、生まれ育った孤児院への資金援助のため軍に志願した。しかし魔法の訓練も受けないまま、トウリは最も過酷な戦闘が繰り広げられている「西部戦線」の突撃部隊へと配属されてしまう。彼女に与えられた任務は戦線のエースであるガーバックの専属衛生兵となり、絶対に彼を死なせないようにすること。けれど最強の兵士と名高いガーバックは部下を見殺しにしてでも戦果を上げる最低の指揮官でもあった! 理不尽な命令と暴力の前にトウリは日々疲弊していく。それでも彼女はただ生き残るために奮闘するのだが――。

――「次にくるライトノベル大賞2023」単行本部門1位おめでとうございます! まずは今の感想をお聞かせください。

まさきたま:ありがとうございます。実は最初の方は全く信じてなくて、編集さんが多分送る人を間違えたのかなって(笑)。そこまで上の順位に入るとは思っていなかったので、本当にもう応援してくださった読者の皆様には感謝しかありません。この場を借りて心からお礼申し上げます。

――異世界転生ものですが、銃火器が発達し、近代兵器による戦争が繰り広げられているという時代設定が大変印象的です。本作を書こうと思ったきっかけを教えてください。

まさきたま:以前から読者の方から指摘されていたのですが、正直に言うとカルロ・ゼン先生の『幼女戦記』に凄くハマった時期がありまして、その影響を非常に強く受けています。それまで自分はRPGのようなファンタジー作品を書いてきたのですが、「このような世界でしか書けないストーリーがあるんだな」とすごく刺さり、自分も書いてみたいと思ったのが執筆のきっかけです。

――それ以前はミリタリーものに興味があったわけではないのですか?

まさきたま:正直なところ、書こうと思ってから戦争関連の勉強を始めました。それまではコメディばかり書いていて、最初に本作は匿名でハーメルンに投稿していたのですが、その後小説家になろうにも投稿を始めた時期に、匿名を解除したら読者の方たちから「お前だったのか」と驚かれましたね。

――近代の戦争の中でも塹壕戦(※編集注:ざんごうせん/防御側が塹壕にこもることで攻撃側に多大な犠牲を強いる戦闘)にスポットを当てているのが大変斬新に感じられました。

まさきたま:当初は塹壕戦をメインにするという意識はあまりなくて、第一次世界大戦を調べ始めてから塹壕戦がメインだったというのを知ったんです。『幼女戦記』でもあまり描かれなかった、戦争の違う面を書けるのではないかと思い、執筆しながら塹壕戦について学んでいきました。

――塹壕戦を書いていて難しいなと思ったところはありますか?

まさきたま:最初のうちはそもそも塹壕がどのようなものか頭の中で全く描けず、戦争映画を観たり、実際の映像や写真を観たりして一つ一つ調べながら書きました。実際と違う部分があったりしないかというのは、すごく気をつけていました。また執筆するうえで、実際の戦場に行った人の体験記などもチェックし、当時の人の感情をないがしろにしないことも意識しています。

――本作の戦争描写は多くの下調べに支えられているんですね。そうした過酷な戦争に赴く主人公のトウリ・ノエルは正直、戦場には似つかわしくない女性です。彼女を主人公に決めた理由をお聞かせください。

まさきたま:この作品を象徴する主人公として、どのようなキャラクターにするか考え、一般的な感覚と倫理観を持った人間が、そのまま戦争に押し流されていくというデザインにしたい。それでいて感情移入しやすく、あまり我も強くならないキャラクターをコンセプトにして、トウリ・ノエルというキャラをデザインしました。


衛生兵

――トウリは前世ではFPSのプロゲーマーでしたが、まさきたま先生もFPSゲームはプレイしますか?

 

まさきたま:実際の戦争と対比するのに、前世の主人公の特技は何が一番良いのかを考え、FPSを選びました。弟がFPSをすごくやりこんでいるので、弟から話を聞いて参考にはしています。

――他のゲームをやられたりはしますか?

まさきたま:格闘ゲームは昔からずっとやっていまして、今は『ストリートファイター6』をやっています。一応マスターランクまで行ってまして、結構ガチ勢です(笑)。

――めっちゃやりこんでますね(笑)本作はトウリ以外にも魅力的なキャラクターが多数出てきますが、戦場が舞台ということもあって彼らも容赦なく死んでいきます。彼らの生死は登場時点で決まっているのでしょうか?

まさきたま:もちろん決まってるキャラもいるんですけれど、登場人物を書くときに一番意識しているのが、『コロッケ!』の樫本学ヴ先生がおっしゃっていた「ストーリーの都合でキャラを動かすな」という点です。「キャラを決めて、そのキャラがどうするかでストーリーを作っていけ。その方が面白くなる」というあとがきの内容に感銘を受けていたので、キャラクターを作った後、そのキャラクターに動いてもらう形でストーリーを動かしています。なので、後のキーキャラになるようにデザインした人物もいるのですが、勝手に動いて話の流れで死んでしまうこともありました。ですから登場した時点でどのキャラが死ぬのかは決まっていないというのが正しいかもしれません。

――そんなキャラクターたちの中で先生のお気に入りの人物は誰でしょう?

まさきたま:書籍の範囲から選ぶと、僕はグレー先輩が一番好きです。個人的に感情移入しやすくて、トウリに一番影響を与えたキャラの一人じゃないでしょうか。もし戦場にいるなら彼のような人が近くにいたらという、頼れる兄貴キャラのイメージを込めました。

――頼りになるという点ではガーバック隊長はどうでしょうか?

まさきたま:僕は主人公の目標となる強いキャラを主人公の近くに登場させて、そのキャラを通して主人公がこれから先どういう道を進むかを読者に提示するのが好きなんですね。ガーバックはそうしたキャラを意識して描きました。

――逆にこいつとは組みたくないなというキャラはいますか?

まさきたま:ナリドメ一択じゃないでしょうか(笑)。でも彼も本当はそんな変な人じゃなくて、戦場で狂ってしまったキャラとして書いているので、もし戦場にいなければわりと普通の人ではあるんです。似た話ですとトウリは戦場に行かなければ多分ただの面白い子で終わったでしょうし、ロドリーもトウリと出会った場所が戦場じゃなかったらあんなに仲良くなってはいないと思います。

――戦場の過酷さが人を変えていくんですね……。本作はどのキャラクターも容赦ない状況に追い込まれていくのが大きな特徴です。イラストを担当するクレタ先生もあとがきで「辛い。でも好き」と書いておられましたが、先生ご自身も執筆中に辛い気持ちになることはあるのでしょうか?

まさきたま:めちゃめちゃありますね。僕は元々暗い話が好きじゃなくて、コメディ調の話がすごく大好きなので(笑)。でも新しいジャンルに挑戦することで得られるものはこれまでも多かったので、挑戦してみたら思ったよりも書きやすくて、いつの間にか一番の長編になってしまいましたね。でも、元々の好みで言うなら『この素晴らしい世界に祝福を!』あたりが好きですね。『幼女戦記』が本当に例外で。

――それは本当に意外でした...!!

まさきたま:それまで書いていた作品は全部コメディなので。ただ本作を書く上で、やっぱり戦争というものを美化したくないという思いはあります。物語としてはトウリが活躍するシーンを盛り込まないと面白くないんですけど、ただ彼女が活躍するのならば代わりにいろんなものを失って、結局活躍なんかしなければよかったという思いもしてもらう。戦争を題材にする以上、創作としてそういう部分も絶対やっていかなきゃいけないと個人的に考えております。

――先ほどミリタリーは一から学んだと言われましたが、歴史に対しては興味があったのでしょうか?

まさきたま:元々理系で、実は世界史すら選択しておらず「歴史? なにそれ?」という状態から始めて、かなり苦労した部分であります。戦記物を書くなら当然調べなければいけないのですが、世界史の教科書すら持っていなかったので、解説動画を漁ったり、本を読んだり、戦争映画も観たりしてかなり努力はしました。

――それらの調べ物の中で何か印象に残った作品などはありましたか?

まさきたま:映画の『プライベート・ライアン』はかなり印象に残っています。それから塹壕とは何かを解説している動画なども参考にしましたし、実際の戦争の手記を書いている方のブログなども読ませていただきました。

――こうした努力の結果が書籍化に繋がり今の人気に結びついたんですね! その書籍版ではトウリが遺した日記をある人物が読み、彼女の戦歴を追体験するという新たな要素が加わっております。どのような経緯でこのような変更を加えたのでしょう。

まさきたま:これに関しては編集さんからアイデアをいただいた形で、書籍化の際に「トウリが読者に語りかける形で物語が進んでいくけど、これはどのような感じで語っているのか? あるいは日記形式なのか? ここを一回決めましょう」とご提案いただいきました。日記というのも編集さんからいただいたアイデアで、日記形式にするなら掘り返した日記を誰かが読むのが王道かなと思い現在の形になりました。書籍版のタイトルも編集さんからいただいたものなので、日記にするというアイデアは本当に編集さんのおかげです。

――クレタ先生によるイラストも作品の大きな魅力の一つです。まさきたま先生が最初にイラストを見たときはどう感じられましたか?

まさきたま:もう完璧と言うとあれですけど、自分が思い描いていた世界をそのまま作ってくださっているので、もう感謝しかないというのが正直な感想ですね。トウリもイメージ通りに書いてくださっていて。あと書籍の時点ではまだ出番が少ないキャラもちらっと挿絵で登場しているのですが、そちらもイメージ通りなので本当にすごいなと思っています。

――そうしたクレタ先生のイラストで、一つだけお気に入りを挙げるとすればどれでしょうか?

まさきたま:一つだけ挙げるならば、2巻の口絵の白いワンピースを着たトウリがヌッと笑いながら出てくるイラストですね。不気味ですし、怖いですし、それでいて可愛くて、カッコよくて全てが揃っていて、あれを見た瞬間「クレタ先生、天才だな」って感じました。


衛生兵

――今後の目標などがありましたら教えてください。

まさきたま:目標というのもあれですが、やはり応援してくださっている皆様、特にWEB時代からいっぱい感想をくださっている皆様に対する一番の誠意は、更新を続けて完結まで持っていくことだと考えておりますので、まずはWEB版の更新を続けることですね。正直書籍化の改稿が思った以上に手がかかることもあって、更新が滞ったりしている自覚はあるのですが、完結までの構想はありますし、それをしっかり小説という形でWEBで公開して、読者の皆様に誠意を見せるっていうのは一番の目標かなと考えております。それでいて、書籍版では新しくいろんな要素を改稿要素として追加させてもらっているので、そちらもしっかりエンディングまで持っていくことが一番の目標かなと考えております。

――WEB版も書籍版も今後の展開にもますます期待できますね! これまで応援してくれた読者に、そして今回のランキングを機に本作を新たに知った読者へのメッセージをお願いします。

まさきたま:今までたくさんの応援やコメント、感想をいただいて、それに支えられて、この「TS衛生兵さんの戦場日記」という作品を僕が執筆することができたと考えております。ですので、これまで読んでくださった読者の皆様には、この作品を読んでよかった。最後までちゃんと読み抜いてよかったと思えるような、そして、これから手に取ってもらう読者の方には、読んでみてよかったって思えるような、そういう作品を書けるように、今後は頑張りたいなと思っています。

――今後の更新も、単行本の発売も楽しみにしております。本日はありがとうございました!

作品紹介

  • TS衛生兵さんの戦場日記

    TS衛生兵さんの戦場日記

    著者: まさきたま   イラスト: クレタ

    ファンタジーの世界でも戦争は泥臭く醜いものでした

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  • TS衛生兵さんの戦場日記 2

    TS衛生兵さんの戦場日記 2

    著者: まさきたま   イラスト: クレタ

    命の選別(トリアージ)を。たとえ地獄行きになろうとも。

    BookWalkerで購入する

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