異世界でチート能力を手にした俺は、現実世界をも無双する ガールズサイド4 ~華麗なる乙女たちの冒険は世界を変えた~

第一章 南の島(4)

       ***


 沖に出た時と同じく、海竜が岸まで送ってくれた。

「はあ、すっごく楽しかったわ! よーし、次は砂浜で遊ぶわよっ!」

 勇んで砂浜に膝をつくレクシアに、ルナが口を挟む。

「待て、そろそろ日が暮れるぞ」

「えっ、もうそんなに経つの? んー、じゃあ砂浜は明日ね! それで、明後日はまた海で遊ぶわ!」

「すごい、あんなに遊んだのに、まだまだ遊び尽くす気満々です……!」

「本当にどれだけ滞在するつもりなんだ?」

 賑やかなレクシアたちに、ジゼルが首を傾げる。

「ところで、もう泊まる所は決まっているの?」

「あ。そういえばまだだったわ」

「観光向けの島ではないようだが、宿などはあるのだろうか?」

「宿は一応あるのだけれど、とても簡素なもので……それに、泊まる人がほとんどいないから、しばらく掃除をしていないかもしれないわ。用意をするのに、少し時間がかかってしまうかも……」

「泊めてもらえるだけでありがたいわ!」

「お掃除も、自分たちでやればいいですもんね!」

「そうだな、とりあえず交渉に行くか」

 レクシアたちがそう話していると、ジゼルがためらいがちに切り出した。

「あの……もし良かったら、私の家に泊まらない?」

「えっ、いいの?」

 目を丸くするレクシアに、ジゼルはぱっと顔を輝かせた。

「ええ、もちろん! せっかく仲良くなれたのだし、もっとお話したいと思っていたの。ぜひ泊まってくれると嬉しいわ!」

「嬉しいわ、もっとジゼルと一緒にいられるのね!」

「では、お言葉に甘えるとするか」

「ジゼルさんのおうち、楽しみです!」

 ジゼルは三人を連れて、弾むように歩き出した。

「私の家はこっちよ、ついてきて!」


       ***


 ジゼルについて行くと、海沿いの小さな集落が見えてきた。

「島の人たちは、それぞれ小さな集落を作って暮らしているの。集落の人たちは、みんな家族のようなものなのよ」

 夕飯の支度をしていたらしい人々が、四人に気付いて顔を上げる。

「お帰り、ジゼル。……おや、その子たちは?」

「お友だちよ」

 ジゼルに紹介されて、レクシアは元気に挨拶した。

「こんにちは、お邪魔します!」

「レクシアさんにルナさん、ティトさんよ。三人で旅をしているのですって。今日会ったばかりなんだけど、とっても仲良くなっちゃったの」

「なんと……」

 島民たちは、はにかむように微笑むジゼルを見て驚きを浮かべた後、レクシアたちを囲んだ。

「ああ、ありがとうございます、旅の御方……!」

「ジゼルに友人が……良かった、良かった……!」

「こんなに明るいジゼルの笑顔を見たのはどれくらいぶりかしら……!」

「ごめんな、ジゼル。ずっと寂しい思いをしてきたんだよな……ああ、良かった……」

 長(おさ)らしき老婆が、涙ぐみながら頭を下げる。

「ありがとうよ、旅のお人……ジゼルはこの通り、優しい子なんじゃ。どうか、ジゼルと仲良くしてやっておくれ」

「ええ、もちろんよ!」

 他の人たちも代わる代わるやってきて、たくさんのもてなしの品をくれた。

「木の実を干したお菓子だよ、持っていきなさい」

「特産の魚を干したものだ、炙って食べるとうまいぞ」

「こんなにいいの!? どれも美味しそうだわ、ありがとうございます!」

 両手いっぱいの食べ物を抱えて礼を言い、集落を後にする。

 心のこもった歓待に、レクシアは声を弾ませた。

「海はきれいだし、島の人たちも優しくて、とってもいい島ね!」

「ああ。ただ、少々大袈裟な気がするが……」

「なんだか、ジゼルさんの笑顔を見て、すごく感動しているみたいでしたね」

 ルナとティトが首を傾げた時、ジゼルが海辺を指さした。

「あれが私の家よ」

「わあ、海の上におうちが……!」

 ティトが目を輝かせる。

 ジゼルの家は、海上に張り出すようにして建っていた。

「さあ、どうぞ」

 階段を上って中に入る。

 中は潮風が吹き抜ける開放的な造りで、ハンモックや大きなベッドの天蓋が揺れていた。

 テラスからは広大な海が一望できる。

「わあああ、すごいです!」

「なんて綺麗な景色なの!」

「これは絶景だな」

「テラスの階段から、直接海に降りることもできるのよ」

 四人はテラスに座って、海に沈んでいく太陽を眺めた。

 傾きかけた太陽が水平線を赤く染め、見事な色彩を織りなしている。

「こんな壮大な夕焼け、初めて見たわ!」

「あっちにはアウレア山も見えます!」

 張り出したテラスからはアウレア山を臨むことができた。

 剥き出しの岩肌が夕陽を浴びて、まるで燃えているようだ。

「あら? アウレア山の上空に、星が出てるわ」

 レクシアが暮れなずむ空を指さす。

 そこには青く燃える星が二つ輝いていた。

「本当です。あんな青い星、初めて見ました」

「他の星と違い、やけにはっきり見えるな」

「え、ええ、そうね」

 ジゼルは頷くと、レクシアたちを振り返った。

「それより、旅のお話が聞きたいわ」

「あっ、そうだったわね! ええと、どこから話そうかしら!」

 レクシアたちは、ジゼルにこれまでの旅を語って聞かせた。

 これまで訪れた国や景色のこと、出会った人のこと、食べ物のこと。

「――それで、リアンシ皇国っていう東方の大国で、包子をたくさん食べました! あっ、包子っていうのは、ふかふかの生地にいろいろな具を包んだもので……」

「そうそう! そういえば、そのリアンシ皇国で皇女様の家庭教師をすることになったんだけどね――むぐぐー!」

 口を滑らせそうになったレクシアを、ルナが押しとどめる。

「こほん、ああー。まあ、色々な土地で、色々な人たちと交流を深めてきたんだ。旅ならではの体験もしたしな」

「そうね、いろいろなものを見てきたわ! 砂漠の国の地下遺跡とか、雪に覆われた帝国の魔導具とか、東方の大国の龍力とかね!」

「まあ、そんなにたくさんの地を巡ってきたのね。すごいわ」

 ジゼルが目を輝かせる。

「本当に砂漠や雪に覆われた国があるなんて……私はこの島から出たことがないから、本の中でしか知らなくて」

「いつか一緒に行きましょうよ! ジゼルに、ロメール帝国の雪原やリアンシ皇国の街並を見せてあげたいわ!」

「! ええ!」

 ジゼルは目を輝かせて頷き――しかし、不意にその顔が曇った。

「……そう……いつか……」

「ジゼル……?」

 そんなジゼルの様子に、レクシアが首を傾げた時。


 ゴオオオオオオオオオオ……!


 島の中央から、地を這うような不気味な音が響いた。

「きゃっ!?」

「なんだ、この音は……!?」

「アウレア山の方角から聞こえてきます……!」

 ティトの言う通り、アウレア山が低く唸りを上げていた。

 大気が震え、大地が低く鳴動する。

 それは徐々に小さくなり、やがて収まった。

「……収まりましたね」

「なんだったのかしら」

 レクシアたちが首を傾げる。

 その横で、ジゼルが青ざめながらアウレア山を見つめた。


「……もう、時間がないわ……」


「え? 時間がないって、何が……――」

 レクシアがジゼルを振り返った時、玄関の扉からノックの音が響いた。

「ジゼル、いるかい?」

 しわがれた声と共に扉が開き、島民たちに支えられながら、集落の長が入ってきた。

 長のしわ深い顔には、悲痛な色が浮かんでいる。

「……すまない、ジゼル。お前も聞いただろう……アウレア山が生贄を求めておる。古くからの伝承にも、これほどまでにアウレア山が荒ぶる様子は伝わっておらぬ……もう時間がない……。実は、昼に各集落の長たちとの話し合いが設けられてのう……凶星が七つ揃うのを待たず、生贄を早めた方がいいということになってしもうた……」

 長は潤んだ目でジゼルを見つめると、絞り出すように告げた。


「……予定を早めて、明日の夕方に儀式を行おう」


「え?」

「儀式? 生贄って……?」

 異様な雰囲気に戸惑うレクシアたち。

 しかしジゼルは笑って頷いた。

「ええ。大丈夫よ、もう覚悟はできているから」

「本当にすまぬのう、ジゼル……すまぬ……」

 長たちが何度も深々と頭を下げ、涙を拭いながら出て行く。

「ジゼルさん、今のは……儀式って何ですか……?」

「それに、生贄って……?」

 ただ事でない空気を感じ取ってうろたえるレクシアたちに、ジゼルは悲しそうに微笑んだ。


「……アウレア山の噴火を止めるための儀式よ。私はその生贄なの」

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